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迷惑をかける人、八つ当たりをする人

──今回は代麻理子さんと畑中麻紀さんのリクエストに応えていただきましょう。
 代さんからは以下のとおりです。「「人に迷惑をかける」ことについてどう思いますか?(過去の私は、かけまいと思っても結果としてかけまくってしまっていることを気に病んでいました。『発達界隈通信』を読んでも、そのことに悩んでいた方が多かったので、横道さんはその思いにどう対処してきたかが気になります」。

横道 ふむふむ。

──畑中さんからは以下の通りです。「いわゆる八つ当たりの暴言を吐いている時、どう対処してもらいたいですか?」「反論すると余計にヒートアップするのは自明なので、強権発動しないのはもちろんのこと、吐かれる側はひたすら耐え忍ぶのが最良と思いがちですが、もしかしたら「違う違う、そうじゃない!」なのでしょうか。」

横道 畑中さんのほうは、先行するインタビュー「暴言を吐いてしまったとき」を受けて、追加のリクエストですね(​​https://note.com/makotoyokomichi/n/nfd412bfd0664)。

──横道さんは八つ当たりの暴言を吐きますか。

横道 吐きません。

──ありがとうございました。それでは本日はこれで......。

横道 まあまあ。
 まずは迷惑をかけることについて考えてみたいですが、生きている以上、どうやっても迷惑というのはかけてしまうものなんじゃないでしょうか。いま人類は束になって温暖化に貢献し、地球の自然環境や生態系に迷惑をかけています。

──スケールが大きい視点ですが、もう少しスモールな事例に焦点を当てたほうがクライエント・フレンドリーだと思います。

横道 生きていれば、誰かに迷惑をかけるものです。たとえば職場に、気配りがよくできる多くの人に好かれる人がいるとします。

──私もそういう人になりたいです。

横道 そういうふうに、誰かに「引け目」を感じさせているという点で、その「気配りがよくできる多くの人」にも迷惑なところがあると言えます。

──そういうふうに考えるのは、人として倫理的に問題があるような気がします。ひねくれすぎではないでしょうか。

横道 協調性を発揮して、みんなをバリバリ引っぱっていけるような人のことはどう思いますか。

──やはり憧れます。私はそういうタイプとは正反対ですから。

横道 でもそうやって協調性を発揮して、「みんなで一丸となる空気」を醸成した結果として、「ほかの可能性・選択肢もある」という「多様性(ダイバーシティ)」は確実に萎んでしまいます。ですから、一見すると迷惑に見えないものも、角度を変えるとだいぶ迷惑なものだとわかってくることは多いです。

──そうやって開きなおって良いのでしょうか。たとえば迷惑をかけて、開きなおれば、まわりから支持を失うことが多そうで、不安になります。

横道 迷惑をかけて叱られたり、非難されたりしたら、嵐が過ぎさるまで申し訳なさそうにしているの良いと思います。反省して、じぶんを変えられる範囲で変えようとするのも良いと思います。
 迷惑をかけて落ちこんだときは、多くの人に感謝された経験を思いだしてみてはどうでしょうか。そして、もう一度そういうことをやってみようと思ってはどうでしょうか。

──そういう経験が思いあたらない人はどうすれば良いのでしょうか。

横道 いまから多くの人を気分よくさせるにはどうすれば良いか、と考えてみてはどうですか。そして一生かけてプラスマイナス・ゼロに近づけてみてはどうでしょうか。

──そんなふうにならないまんま、人生を終えそうな気がします。

横道 死んで消滅したら、自然環境や生態系に大きくプラスになります。ですから、死んだあとにプラスマイナス・ゼロに近づきます。

──そういう考えだと、じぶんの意志で世を去ることを肯定することになるのでは。

横道 言うまでもなく、「それはそれ! これはこれ!」というところです。別問題です。
 自殺の否定に関しては、すでに『われらの希死念慮を生きのびるための映画を教えよ』(https://note.com/makotoyokomichi/m/me0fa15a82fcd)で取りんでいます。

──では八つ当たりの迷惑についても、お伺いします。

横道 私は八つ当たりはしないと言いましたが、非常に多くの時間、むしゃくしゃしていると言っても良いです。

──いろんな問題の「当事者」ですもんね。

横道 いろんなことで困っているから、考え方も極端な印象を与えることが多いですね。理解のされていないと感じてしまって、イライラしているのかもしれません。

──どうコーピングすれば良いですか。

横道 とりあえず身体運動です。散歩、ラジオ体操、腹筋運動、サウナ入浴、セックス。

──サウナも運動なんですね。

横道 サウナ室と水風呂を往復して、血圧をあげたりさげたりする。運動といっても良いのではないでしょうか。
 とにかくむしゃくしゃしているときは、体が気持ちよくなれば、それに合わせて精神的にも安定します。

──まず八つ当たりの暴言を吐かないような環境づくりをすることが大切だということですね。

横道 私のいつもの原則です。

──しかしリクエストされた問題は、八つ当たりの暴言を吐いてしまったときに、まわりの人にどうして欲しいかということでした。

横道 「不当なことをやっている」と簡潔に短く指摘してほしいです。成長できるきっかけとして、ありがたく頂戴します。

──そのように考えない人もいますよね。単純に怒りだす人も多いんじゃないでしょうか。

横道 私は「トラウマインフォームドケア」の考え方が広まってほしいと思っています。八つ当たりも含めて、怒りの源泉はしばしばトラウマです。過去に苦しんだ嫌な記憶が刺激されたとき、思考力が停止し、複数の別々の事案が一緒くたになってしまうのです。「また今回もこんなひどい目に合ってしまった」「なんでじぶんばっかり踏みにじられる」と絶望し、怒りだして、八つ当たりするのです。

──つまり、厄介な相手を相手にすることになったら、この人にはトラウマがある可能性が高い、それを刺激しないようにうまくやっていかなくてはならないというわけですね。
 でも具体的にはどう相手すればいいんですか。

横道 それこそトラウマインフォードケアの話をするのが手っ取り早いです。トラウマを抱えている人のことを世の中がちゃんと考えてくれないのは、ほんとうに良くないことだね、まちがってるねって一緒に怒ってあげてはどうですか。
 私の経験上、「この人はちゃんとわかってくれる人だ」って判断してくれて、怒りがやわらぐことが多いです。

──関係がすでにこじれていて、話をなんにも聞いてくれない場合はどうすれば良いのでしょうか。

横道 当事者研究やオープンダイアローグの出番だと思います。そういう会合に送りだす、あるいは一緒に参加してみる。

──「攻撃される」「説教される」と恐れて、参加できない人は多そうです。

横道 深刻な場合、一歩を踏みだせるようになるために、支援者に介入してもらう必要はあると思います。


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