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山川方夫「朝のヨット」

本日は山川方夫「朝のヨット」を朗読しております。


山川方夫(やまかわまさお・1930〜1965)は「三田文学」を編集、その後自らも筆をとり、米「ライフ」誌に「お守り」の翻訳が掲載されたりと、短編、ショートショートの名手でした。

冒頭の、「朝のヨット」に乗っているのは、少女です。

前日に海に行った少年の、このセリフ。

「君といっしょにいると、僕は、ときどきもう一人の自分が、ひどく遠いところに置き去りにされているような気分になる。僕は、そのもう一人の自分を取りもどすために海へ行くんだ。(後略)」

前半の状況がどんなに幸福であるかということに、気づきながらも怖れている少年の若さ、幼さ。後半の行動に駆り立てられる少年の、恋という観点からだと愚かにも見えるストイックさ。わかりやすくてシンプルで、うまい書き方だなあと、初めて読んだときから印象にのこっています。

ところで一箇所、「とにかく」を「ともかく」と読み間違えたことに、あとで気づきました…天国の山川さん、どうぞおゆるしください。🙏

1年ほど前に朗読した、同氏の作品「トンボの死」も、あわせてお聴きいただけましたら幸いです。


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