橘誠(Makoto Tachibana)

日記感覚で想うことを書いています。

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小説_『何のために』

この小説は約2分で読めます。 "何のためにここにいるんだ"と僕は思った。 そんなことを考えていたら、小説を書いていた。 「おはようございます!」  と僕は元気よく返事をした。 「おはよう! 今日も元気だな」と上司は挨拶を返した。  そして、いつものように冗談を言ってきた。 何でもない冗談だ。(言ってきた内容を全く覚えていないので、ここに掲載することができないが……。)  上司が冗談を言ったら面白い返しをしなければならない という"謎の義務感"が発生する。上司を常に心地

    • 道化の華 太宰治

      1935年に発表された太宰治の初期の作品である『道化の華』を収録。 旧字体を新字体に変換し読みやすくしています。 この『道化の華』の主人公、大庭葉蔵は『人間失格』の主人公と同じ名前である。 登場人物大庭葉蔵(おおばようぞう)…主人公。女と心中を図り一人だけ生き残った 園(その)…葉蔵と共に心中を図った女 飛騨(ひだ)…葉蔵の中学からの友人で葉蔵のことを尊敬し慕う 小菅(こすげ)…葉蔵の親戚で三歳年下。年は違うが葉蔵と飛騨と隔たりのない友人 眞野(まの)…葉蔵が入院し

      • いつまでも弾き続けていたい

        2年ぶりにある小説を再読した。 最近映画化されている作品だ。 出場者たちが優勝を目指して奮闘する姿や、それぞれの登場人物の回想シーンなど、読んでいる僕の気持ちも高揚して「頑張れ!」と思えたし、演奏を言葉で表現するという技術的な側面にも触れることができて読んでいて感銘を受けた。 その中でも一番好きなシーンはこれだ。 --------------- 『僕はピアノ好きだよ』 『どのくらい?』 『世界中にたった一人しかいなくても、野原にピアノが転がっていたら、いつまでも弾き

        • 頭の中を書く

          この小説は一瞬で読めます。 「すみません。今日は用事あるので外で昼済ませます」 僕は上司や先輩に声をかけオフィスを出た。 久しぶりにカフェにきた。 新しくできたばかりの店内は予想していたよりも人が少なかった。 スーツのポケットからA6サイズのノートを取り出し、何も書いていない真っ白なページを開ける。 今日は何を書こうか。 平日の忙しさに忙殺されていた現実の場所から離れるだけで、とても心掛けて安らいでいる。この感覚が心地良い。 人と話すのは嫌いじ

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        小説_『何のために』

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          自分探しをするなら小説を読むのが効率的だと思う。

          自分探しで一番効率的なのは小説を読むことだと思う。 ちなみに旅は非効率だと思っている。 旅を否定しているのでは無くて、効率的かどうかの話だ。 旅をきっかけに自分を見つめるとなると時間もお金もそれなりにかかる。 その代わりに質は高いのかもしれない。 新しい人との出会いや体験を通じて自分を知る良いきっかけになると思う。 旅をきっかけにその土地に移り住むことだってある。 そもそも『自分探し』とは何だろうか? 人によって解釈が異なると思うけど、僕は自分の価値観を明確にすることだ

          自分探しをするなら小説を読むのが効率的だと思う。

          向かい風と追い風は同じだ。

          「向かい風が吹いたときでも自分自身が向きを変えればいい」 と彼は言った。 「向きを変える?」 と僕は言った。 「トレンドを理解できれば、向かい風を追い風に変えることができる」 「トレンド?」 「そうだ。逆境に直面したときは客観的に考えること」 「うん」 「そうすることで新しい発見やチャンスにめぐりあうことができる」 「そうかもしれない」 「うん。大切なのは意地を張らずに周りをみることだよ」と彼は満面の笑みを浮かべた。 「ありがとう」と言っている僕は涙を流して

          向かい風と追い風は同じだ。

          小説_『部屋』

          このnoteは無料マガジン『部屋』で 連載していた小説を加筆修正したものです。 マガジンでは1話~10話ありますが、 このnoteはそれを一つにまとめています。 この小説は約10分で読めます。 『部屋』 1話 僕は目を覚まし、すぐに違和感を覚えた。 ──知らない部屋だ。 寝起きの頭は思考を停止したまま動かなかった。 少し経ってから状況を確認した。ベッドは同じだ。 部屋だけが違う。 ビルの一室のような何もない空間。 こんなところ来たことが無い。 この部屋にあるの

          小説_『ルール』

          この記事は一瞬で読めます。 「これはルールなんだ。みんなやってる」 と僕は当然のように言った。 「じゃあ、みんなしていたら守らないといけないの?」 と彼女は言った。 「当たり前だよ」 と僕は返答した。 「本当に?」 と彼女は僕の目をみながら、首をかしげた。 ぼくは、その言葉に、返事ができなかった。 部屋の中に雨の音が聞こえた。 ​

