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追い越された日 【詩】
まさか半年で
そんなに大きくなるはずないって
足の裏を合わせたら
私の親指の先から
君の親指の裏が見えた
あとで上履き買いに行こうね
笑いながら足を離す
ミルクを吐いてうろたえた日は
ずいぶん前のことだった
あの日の私に伝えてあげたい
靴のサイズを追い越されて
こっそり涙ぐむ日が来るからねと
しまった、私 【詩】
生まれてしまった
育ってしまった
失敗してしまった
けんかしてしまった
ばかにしてしまった
逃げてしまった
怠けてしまった
隠してしまった
見過ごしてしまった
怒鳴ってしまった
人のせいにしてしまった
傷付けてしまった
夜更かししてしまった
嫌になってしまった
死にたくなってしまった
けれど
愛を知ってしまった
いろんなことを知りたくなってしまった
だから
生きようとしている、私
気がつけば城 【詩】
作るより食べるほうが好き
料理はどちらかといえば苦手
必要にせまられて立つ台所
あなたへの苛立ち見せないように
洗いものした日
決まりだからと割りきれるほど
気持ちは追い付けなくて
君への愛しさ見せないように
ねぎを切った日
真剣に話す姿に成長を感じて
にやけないようにするのが大変で
こっそり食べたチョコレートも
疲れはてた週末も
台所は隠してくれた
落ちない油汚れが
笑顔に見えるくらい
気づかなかった 【詩】
ずっとため込んでたんだね
その一粒の涙に
どれだけの思いがつまっているの
ぎゅうっと抱きしめたら
溢れてこぼれた
全部出して空っぽになって
空いたところに私の言葉
入れさせて
あったかいのにするから
暖かい冬の日に 【詩】
暖かい冬の日に
梅の花が咲いていた
赤と白の2色の花は
道行く人の足を止め
わずかに口元緩ませた
脇のほうに落ちている
細い2本の枯れ枝が
雪だるまの腕だって
たった1人も気付いていない
日の当たらない道の端
だからこれからその腕を
拾って弔うことにした
近付いたときに赤い実蹴った
暖かい冬の日に
小さな部屋の小さな願い 【詩】
食べ過ぎたと言える日が
幸せなことだと気付いた日
あちらでは誰が偉いか
ケンカをしている
こたつでうたた寝する時間が
貴重なんだと気付いた日
こちらでは正義のヒーローたちが
声を荒げている
聞きたい声は台風に巻き込まれて
いつも遠く彼方
そしてちっぽけな私は
こもった熱を握りしめ笑う
隣の人の話を聞いて
子どもの頭をゆっくりなでる
私のちっぽけな行いが
子どもの友達のおじいさんの
親