【緋田はずみ】手折られ花はほころぶ

 自傷という言葉にひかれて(きっと健気な話にちがいないというアンテナが反応しました)J庭49で手に取った作品です。300ページ近くありますが、二人の青年の交流が丁寧に描かれたお話でした。

 広斗と英良という家庭環境や性格の異なる二人の出会いから始まり、園芸部の作業や文化祭といった学校行事を通して少しずつ仲が深まります。

 この年代特有の思春期というか多感な時期の心の揺れ動きを表現されていて、自傷行為もそうなのですが、危うさ、あいまいさ、衝動といったものが内包されている青春小説よりの良作でした。

 個人的にはこういう作品はかなり好きです。劇的な事件があるわけではなくて、私たちが直面する日常の問題って、その直面している人にしか分かりえない苦しさがあると思うのですが、その日常からあぶり出したものを痛々しさと愛情の両方で見つめてすくい取るような、そういう話をつくる方なんだなって感じました。

 こういう出会いがあるから、カタログ見てうろうろして手に取る行為がやめられないですよね。


 https://inazuma-chikaku.booth.pm/items/2463097

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