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『夏祭りの実行委員に立候補した』


夏祭りの実行委員に立候補した


謎のウイルスが猛威を奮って

去年まで夏祭りは中止続き


本来ならば3年生は

受験で忙しい身

実行委員も2年生がやるんだけど


僕はあえてここへ切り込む


ようやく高3のこの夏

僕は青春を謳歌するんだ


担任や親も心配しているけど

まったくもって勝手だよね


だったら僕のこと

第一志望へ推薦してくれれば

それで済むじゃないか


それで思いっきり

僕は夏祭りを作り上げられる


話が逸れてしまったけど

とにかく僕は周囲の声を押し切って

県立芋蕨いもわらび高校の夏祭り実行委員に

晴れて就任したというわけ


唯一の3年生ってこともあるし

せっかくならセンターつまり

実行委員長にならないと


そんな想いに鼻息を強ませながら

僕は実行委員の初顔合わせに向かった


放課後の音楽室

ふだんであれば

吹奏楽部が使うこの部屋に

実行委員たちがぞろぞろと顔を見せる


僕は誰よりも早く教室で待ち

白い歯をみせてみんなを出迎える

きっと1年生は緊張しているよな

たぶん2年生は責任感に潰されそう?

唯一の3年生の僕がしっかりしなくちゃ…


あっ!

白烏零しろからすれいさんだ!


県立芋蕨いもわらび高校全生徒

いや

一部の変態教師も含めたみんなアイドル

白烏零しろからすれいさんだ!


白烏零しろからすれいさんも

実行委員をやるのか

これはいよいよ楽しくなってきたぞ


僕が実行委員長で

白烏零しろからすれいさんが副委員長…


夏祭りは目前

準備がまだまだたんまり残っている

実行委員たちは部活に勉強にバイトに

気もそぞろになっている頃

僕と白烏零しろからすれいさんは

やむなく二人っきりで…


バチィン!


左頬を強い衝撃が襲った

奥歯が弧を描いて飛んでいくのが見える


白烏零しろからすれいさんだ


僕のことをビンタしたの?

ほんとう?


「キモすぎるから」


どうやら僕は

実行委員顧問の先生による説明の間

寝落ちしていたようだ


「ウチの名前連呼すんのやめて」


寝言でさっきの妄想を

つぶやいていたみたい


「てかあんた3年でしょ?キモ」


白烏零しろからすれいさん…


僕はあなたに嫌われて…

いや

これはもしかして

ワンチャンあるかも

従順な下僕として

僕は白烏零しろからすれいさんに

仕えられるかもしれない


そんな想いを

白烏零しろからすれいさんに

思い切って伝えてみたら


僕は廊下に蹴り出された


なんだろうこの気持ち


僕の夏はまだまだ

これからかもしれない








(あとがき)

高校ってふつう部活もあるし夏祭りじゃないよな。春か秋だよな。








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