部屋 第10話
おれはいくつかの番号を書き出した。
家族の生年月日、携帯の番号。
8桁の番号は思いつかない。
その中から優先順位を設定した。
何度も間違うとろロックがかかるかもしれないのだ。
まずは母親の生年月日を入力した。
振動が部屋に響き渡った。
生年月日じゃないのか?
おれは紙に書いた携帯の電話番号をみた。
「これは8桁じゃない」
080から始まる番号は合計で11桁だ。
先頭の3桁を除くと8桁になる。
「もしかするとこれか?」
おれは携帯番号から080を除いた8桁の番号をタッチした。
「うん?」
扉の奥で機械的な音がきこえた。
そして繋がっていたと思っていた扉の中央が割れ、両端にスライドしていった……。
────。おれは嬉しさを一気に取り消した。
おれは紙に文字を書いていた。
いつか部屋におかれていたA4用紙に、縦書きに文章を書いている。
「そして繋がっていたと思っていた扉の中央が割れ、両端にスライドしていった……。」と文章の最後には書かれていた。
どこからが現実なのか。
いつからだ?
セラミックタイルに置かれた紙をみて、顔をあげようとしたがうまくいかなかった。
別に動かせないわけではない。
動かすことを自分で止めたのだ。
おれはそのままの体勢で紙をクシャクシャにした。
そして目を閉じた。
目を閉じている間は、理想的な状況を思い浮かべることに努めた。
────おれは目をあけた。ゆっくりと。
部屋は相変わらず、白い壁に囲まれていた。
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