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たぶん、それは愛じゃない。

赤ワインを(ほとんど1人で)1本開けた次の日の頭の重さは、とてもじゃないけれど耐えられるものではない。これが酸化防止剤のせいだということはわかっているのに、何度でも間違いを繰り返す哀れな自分のことを危うく嫌いになりそうになる。それでも懲りずに甘やかし続けてしまうわたしはちゃんとしたダメ人間だ。二日酔いの朝だけは自分がちゃんとしたダメ人間であることを自覚できる。ただ、自分のことを本気で嫌いになってしまう前にはさすがに戒めて欲しい。しかも、わたしの彼は酒飲みを倦厭しているので、いまのうちから「2週間ルール」が無効となる4月以降の付き合い方をちゃんと考えておかなければならない。彼ではなくお酒との「付き合い方」です。もちろん。


昨夜のnoteにも書いた、わたしのことが好きな男の子はたぶんわたしのことは好きではないのだと思う。昨夜久しぶりに話し込んで、改めてそう感じた。いや、本人が好きだと言って(くれて)いるのだからわたしがあれこれと口を出すことではない、ということはわかっている。でも、わたしは確かに彼に甘やかされてはいるけれど、「好かれている」といままで感じたことは1度もない。愛だとか恋だとか、憎しみとか、人間とは何かとか、自分の頭で痛みを感じながらそれについて深く考えたことがないのだと思う。これまで散々やさしくしてもらった相手に対して、本当に失礼なことを言っているのはわかっているけれど、ここまで来るとタイピングをしている自分の指を止められなくなっている。その子はわたしが好きということに執着しているだけで、わたしという人間と向き合う気は最初からそれほどなかったのだと思う。わたしはなぜかそういう雰囲気を即座に察知してしまう能力が備わっていたから、どれだけかっこよくてもやさしくてもわたしのことを「好き」と言ってくれたとしても、惹かれなかった。

わざわざ趣味嗜好を合わせようとしてくるその子をみて、「自分、これだけは詳しいです!愛をもって語れます!」と胸を張って言える趣味がこの人にはないのか、と思って嫌になった。わたしの趣味はわたしが好きになったものであって、それはこれまでの「わたし」の経験とか記憶とかが複雑に絡み合ってたどり着いた結果なわけだから、(それがたまたま同じものを好きになったなら良いけど、)無理に合わせるものではないだろうと思っている。しかも、その趣味に関わろうとする「目的」が「わたしとの公約数を増やすため」という点もすごく嫌だった。そういうかたちでの寄り添い方をうれしいと感じる女の子は絶対にいる(そっちの方が一般的かも)と思うけれど、わたしはまったく喜ばない。なんなら止めてほしいとすら思っていたし、実際に直接そう言った。わたしに関わりすぎないで、と。本当にわたしのことが好きなら──というか、わたしという1人の人間を尊重してくれていたのであれば、「この子はもしかしたら、趣味の領域を他人に侵されることを嫌がるかもしれない」と想像することができたのではないか、と思ってしまう。結局その子は、どこまでもわたしを好きな自分のことが好きだったのだと思う。そして、そのことに必要以上に執着していた。他人の執着に巻き込まれることに耐えられなかったから、3年前に1度、わたしから一方的に絶縁を申し入れた。もちろん、他人を通して自分のことを好きになれるということはそれはそれで素晴らしいことだし、実際にわたしも「彼を好きなわたしが好き」なので、そのこと自体を否定できる身分ではない。でもそれが目的になってしまうと、その先にはきっと何もないし、それは言ってしまえば、わたしが人間としてこの世で生きている意味がない。日々、大小様々な葛藤のなかで藻掻き苦しみながら生きている意味がない。そう思ってしまったから、わたしはあなたのことを好きになれなかったし、あなたからの好意を「良いもの」として受け取ることができなかった。とてもじゃないけど、あなたに好かれているとは思えなかった。

過去に人生のどん底を見たことがあると思いながら生きているひとのことが好きだから、わたしはその子の前では自分の言葉で話すことができていた。だから居心地が良かったし、とても深く、仲良くなれたと思っている。相手の気持ちに応えられなくても、自分の人生に関わってくれた大切な人間であるということに変わりはない。でもやっぱり、あなたがわたしに抱いていた想いは「愛」とか「恋」ではなかった。わたしはだいぶ前にそれを察していて、徐々に確信に変わっていったのだと思う。好きな小説に出てくる女性は「恋は全部間違いよ」というのが、その子とわたしの間に「間違い」なんてなかった。それはそうだ。どうしようもない矛盾に気づけるほど、深く突き詰めようとしなかったから。

その子がわたしのことを表す言葉はどれも無機質で、わたしについて語っているとは思えないものだった。耳に届く前に、音が死んでいた。


昨夜、家まで送ってもらう途中にあなたが言った「俺、君の顔がすごい好きなんだよね」という言葉がすべてを物語っていた。わたしは「顔が良い」で生きてこなかった人間なので、そう言ってもらえたのはとてもありがたいことだよ。君が好きなのは顔だけでないということもちゃんとわかっているよ。でも、あなたは最後まで「わたし」という生きている人間(とその変化)をまったく捉えられていなかったし、捉えようともしていなかったんじゃないかな。まだ22歳だから、致し方ないことだと思う。たぶん君が38歳だったら…いや、ないかな。


わたしがこのような文章を書いていることをもしその子が知ったら、とても傷つくだろう。絶対に気づくことがありませんように、と願う。人間関係たるもの、自分ではどうにもできない矛盾を見つけてからが本番です。わたしは楽しかった。

それではまた。

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