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うすいさちよは本当に幸薄なのか?

「おじゃる丸」の登場人物、うすいさちよ。28歳独身。

将来少女漫画で一発ドカンと当てて大金持ちになり、王子様と結婚して幸せに暮らすことを夢見ている。

しかし彼女の才はどちらかと言うとホラー漫画にあり、登場のたびに不穏なBGMが流れ、幸薄の象徴のように描かれている。


わたしはさちよと同じ「28歳独身」という肩書きを持つことを恐れていた。なんとなく惨めな気がしたからだ。

しかし様々な経験を経ていざその年齢が近くなってくると、さちよへの見方が変わってきて、「さちよは周りが思っているほど不幸ではないのではないか…?」と思うようになってきた。


夢に向かってがむしゃらである

うすいさちよは、“売れない漫画家”として描かれている。これは作者の犬丸りん氏自身をモデルに描いたキャラクターとも言われている。

しかし彼女はまだ20代。近年は20代で爆発的ヒットを生み出す漫画家も多いが、それは全漫画家のほんの一握り。

おそらくほとんどの20代の漫画家は、アシスタントとして連載を持つ漫画家につき、その合間に自身の作品を描いて出版社に持ち込んだり、現代ならネット上に自分の作品を公開したりしていると思う。

しかしさちよは誰につくこともなく、自分の納得いく作品を、他者から納得する評価を得るまで描き続けている。


さちよは普段ホラー漫画調のイラストしか描けないが、“スランプ”に陥ると万人受けしそうな画風の少女漫画を描けるようになる。

それが編集者の目に入り、連載のオファーを受けるが、「これはダメな作品」と言って漫画を破り捨ててしまう。


せっかくのチャンスを逃している、意固地にならなければ成功できたのに、とも思うかもしれないが、人の意見に左右されずに、自分の夢に向かって自分の思うままに進むことができるなんて、かなり幸せなことなんじゃないかと思う。


ところで、売れていないのに生活費はどこから出ているのか…というのはアニメだから考えないことにしよう。。ちなみにさちよパパは郵便配達をしているらしい。


自分に対してポジティブである

長すぎる髪、クマのできた目元、ボソボソと話す尖った口、猫背に似合わないピンクのワンピース――見た目はいかにも根暗なイメージである。

そして前述のように、ホラー漫画のような画風の絵しか描かないため、闇の深い人生でも送ってきたのではないかと思われがちである。

そしてその画風で描かれた“少女漫画”は、案の定不発続きである。


しかしさちよは「どうせわたしなんか…」という言葉を使って自分を見限ったりしない。

それに、「売れっ子少女漫画家・うすいさちよ」像をかなりはっきりとイメージしていて、いつか絶対叶うと信じている。


たいていの人は、夢を持っても「叶ったらいいな」くらいに思っていたり、「叶えたいけど無理かもしれない」と思ってしまいがちだと思う。

「わたしの夢は絶対叶う!」という強い意志は、自己肯定感が高くないとなかなか持てるものではない。

自己啓発本を何冊も読んで、インフルエンサーの写真や動画を見て、学ぶことは多いけどなかなか実行にうつせない現代人にとっては、うらやましい性格なのではないかと思う。


キラキラした生活を送っていそうな人だって病んでしまう時代。内面は外見に出るとは言っても、見かけだけでその人の幸不幸まで決めつけるのは拙速な判断である。


自分なりのリラックス法がある

うすいさちよの好きなものは漫画だけではない。

さちよは薄ーーーい紅茶を飲む趣味を持っている。しかし新品のティーパックは濃すぎるので、大家のマリーさんから貰った使用済みのティーパックを干して再利用している。7回目のパックがベストとのこと。
(※他のブログやまとめサイトで5回までと書いてあるが、わたしの記憶では7回…)

そして使い古したティーパックは開いて乾燥させてメモ帳にする。売れない漫画家だからこそだが、節約も楽しんでいる様子。


また、さちよはたびたび妄想をする癖がある。

そしてその妄想の中には必ず“さちよの王子様”が出てくる。その“王子様”は架空の人物である時もあれば、冷徹斎やカンブツさんのような、身近な人である時もある。

脳科学的にも、恋のときめきはやる気を出したり前向きになったりする脳内伝達物質を出す。よって妄想はさちよが漫画家を目指すうえでのエネルギーチャージになっていると思う。

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不足を不足と思わない

多くの人は雨の日になると気持ちがブルーになってしまったり、気圧のせいで体調が悪くなってしまったりするだろう。

しかしさちよはじめじめとした雨の日が好きだ。むしろ気分が明るくなる。部屋もキノコが生えるほど湿っぽいが、そんな空間が落ち着くという。

さらに満願神社の貧乏神・貧ちゃんが取り憑いても普段と変わらない。貧ちゃんは人間には見えない設定なので、いつどこで取り憑いたかはちっちゃいものクラブのメンバーが現場を見ていない限り分からない。


さちよは大きな夢こそ見ているが、ある意味“幸せ”のハードルが低いのではないかと思う。

たいていの人はちょっと体調が悪い、空が暗いだけでため息をついてしまう。“幸せ”を感じるのに曖昧だが様々な条件がある。

一方で、さちよは常に低空飛行。薄い紅茶を飲んで漫画さえ描ければ満足する。「あれがあったらなあ、これができればなあ」と無いものねだりをしない。

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多くの人は、何かを実現するためになにとどれが必要で、揃えられないと諦めたりする。また、それらを揃えた時点で満足して終わる人もいる。

一方で、さちよは大きな夢を掴むために、今あるもので勝負しようとする。欲しいもの・必要なものは原稿用紙くらい。夢はあるけど、欲はない。この絶妙なバランスは悟りでも開かないとなかなか持てるものではない。


不器用なアラサー女子よ、さちよに学べ

うすいさちよは決して世渡り上手ではない。見た目や話し方の印象も悪く、持っている才能を使うべき方向に使わず、あえていばらの道を進もうとしている。

しかし、彼女はそんな不器用な人生を楽しんでいる。

「絵がホラーに見える」だったり「こんな髪型にしたらカワイイのに!」といったアドバイスを聞き入れない頑固さがあるが、本人が「それでもいい!」と言うのなら、他人はこれ以上口出しできない。

自分で自分の社会的評価は決められないが、自分の何を幸せと感じるかは他人に決めることはできない。


他の誰にも決められない、あなたの幸せとは?

≪画像はアニメ「おじゃる丸」より引用≫

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