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いつまでも弾き続けていたい

2年ぶりにある小説を再読した。
最近映画化されている作品だ。

出場者たちが優勝を目指して奮闘する姿や、それぞれの登場人物の回想シーンなど、読んでいる僕の気持ちも高揚して「頑張れ!」と思えたし、演奏を言葉で表現するという技術的な側面にも触れることができて読んでいて感銘を受けた。

その中でも一番好きなシーンはこれだ。

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『僕はピアノ好きだよ』

『どのくらい?』

『世界中にたった一人しかいなくても、野原にピアノが転がっていたら、いつまでも弾き続けていたいくらい好きだなあ』
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恩田陸の国際ピアノコンクールを舞台とする小説『蜜蜂と遠雷』で出場者である風間塵(かざまじん)が同じく出場者の栄伝亜夜(えいでんあや)と語り合うシーンだ。

僕はこの小説の中でこのシーンが一番好きだ。
自分が思う「好き」という感情をこんなふうに素直に表現できる人は幸せだと思う。
読んでいて心がほっこりするような感覚になる。

世間を見渡してみると「好きなことして生きていく」というフレーズが流行って数年経つが「自分の好きなことがわからない」と嘆く人は大勢いる。

わからないということは、今自分がしていることが好きなことなのか、嫌いなことなのか不明確にしたまま生きているということだ。そんな生き方は窮屈な感じがする。

自分は何が好きで、何が嫌いなのかを明確にしておかないと、何の時間を増やして何の時間を減らしていくように行動すればいいのかわからない。

だから自分の生活を客観的にみて「幸せだな」とか「好きだな」と思う瞬間をキャッチしておくことが大事だと思う。

写真を撮ったり、人に話したり、寝る前に思い出してみたり。
日記に書いてみるのもいい。

そんなふうに記録して振り返っておくと、また幸せを感じることができる。


最後にもうひとつ風舞塵のセリフを残しておく。

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音楽は本能だもの。鳥は世界に一羽だけだとしても、歌うでしょう。それと同じじゃない?
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生活の中に好きなことは隠れている。

だから「探す」のではなく「見つける」という表現をする。

自分が好きなことは既に生活の一部となっていて、気が付かないぐらい夢中になっていることだ。

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