横道誠

京都府立大学准教授。博士(文学)。専門は文学・当事者研究。単著『みんな水の中』『唯が行…

横道誠

京都府立大学准教授。博士(文学)。専門は文学・当事者研究。単著『みんな水の中』『唯が行く!』『イスタンブールで青に溺れる』『発達界隈通信』『ある大学教員の日常と非日常』『ひとつにならない』編著『みんなの宗教2世問題』『信仰から解放されない子どもたち』

マガジン

  • 私は五感の海を泳ぐ

    好きなものについて書いていきます。

  • セルフインタビュー

    自閉スペクトラム症とADHDを診断された大学教員が、じぶんにあったコミュニケーションを模索するためにやろうと思った「セルフインタビュー」の実践です。

  • われらの希死念慮を生きのびるための映画を教えよ

    死ぬことなく生きていけるために映画の力を借りているという記録です。

最近の記事

黄金糖

 黄金糖。  私が特に好きな菓子のひとつ。最近無性に食べたくなって、近所のスーパーマーケットで探してみた。けれども残念。そこでは見当たらなくて、代わりに「のど黒飴」を買うことにした。どうだったか。そちらも充分においしかった。黒糖の香りに沖縄の空と海を連想することができた。私の心は八重山諸島の中空を羽ばたいた。しかしそれでも、私はのど黒飴を食べることによって、ますます黄金糖を食べたくなったのだ。  それで、やや遠くのスーパーマーケットまで足を運んだ。黄金糖はあるかな? あった!

    • 人間好き? 人間嫌い?

      ──今回は代麻理子さんのご質問に応えていただきましょう。「横道さんは、基本はひとりで過ごすのが好きだとお聞きしました」、「隣町珈琲でのイベント時の猫の喩え、すごく好きでした」、「一方で、数々の自助グループを開催されているように、人と過ごすのも好きなように思えます」、「ひとり時間と人と過ごす時間の時間割合としては、どのくらいが横道さんにとっての理想ですか?」 横道 おやおや。隣街珈琲での猫の喩えとはなんのことでしょうか? ──横道さんが言ってたんですよ。自閉スペクトラム症者

      • 贅沢なリクエスト集

        ──今回は代麻理子さんのリクエスト集に答えていただきましょう。まずはひとつめから。 横道 はい。 ──「横道さんの中で、「これを読むと笑える」というものはありますか?(私が活字専門なため読みものに限ってしまい恐縮ですが、私は昔はゲッツ板谷さんの『板谷バカ三代』は読むたびに笑える好きな作品でした。みうらじゅんとリリー・フランキーの『どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか』も同じように好きで何度も読みました。最近では、横道さんのセルフインタビューが読むたびくすっとで

        • 迷惑をかける人、八つ当たりをする人

          ──今回は代麻理子さんと畑中麻紀さんのリクエストに応えていただきましょう。  代さんからは以下のとおりです。「「人に迷惑をかける」ことについてどう思いますか?(過去の私は、かけまいと思っても結果としてかけまくってしまっていることを気に病んでいました。『発達界隈通信』を読んでも、そのことに悩んでいた方が多かったので、横道さんはその思いにどう対処してきたかが気になります」。 横道 ふむふむ。 ──畑中さんからは以下の通りです。「いわゆる八つ当たりの暴言を吐いている時、どう対処

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        • 私は五感の海を泳ぐ
          1本
        • セルフインタビュー
          27本
        • われらの希死念慮を生きのびるための映画を教えよ
          10本

        記事

          宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』(2023年)

          宮崎駿ファンA「この対話はネタバレあり?」 宮崎ファンB「具体的な物語内容についてはネタバレしない」 宮崎駿ファンA「きょう公開されたばかりだもんね」 宮崎ファンB「パンフレットすら後日販売開始にされていた」 宮崎駿ファンA「ネタバレ画像が出回るのを避けたということか」 宮崎ファンB「事前情報の秘匿が、とにかくすごかった。タイトルが『君たちはどう生きるか』だって発表されたのはいつだったっけ」 宮崎駿ファンA「2017年。『風立ちぬ』が2013年に公開されて、宮崎が引退会見した

          宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』(2023年)

          人を笑わせ、楽しんでもらうために

          ──今回はnonnonさんのリクエストに答えていただきましょう。「横道先生 キレキレの文章 いつも笑えます。笑いのツボです。元気出ます!」「​​『みんな水の中』傑作、『イスタンブールで青に溺 れる』衝撃」とのことで、「大切な人を笑顔にするユーモアのセンスの磨き方」を指南してほしいとのことです。 横道 ありがとうございます。大変ありがたいことです。 ──どんどんツイッターなどでも呟いてくださいね。「横道誠さんが最高におもしろいです。東畑開人さんよりも、おもしろいかもです!」

          人を笑わせ、楽しんでもらうために

          石井聰亙監督『逆噴射家族』(1984年)

          カエル「京都みなみ会館が閉館するって聞いちゃった」 リス「えっ! 京都にあるカルト的な人気を博したミニシアター系映画館だね」 カエル「2019年に移転新装開館したんだけど、コロナ禍が響いたって」 リス「立地もちょっと悪かったもんね。京都駅の少し南って、ちょっと辺鄙だ」 カエル「東寺の近くをそんなふうに言うと、京都人に呪われるよ」 リス「くわばら、くわばら」 カエル「私がオタマジャクシの頃は、ああいう映画館って京都ではみなみ会館だけだったんだけど、そのあと京都シネマができて。最

          石井聰亙監督『逆噴射家族』(1984年)

          怖がりなのにホラーを愛好する人の心理

          ──今回のテーマは「怖がりなのにホラーを愛好する人の心理」ということですが。 横道 数日前、ツイッターで文体論の本を書きたいと投稿しましてね。 ──はい。たくさんの人がリツイートして、拡散してくれましたね。 横道 ありがたいことでした。それで3社の編集者が企画を打診してくれたんです。 ──へえ。ツイッターの潜在力はいまなおすごいですね。 横道 そのうちのひとりがKさんでした。じつはKさんとはすでに別の本を一緒に作っていて、初対面のときに昔話や童話が好きだと教えてくれ

          怖がりなのにホラーを愛好する人の心理

          夢を諦めたことはありますか?

