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小説_『音楽、愛。』

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僕はカフェに入り、ワイヤレスイヤホンを取り付けた。

カナル型のイヤホン。
これで周りの音を遮断できる。

淹れたばかりの珈琲が熱くて、飲めたもんじゃない。
昼時のカフェは人が多い。

休憩中と思われるサラリーマンが単独で座ってたり、
学生が楽しそうにおしゃべりしていたり。

僕はポケットからスマートフォンを取り出した。
ミュージックアプリを起動し、昨日追加したばかりのアルバムを再生した。

なんで音楽は愛の話ばかりなのだろうか。
メロデイと一緒に、歌詞をなぞっていくと愛の言葉が胸に刺さった。
音楽は愛に溢れている。この世界と同じように。

音楽を聴いていると、自分が愛を語り、
相手から愛を語られているような錯覚に陥る。
でも僕は再生ボタンを押しているだけだ。

耳にイヤホンを差し込むぐらいしかしていない。
それで愛をわかった気になっている。

そんなことを繰り返していても、変化の無い現実が待っている。

僕は音楽の聴き方はこの世界に二通りあると考えている。

現実に立ち向かうために聴くのか。
現実から遠ざかるために聴くのか。

僕は後者だ。

珈琲を飲み終えた僕は音楽を止めた。

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