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短編小説集

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短編小説集
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記事一覧

カバン

イジメというのは実はされる人間よりする人間の方が弱くて人生も幸せではなくイジメをしたあとどんなことをしてても結局自分の多幸感というのは薄い場合が多い。人生を豊かに過ごしている人間たちは漏れなく人をイジメない。
学校で私にパワハラした教師は私のカバンを再三disり、そのズタ袋持ってくるなと言ったが私は黙っていた。私のカバンは私の母が縫ったもので、そのことをそのパワハラ教師に言ったこともなく母にズタ袋

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ピカピカドンドン

どっきりどっきりDON DON!!
+を帯びたら陽イオン
ずっしりずっしりZUN ZUN!!
−を帯びたら陰イオン
中性子爆弾が炸裂をしたみたいだよ
やなことまとめて溶かしていっちゃうんだ
核シェルターにも入ってないけど
放射線に被曝したけど
でもね北斗の拳があるから大丈夫みたいだよ
大きな爆弾ピカピカドンドンドン
爆心地で笑っちゃえ
パパママ先生みんな無事だよ
勢いノッテてね復興大爆走
お空に光

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トリアージ

「ペット?家族です」
「規則ですから貨物室に」
「家族を貨物室に入れるの?あなたは」
「飛行機は乗ってる人の安全最優先なんです。ご不満なら搭乗されなくてもいいですよ」
「権利侵害」
「羽田空港ではどうでしたか?災害や事故ではトリアージする世の中です今は」
「感情はないの?」
CAの目に涙。
貨物室
猫が一匹炎上する貨物室でケージに入っていた。
「死ぬかも」
猫が光の方を見ると遥か下に炎上する飛行機

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モ8391

土佐島の鏡市内の路面電車に乗ると古いので低くうなるような駆動音とともに滑るように町を走る。
モ8391という車体番号で呼ばれている、かなり年季の入った路面電車は鏡市内の幾人もの人々の人生と生活とともにあった。
足がおぼつかなくなっている人がモ8391に鏡駅前から乗ってきてかわせみ橋で降りて行った。
車が渋滞し過ぎてどうしたものやらと思っていた鏡市の人々が車に乗る頻度を低めて路面電車を利用し始めて渋

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今こそイマジン歌おうと

ネットじゃあハマスが殺すって言っててさ
そういうニュースをピザ食ってテレビでやるのを待ってるってさ
くだんねえおれはアニメを見るんだよ
銃よりアニメがいいだろが
人が死んでるニュースをさピザ食って待ってるってそういうの
人としては終わってる

今こそイマジン歌おうと
パヨク老人叫ぶ時
ハマスはフェスに発砲さ
今こそロックじゃないんかい
ラブアンドピース歌うにも
戦闘機に乗り歌ってる
そういうアニメ

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真心と叡智

いじましい気持ちに塗れて人が脚光を浴びるのを舞台の袖からこっそり眺める日々も佳境を迎えた。
どこかで自分が取り組みしていることは注目されてしかるべしと本気で思っていた。
そんなことは必ずしもそうではなかった。埋もれてひっそりと歳月の海に沈み込み浮かんでこない、そういうものかもしれないのであった。
巡り合わせや環境で耳目を集め取り扱いをされる人とそうでない人とがいて自分は明らかに後の方だと思い知らさ

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フクロウとカワセミ

フクロウの朝は早い。早朝に風呂に入り、ご飯を食べる。
料理というものをフクロウが作るのは趣味と実益である。作った料理はインスタグラムなどに上げる。フクロウのインスタグラムはメシスタグラムである。ご飯の写真が大半であとちょっと趣味のものの写真が忘れた頃に上がる。
最近フクロウは小松菜がクセになっていて小松菜ベーコンパスタや小松菜ウインナーを作ってインスタグラムに上げて黙々と食べている。
幾星霜降り積

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ハピメン

一九九四年六月
静夫はマクドナルドの前を行ったり来たりしていた。
ハッピーセットが急に欲しくなったからだ。
だが二〇歳も過ぎた男がハッピーセットを買うには何か適当な言い訳を考えないといけなくて、思い付かずぐるぐるとマクドナルドの前を行ったり来たりしていた。
そういえば遼子さんが言っていたことを静夫は思い出した。
「姪っ子が欲しがってね」
静夫は店員にそう言ってハッピーセットを手に入れた。
静夫に姪

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白猫

 白猫は地味な性格をしている。空を眺めてコーヒーを喫み、チャトラとスーパーに買い物に行く。
 空は一つとして同じ形をしておらず、荒ぶる雷雲も快晴の青も雪雲も高い雲も日替わりで見える。
 白猫はバスを降りて古びたアパートに入っていった。ドアを開けるなりトイレに入り、ブラシと洗剤を出して便器を洗った。便座の裏の汚れを拭い、水を流した。
 洗い物を洗って食器を伏せ、洗濯機に洗濯物を入れて洗剤を入れて回し

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招き猫

とある街の激安スーパーには毎日夜半過ぎに買い物に来るカップルがいた。
不思議なことにカップルが来ない時間帯には空いていた店内がカップルが来ると賑わい出すことが多かった。
歳月が流れても激安スーパーは営々と街にあった。そのカップルも夜半過ぎには買い物にやってきて彼らが来ると店は賑わった。
やがてカップルのうちの男の方を見なくなり女だけがやってきても彼女が来ると店は賑わった。
さらに歳月が流れた。

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とこじらみ

部屋の維持を怠ったある夏、信太郎の部屋にとこじらみが涌いた。
万年床で陰キャがスマホでツイッターしている日々だったのでとこじらみが寄ってきたらしい。
最初気が付かないうちはやけに天井からぽとぽとと虫が落ちてきて、腕を盛大に噛まれた。
皮膚科に行って薬を貰った時に入浴を禁じられシャワー生活に信太郎はなった。
徐々に部屋のオーラは悪くなっていった。
身体の悪い部分にとこじらみはたかって血を吸うので、信

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人間

人間にはそれぞれ置かれた環境、手にすることの出来るもの、出会う人々、というのがそれぞれ異なり、自分の手に持っているもので人生という冒険旅行を旅していくしかない。チャールズシュルツが漫画で手持ちのカードで勝負するしかないと表現しているように。
その旅路がまるでリセット不可のゲームのようだったとしてもそのゲームをプレイする方法しかない。
他の人々がいくら多くのものを手にしていてそれに比べて自分にはなん

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礼拝島

沢木隆二と石澤真生の乗る船が礼拝島沖で座礁し、二人は島の漁師に救助されて診療所に運ばれた。
二人とも頭に怪我をしており、軽度の外科手術が必要となって手術を受けた。
ほぼ同じタイミングで二人は意識を取り戻し少しの間、診療所に入院した。
診療所の看護師の鴫野有里が二人の看護をした。

ルーリク国の方面から上陸用舟艇が礼拝島に上陸してきて兵団が島にやって来た。
沢木隆二と石澤真生と鴫野有里は脱出船が停泊

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ねこねこ

※この話はフィクションです。

その男の名前を仮にねこねこと呼ぶことにしようか。
ねこねこは怖い親分の父ちゃんと姐さんの母ちゃんとの間に生まれた。
怖い親分の父ちゃんはねこねこのどこが気に入らないのかねこねこが子どもの頃から何か口実を見つけては折檻していた。
「おいねこねこ。小遣いやるわ」
そう言って怖い親分の父ちゃんは小学生のねこねこに数万円の万札を渡して言った。
「すぐ全部使ってしまうなよ」

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