          ──今回のテーマは「夢を諦めたことはありますか?」なんですね。 横道 これは頭木弘樹さんのnote連載『​​何を見ても何かを思い出す』で昨日公開された記事「​​人生でがんばりたいのは、そんなことではなかった」(https://note.com/kashiragi_box/n/n3273b7249249)に触発されたものです。 ──あれは感動的な記事でしたね。 横道 頭木さんは以前、​​夢の諦め方についての本を出したという体験談を披露します。『絶望書店──夢をあきらめた9

          夢を諦めたことはありますか?

          どうやってnote記事を書いているのか

          ──今回は代麻理子さんのリクエストに応えていただきましょう。「このセルフインタビューを読むのをいつも楽しみにしています。疑問に思ったのんですけど、このインタビューって最初にリクエスト内容を書いて、残りは横道さんがずっと文章を考えているってことでしょうか。つまり、リクエストしてくれた人との対話の記録というわけではないのでしょうか」 横道 代さんは『未来に残したい授業』(​​https://www.youtube.com/channel/UCHTiWt4evGgqnf_klyH

          どうやってnote記事を書いているのか

          結婚したいんですか?

          ──今回は匿名希望さんのリクエストに応えていただきましょう。「先日トークショーで僕まだ結婚してないんでと仰っていて、“まだ” ということは “いつかは” 結婚したいと思っておられるのか? もしそうならご自身の結婚生活についてどのようなイメージを持っておられるのか、理想の生活(食事睡眠パートナーとの交流などのスケジュール等)をお聞きしたいです」「過去のトークでは、 ・幸か不幸か結婚していないので(今は家族の為に使う時間不要なので)自助会に多くの時間使える→結婚後は自助会縮小? 

          結婚したいんですか?

          サラ・ポーリー監督『ウーマン・トーキング』(2022年)

          男児A「死にたいなあ」 男児B「どうして人は死にたくなるんだろうね」 男児A「わからない」 男児B「渋い映画が好きだったよね?」 男児A「うん。あんまり軽薄なのは向いてないんだ」 男児B「じゃあサラ・ポーリー監督の『ウーマン・トーキング』(2022年)なんかどう?」 男児A「いま映画館でやってるやつ?」 男児B「うん。アカデミー賞の脚色賞を受賞した作品」 男児A「じゃあ観てみるよ」 (104分+αが経過) 男児A「ふう」 男児B「どうだった?」 男児A「長く感じた」 男児B「

          サラ・ポーリー監督『ウーマン・トーキング』(2022年)

          なぜ著作でつらい記憶を垂れながすのか

          ──今回はかにゃんこさんのリクエストに応えてもらいましょう。「横道さんは、過去のことを色々書かれていて…書かれる過程で、過去を思い出して、つらくなったり、夢見が悪くなったりとかもあると思うのですが、その時はどうしているのか、また、自分のメンタルの健康を守るために気をつけていられることとか、つらい思い出しがあったとしても書き続けてよかったと思われているのか知りたいです…」 横道 『みんな水の中』以来、過去のことを著作でいろいろ書くようになりました。書いていてつらくなることはあ

          なぜ著作でつらい記憶を垂れながすのか

          デイヴィッド・フィンチャー監督『ファイト・クラブ』(1999年)

          若い女A「死にたい」 若い女B「では『ファイト・クラブ』(1999年)なんてどう?」 若い女A「なんていう監督の作品?」 若い女B「デイヴィッド・フィンチャー」 若い女A「知らない人だ」 若い女B「『セブン』(1995年)とか『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)とか」 若い女A「ああ! 『ソーシャル・ネットワーク』は観たことある Facebook創業者が主人公の」 若い女B「そうそう。『セブン』も大ヒットしたんだよ。ブラッド・ピットとモーガン・フリーマンが主演したサスペ

          デイヴィッド・フィンチャー監督『ファイト・クラブ』(1999年)

          編集者の世界ってマッチョなの?

          ──今回は深澤孝之さんのインタビューに応えてもらいましょう。「最近、自分がマッチョと言われているような気がして悩んでいます。横道さんの考えるマッチョって何ですか?」 横道 深沢さんは明石書店の担当編集者なんですよ。『信仰から解放されない子どもたち──#宗教2世に信教の自由を』(明石書店、2023年)を一緒に作りました。いまは別の著作をまたふたりで作ってるんです。 ──担当編集者からリクエストが来るのはうれしいですね。 横道 はい、私は編集者という存在が昔から好きなんです

          編集者の世界ってマッチョなの?

          是枝裕和監督『怪物』(2023年)

          青年A「調子はどうだい?」 青年B「あいかわらず死にたいよ」 青年A「是枝裕和監督の『怪物』(2023年)は見たかい?」 青年B「いや、まだだ。脚本が坂本裕二なんだって?」 青年A「そうだよ」 青年B「坂本脚本で土井裕泰監督の『花束みたいな恋をした』(2021年)、おもしろかったなあ。」 青年A「菅田将暉と有村架純の初々しい恋愛、同棲生活、その破綻を描いた作品だね」 青年B「ふたりは、いかにもヴィレッジ・ヴァンガードなんかが大好きそうな若い男女なんだよ。ふたりとも売れっ子にな

          是枝裕和監督『怪物』(2023年)