          小説_『ルール』

          小説_『多くの時間』

          この記事は約1分で読めます。 「ちょっと待って、仕事してるから」 と僕は彼女に言った。 彼女はスマートフォンに視線を戻した。 仕事。 それは人生の多くの時間を使うものだ。 一般的には。 僕はひとつのことを考えるので手一杯だ。 仕事とプライベート。 ライフワークバランスとかいうけれど、そもそもバランスを取らないといけないのだろうか。 それが義務なのだろうか。 例えば、プライベート一点集中ではだめなのだろうか。 「ああ。まとまらない」 「大丈夫?」 彼女

          小説_『多くの時間』

          部屋 第10話

          おれはいくつかの番号を書き出した。 家族の生年月日、携帯の番号。 8桁の番号は思いつかない。 その中から優先順位を設定した。 何度も間違うとろロックがかかるかもしれないのだ。 まずは母親の生年月日を入力した。 振動が部屋に響き渡った。 生年月日じゃないのか? おれは紙に書いた携帯の電話番号をみた。 「これは8桁じゃない」 080から始まる番号は合計で11桁だ。 先頭の3桁を除くと8桁になる。 「もしかするとこれか?」 おれは携帯番号から080を除いた8

          小説_『フェリー』

          この記事は約1分で読めます。 小学四年生の夏のことだった。 元気にしてるのかな、とたまに思い出す。 きっかけもなく、突然に。 人生で初めて乗ったフェリーは想像を超えて揺れていた。 船ってこんなに揺れるもんなのか。 学校に行くときに乗っているバスよりも揺れる。 周りの人たちはグループで固まったり、ざこねしている人もいる。 ぼくはなにを話そうか考えていた。 するときみは口を開けた。 「あとどれくらいで着くのかな?」 親に片道40分と聞いていたから、 「もう10分ぐらい

          小説_『フェリー』

          『英雄の器』芥川龍之介【オーディオブック】小説

          芥川龍之介の短編小説。 「英雄とはなにか」 考えさせてくれる作品です。 再生時間:6分35秒

          『英雄の器』芥川龍之介【オーディオブック】小説

          『英雄の器』芥川龍之介【オーディオブック】小説

          小説_『変顔』

          この記事は約2分で読めます。 「会社に行きたくないな」 おれは通勤中の電車で思った。 昨日、仕事でミスをして上司に怒られた。 そんなこと、世間ではよくあることだ。 ただ、自分に自信があった部分を指摘されてしまった。 久しぶりに落ち込んだ。 「いまの仕事は自分に向いていないんじゃないか?」 と自問自答していたら、朝がきた。 おれを励ますように、天気がよかった。 今日はいつもよりも、一本遅い電車に乗った。 おれの中のささやかな抵抗だ。 駅で電車が止まり、ベビーカーを押

          小説_『箱の中』

          この記事は約1分で読めます。 ある月曜日の朝。 バス停でため息をついている男が目に入った。 紺色のスーツに身を包み、左手にビジネスカバンを持ち、右手は行き場をなくしたように下ろされている。 髪は黒く、丁寧に撫で付けられている。 男は斜め下に目線を傾けてじっとしていた。 僕はバスが向かってくる右側をずっと見ていた。 「はぁ。」 ため息に重さは無いけれど、もし重さを定義できるとしたら、それは簡単に持ち上げることができないものだった。 そして、そのため息は、おそらく意図的

          小説_『箱の中』

          部屋 第9話

          おれはタッチパネル式のボタンをみつめていた。 「いったい何の数字を入力すればいいんだ」 そのボタンは扉と同じ銀色で、数字が薄い白色の線で囲まれている。 モニターは無い。 おれはひとまず、スマホのロック番号である4桁を入力した。 特に反応はなかった。 次に誕生日を入力した。 これも4桁。 すると、スマホのバイブレーション機能のように扉が振動した。 鍵は開かなかった。 もしかすると、番号は8桁なのかもしれない。 スマートフォンに番号を入力して振動するのは番号を間違っ

          小説_『音楽、愛。』

          この記事は約1分で読めます。 僕はカフェに入り、ワイヤレスイヤホンを取り付けた。 カナル型のイヤホン。 これで周りの音を遮断できる。 淹れたばかりの珈琲が熱くて、飲めたもんじゃない。 昼時のカフェは人が多い。 休憩中と思われるサラリーマンが単独で座ってたり、 学生が楽しそうにおしゃべりしていたり。 僕はポケットからスマートフォンを取り出した。 ミュージックアプリを起動し、昨日追加したばかりのアルバムを再生した。 なんで音楽は愛の話ばかりなのだろうか。 メロデイと一

          小説_『音楽、愛。』