【たろまろ】あめものがたり

 全10編の雨にまつわる短編集です。感想を書くにあたり、どれかひとつにフォーカスしてお気に入りの短編を挙げようと思っていたのですが、それはできません。なぜなら、全部気に入ってしまったからです。

 現代ものから昔話のようなものまで、色んな設定の物語がつまっていました。夜寝る前にひとつずつ読んでは、幸せな気分で眠りました。切ない、けれど、ハッピーエンドのお話しかありません。

 全編、良かったからこれって明確に書けないと言いつつ、特に素敵だと思った作品のことを少しだけ。

 「時が止まったままの靴屋」攻めの俊一の明るさ、良い意味での押しの強さ、真っ直ぐさが、陰のある充浩とのコントラストになっていて印象に残りました。硬い型作りから始まった靴づくりが最後に俊一の足にぴったりはまって彼の足を守る靴になるみたいに、2人の関係もギクシャクした感じからだんだん親密になっていく過程が描かれていて、素晴らしかったです。

 「雨の中で」これはまず設定が好きなので、長編でもっと充の苦悩を読みたいと思いました。佐原との同棲編も気になるし、親への紹介まで話進めようとした彼女が諦めるわけないし、一波乱あっての大団円を勝手に想像しました。

 雨にまつわる短編集なので、色んな雨が出てきます。辛い記憶にひもづく雨もあれば、恵みの雨もあります。こちらの作品は、どの雨の後も優しい結末でした。

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