【緋田はずみ】ねずみ色の渚

 こちらは、J庭50合わせの緋田はずみさんの作品です。個人的な事情でイベント参加できなくて、入手できないまま完売になってしまうかも、と思っていたら、J庭51の新刊と共に残部少ないですが、とツイートをお見かけして買いに行きました。本当に入手できて良かったです。

 イベント当日にも速読を生かして読んだのですが、感想を書くにあたり、再読しました。あらすじを書くのに、攻めと受けと表記することが何かちがう気がするのですが、というのも、この作品は確かにBLなのです、でも、共依存をテーマにしたと書かれているとおり、共依存を軸にした幼馴染の話なのです。(左右あるのでやはりBL、ちゃんとBLです。)

 共依存がテーマで、左手が動かなくて家庭環境に難のある定職についていない攻めと大企業に勤め安定している受け、重いだろうなと読み始めると、軽快な朝食づくりの文章から始まります。章ごとに攻めと受け視点の一人称で書かれていて、お話が進んでいく形です。二人は幼馴染であり、互いの得手不得手な部分を補い合うように過ごしてきて、攻めは恋心を自覚しており、受けはその感情に名前を付けていない状況です。

 思わず泣いてしまう場面があるのですが、そこはネタバレになるから詳細は書きません。ただ、文章が上手いと書くと安直すぎるので、自分が思っていることをまとめると、作品名に攻めの名前が入っていて、それは海に関連する名前となっています。舞台となる街は海の近くにあり、だけどもその海は作品の中では閉塞感のある描写とともに描かれています。家庭環境に恵まれず、就職して独立した先で手先が器用だと期待された攻めに起こった出来事、先の見えない将来への不安、その中で手離したくない存在、まさにねずみ色の世界で、受けのために尽くすことで自分自身も安らぎを見出そうとする。最後はもちろんハッピーエンドなので、希望のある海のある風景の描写で終わるのですが、ただ明るい表現ではなくて、ねずみ色だった部分も含めて、二人で生きていくんだな、と思わせてくれる幕引きでした。

 もう在庫なしかな、と探してみたら、まだ入手できそうです。前作「手折られ花はほころぶ」はピュバティな作品で、今回は社会人もの、そして、J庭51の新刊が「例え、夜に灼かれても」というオメガバースなんですね。どれだけ引き出しあるんだろう、もっと読みたいと思い、イベントごとの新刊を楽しみにしている方です。


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