シェア
まこ
2024年1月12日 17:12
淋しさを浸したらルビー色のダージリンマスカットもいで添えたら水滴と朝もやの味あの空のグラデーション君にも見せたい鼻歌のイミテーション意味もなく添えたい前髪越しのつま先は一定のリズム 揺れているトワイライン トワイライト踏切前で立ち止まった噛み締めた 唇は一定のリズム 震えてるトワイライン トワイライト
2024年1月5日 20:51
君が誇らしげになにかを話す時ぴんと張ったゆびの先丸い瞳の表面が太陽を弾いてつるりと光るわたしはただその顔が愛しくて口の端が引っ張られてついほころぶ君の美しい知識のかけらがわたしの心にやみくもに張ったいくつもの線をゴールテープみたいにぴん、ぴん、と綺麗に切り取っていく
2023年12月1日 10:58
高層ビルから見る夜景より川面の小石に乱反射する太陽の瞬きの方がきっと思い出の飛距離が長い。白鷺の群れが気持ちよさそうに歩いている。じっと微動だにせず一点を眺める嘴の先。たぶん冬の朝の空気を啄んでいる。
2023年8月13日 22:04
誰も傷つけたくないと君が残した米の一粒を僕は指先で捉えてはしずかに口へ運ぶそれは甘い鉛のような質量でそれは連続する一年のようで胃袋の奥に真夏の雪が散り積もる永遠に満ち足りることもなく君の孤独が 君の痛みが何度も何度も蜻蛉の僕を喉元まで埋め尽くす
2023年7月29日 19:30
本をめくる選民思想なような軽薄な指先の踊り孤独な被害者意識に飲まれてまたせっせと穴を掘るひんやり冷えた空気だれからも見えない地平目の前で触れた壁心地よくて黒い獣だけが息もせずうごめく
2023年7月11日 16:18
その部屋は蝉の声で満たされていてわたしがまるで土のようにじっと動かずにいたら太った猫がやってきてわたしのふくらはぎを退屈そうに食べた換気扇の向こう側からアパートの外を歩く人の足音や花が開く音さえも聞こえそれはやがて少しずつ遠ざかった気がつくと私の体は食べ尽くされていてどうして目がないのに見えるのだろうと思った瞬間それが白昼夢であると気がづいたそれから幾度となくその夢
2023年4月13日 00:03
ふと、目を覚ましたまだ真っ暗の部屋の中は生ぬるくぽつりぽつりと頬に落ちた雨が握りしめたアイスクリームのようにわたしの皮膚を撫でて溶かしていく遠くで切り裂くように鳥が鳴いて羊水のようなあたたかな海へわたしは急いで潜水する
2023年4月2日 18:00
助けてくださいと言えるのは助けてもらえるという確信があるからで枝葉を太陽に伸ばすときそれ以上に根は地中に向かって伸びている生きるとは根を張り枝を張ることだそれはわたしの心臓から足の裏へ足の裏から地中へと複雑に絡み合いながら伸びているそしてわたしは屹立しながらあなたに向けて一心に手を伸ばしその肩を抱きとめるだろう
2023年3月2日 12:53
ゆっくりと夏を脱ぎ去るようにあたたかい雨が降っている湿った空気が皮膚を撫でて頬杖をついたまま目を閉じて窓の外へじっと耳をすませる私もこのままやさしい夜の黒に薄く溶けていけたらいいのに
2022年7月4日 17:38
梅雨が明け後も京都の夏の風はまだ少し湿っている蚊取り線香と汗と畳の匂いが混ざり合うオレンジ色にぼんやりと夜道を照らす提灯に沿って そぞろ歩く人の後ろ姿遠くから鳴りつづける祭囃子の音にこの少し浮かれた夜が永遠に終わってほしくなくて布団の中で微かな音に耳を澄ませる
2022年6月3日 22:57
空気にそっとオブラートを溶かす少しくらいぼやけていた方が綺麗さ君は左肩を濡らしながら笑うコンタクトレンズを外して見る街灯の光 枕元の読書灯曇ったショーウィンドウの前でわたしは目を閉じて巻貝に耳を寄せる雑踏が混じり合いひとつになり消える額から鼻梁を伝い こぼれた滴がすぐに街を満たしてやがて海になる