どうやってnote記事を書いているのか
──今回は代麻理子さんのリクエストに応えていただきましょう。「このセルフインタビューを読むのをいつも楽しみにしています。疑問に思ったのんですけど、このインタビューって最初にリクエスト内容を書いて、残りは横道さんがずっと文章を考えているってことでしょうか。つまり、リクエストしてくれた人との対話の記録というわけではないのでしょうか」
横道 代さんは『未来に残したい授業』(https://www.youtube.com/channel/UCHTiWt4evGgqnf_klyH0LcQ)というYouTube番組を制作している人です。大澤真幸さん、佐伯啓思さん、橋爪大三郎さん、小林康夫さん、藤田直哉さんなど、錚々たるメンバーが協力していて、私も出演したことがあります(https://www.youtube.com/watch?v=jNpexUu_Jss&t=4s)。
──すごい。オンライン動画って、かなり儲かるんじゃないですか。
横道 チャンネル登録者は9000人を超えていますが、広告なしにやっているので、代さんへの収入はゼロのはずです。講師の私たちへの謝礼もゼロです。
──講師の人たちはよく協力してくれていますね。
横道 代さんの人柄があってこそと言えます。
──それでリクエストの内容についてですが、この一連の「セルフインタビュー」に関して、冒頭のリクエスト内容以外は、横道さんがすべて考えていると考えて良いのでしょうか。
横道 はい、そのとおりです。ただし、リクエストがどんどん来るわけではないので、リクエスト自体も私が考えていく展開になりそうです。
──すごいですね。マッチポンプですね。じぶんで放火して、じぶんで鎮火する。
横道 はい、私のことは人間消防車と呼んでいただきたいです。
──どうやって、こういう文章を思いつくんですか。かなり悩みますか。
横道 悩みません。座ってノートパソコンに向きあったり、寝転がってスマートフォンの画面を操作し、書く体勢に入ったら、文章が滔々と流れるように出てきます。
──どういう原理でそうなってるんでしょうね。自閉スペクトラム症って「想像力の障害」って言われていますよね。
横道 その「想像力」とは「他者への共感性」や「他者の心理状態の洞察」のことです。自閉スペクトラム症があると、共感性や他人の心に対する洞察が弱いと言われていたのです。しかし最近では、「定型発達者同士と同じように、自閉スペクトラム症同士はふつうに共感できるし、洞察もしあえる。異質な定型発達者と自閉スペクトラム症者の組みあわせの場合に、人間のタイプとして異質なので、共感や洞察が難しいだけという考え方が広まっていて、二重共感問題(ダブル・エンパシー・プロブレム)と言われています。
いずれにしても、物語などを創作するための「想像力」が自閉スペクトラム症に欠落しているということはありません。
──でも定型発達者への共感が難しかったら、コミュニケーションそのものについてのイメージも形成困難ではありませんか。
横道 ですから私は自閉スペクトラム症者同士が語りあうような対話でないと、なかなか難しいと感じることが多いです。
つまり不必要なことは言わない、要点だけを淡々と説明するというようなものです。
──ロボット的な印象を与えませんか。
横道 私は人間ChatGPTみたいになれれば、対話者として基本的な要件を満たせられると思っています。いま最新版はGPT-4ですね。私はGPT-7あたりをめざしたいです。
──数年も経たずに、そのヴァージョンまで到達するんじゃないですか。とりあえず、AIの可能性を信じているんですね。
横道 ChatGPTの丁寧な応え方を見て、私自身の対話術の方向性が、基本的に正しいんだなと思ったのは事実です。
──でもChatGPTって、ぬけぬけとデタラメを語ることも多いですよね。試しに無料版のGPT-3.5に「横道誠とChatGPTはどちらが賢いですか?」と尋ねてみましょうか。
横道 どうなりますか?
──「横道誠(よこみちまこと)とは、フィクションのキャラクターであり、小説や映画「永遠の0」に登場する人物です。一方、ChatGPTはOpenAIが開発したAIモデルであり、大量のテキストデータを学習して人間のような対話を行うことができます。」
横道 横道誠って、百田尚樹が創作した虚構の存在だったんですね。そうかもしれないな、とは思っていました。
──ChatGPTによると、そういうことだそうです。続きを読んでみましょう。「賢さという概念は、さまざまな要素に基づいて測定できます。横道誠は、フィクションの中で描かれたキャラクターであり、物語の中での知識や経験に基づいて行動します。一方、ChatGPTは人間の知識と情報に基づいてトレーニングされており、広範な情報源にアクセスすることができます。」
横道 やっぱり私は虚構のキャラなんですね! 2回も言われてしまいました。
──大切なことなので、2回言っておくことにしたのでしょう。私も小学生のある時期、「バナナはおやつに含まない」と1日に10回くらい言っていました。
横道 それは自閉スペクトラム症だから、同じことを何度も言いたい衝動があったということですよね。続きはどうなってるんですか。
──続きはこうです。「ただし、賢さの定義や測定は主観的であり、目的や文脈によって異なる場合があります。横道誠は小説や映画の中で非常に優れた知性や洞察力を持っていると描かれていますが、現実の人間やAIと比較することは難しいです。」
横道 私は小説や映画のなかで、非常に優れた知性と洞察力を発揮していたんですね。知らないうちに、よくがんばっていた私!
──続きはこうです。「ChatGPTは自然言語処理の分野で進歩しており、多くの情報を処理し、対話を通じて質問に答えたり情報を提供したりすることができます。ただし、AIモデルには限界や誤りもあります」。留保的な情報が多いですね。慎重な語り口です。このつぎが結論部分です。
横道 ぜひその結論をお聞かせいただきたい。
──「結論として、横道誠はフィクションのキャラクターであり、ChatGPTはAIモデルです。どちらが賢いかは文脈や測定基準に依存します。」
横道 いやあ、フィクションのキャラクターだと3回も言われてしまいましたね。こんなに現実性を否定されてしまうと、オラぞくぞくしちまうぞ!(『ドラゴンボール』の孫悟空の声で)。
──横道さんは、このセルフインタビューを書く上でChatGPTを参考にしていますか。
横道 いまのところは、していません。じぶんでぜんぶ考えて書くほうが楽しいからです。でも、ChatGPTに相談しながら書くのも楽しそうですね。できれば有料版のGPT-4に相談したいけど。
── セルフインタビューを書く上で、参考にしている特別なメソッドはありますか。
横道 基本的にはアサーティブ・コミュニケーションの考え方です。前にも書いたように(https://note.com/makotoyokomichi/n/n735449f0de93)、話者にとっても聴者にとっても好ましい語り方を考えながら言葉を紡ぐという技法です。認知行動療法の一種にあたります。
私がこの「セルフインタビュー」を楽しんでやっている理由は、何よりもアサーティブ・コミュニケーションの練習になるからです。ふだんの発言、メールやSNSのメッセージの書き方をよりよくするための筋トレみたいなものです。
──そういえば、今回のリクエストをしてくれた代さんは、筋トレにはまってるそうです。
横道 私も一時期は筋トレをしたり、水泳やエアロビクスをしたり、体を鍛えることに取りくんでいましたが、まったくなんにも楽しくないので、やめてしまいました。
──楽しくないですか。
横道 スポーツをしているあいだは本も読めないし、インターネットで情報検索もできません。筋肉をつけるために知識を得る時間を大量に捨てなければならない。だったら私は筋肉はいりません。へなちょこボーイで大丈夫です。
──でも横道さんは、一週間に何度か、かなりの時間をかけてウォーキングしてるんですよね?
横道 週に3回か4回程度、徒歩で1時間以上の移動をしています。その時間はラジオを聴きながら勉強する時間でもあります。私にとっては精一杯のスポーツです。
──スポーツが楽しくてたまらなかったら良かったんでしょうけど
たぶん単純に楽しくないんですよね。
横道 発達性協調運動症がありますからね。それなりに強度のある運動はひたすら苦痛なだけです。私ができるほとんど唯一の運動はウォーキングです。
──ありがとうございます。まあ、今回はこんなところでしょうかね。
横道 代さんのリクエストに応えられて、ホッとしました。
──ここで種明かしですが、代さんってこのnotoのための専用のリクエストをしたわけではないですよね? このまえのYouTube動画の収録の際、代さんから尋ねられたnoteに関する質問があって、それに今回機会を改めて答えたということですよね?
横道 じつはそうなのでした。
──質問されてすぐ、YouTube動画用にかんたんにお答えになったけど、今回はnoteでじっくりと答えなおしたと。
横道 音楽マニアで言えば、興味のある曲にショートバージョンとロングバージョンがあったら、両方とも聴いてみたくなりますよね。インタビューへの回答も、ショートバージョンとロングバージョンがあって良いと思います。
──そういう考え方なんですねえ。
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