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40代以上ITエンジニアのキャリア選択

今でこそ独立したのですが、起業への模索と並行して転職活動も並行していました。現在も継続してミドル・シニアの採用に関わっているため、自身の経験と合わせ従来のコンテンツから更に踏み込んで見えてきた事柄についてお話していきます。本コンテンツでは40代以上をミドル・シニアと位置づけます。

追い上げてくる若手

3月末に新卒・第二新卒を巡る市場感についてお話をしました。このコンテンツでは上位層における突出した人材とそれに対する待遇について言及しています。

先立ってレバテックの新卒エンジニア紹介事業であるレバテックルーキーが企業に対して「新卒エンジニアに求められるプログラミングスキルに関する調査結果」を発表しています。抑えておくべきポイントは下記かと思います。

  • 「ITパスポートや基本情報技術者試験等の資格取得」を求める 43.6%

  • 「授業以外での成果物作成経験」27.0%

  • 「プログラミング経験年数 1年以上」 31.9%、「同 2年以上」19.3%

後半に出ている「入社までに学んでほしいと思うプログラミング言語」がJava、C/C++であるというのが手続き型言語の基礎だからなのか、アンケート回答企業がSIerが多いからかは気になるところです。もしこれが「SIerが多いから」だとするともう一つ注意しなければならないことがあります。従来のSIerは新卒一括採用、知識が0であることを想定しての一括教育を社内でしていたため、IT教育機関としての側面を持ってきました。もしこのSIerが「すでに初級レベルの知識を身に着けていることを前提として新卒採用をしている」となるとIT教育機関としてのSIerが変化していることになります。つまりこれは新卒からすると「在学中にプログラミングをすることによるアドバンテージの大きさ」に繋がる一方、ミドルからすると「新卒のレベル底上げに伴う下からの追い上げの激化」を意味することとなります。

ミドル・シニアでも尚、純粋なプレイヤーとして生涯を歩んでいくとなるとこうした若手と競合することになります。単価競争に走る(安価に仕事を請け負う)ことを避けるためには下記のような選択が想定され、若手との差別化が求められることになります。

  • 経験が重宝される複雑な現場に行く

  • 技術的難易度の高い現場に行く

  • 需要のあるレアスキルを身につける

  • メンバー層を脱する

正社員転職時のハードル

これまでお話してきたように、市場感としては40代の転職はあまり問題にならなくなっています。転職市場では正社員については50代の受け入れが焦点になっており、派遣社員では60代の受け入れが焦点になってきています。まだIT人材を買い手市場の中で採用できていた2015-2018年までは「35歳以上は採らない」「転職回数は3回未満」という経営判断をしても採用できていたのですが、今その選択肢を取っている会社では未経験しか採用できていません。

ミドル・シニアの受け入れは進んでは居るものの、安泰かと言われると以下の注意が必要です。

緩衝材のとしての中間管理職

中間管理職以上になると、経営側に数えられることが増えます。勢い、経営者の掲げる方針に対して賛同できるか否かというのは重要な問題になります。ここが非常に難しいです。

  • 外向きの発信と実情との乖離

  • 経営者の気持ちや方針が途中で変わる

中規模以上の会社組織の多くは中間管理職が緩衝材になっており、メンバー層は無風でも中間管理職は経営層からの強い風雨に晒されていてドロドロしている会社というのは多くあります。そしてそのドロドロの度合いは入ってみて暫くしないと分かりません。そのため「入社時に抱いていた環境と違う」となりがちです。メンバー層であれば中間管理職の緩衝材に守られているため、経営のドロドロは「知らない世界の話」なので何とかなりやすいのですが、中間管理職以上は直接晒されてしまうため辛い現場は辛いですし、ご自身と合わない現場は合いません。

中間管理職以上は「思想が伸るか反るか」

ここのところよく見る企業運営のパターンとしては下記のようなものがあります。

  1. ボトムアップでの組織づくりを掲げていた、もしくは自由にさせていた

  2. 周囲に比べての待遇の問題などで離職が続いた

  3. ボトムアップ型の組織運営が面倒になった

  4. トップダウン型の組織マネージメントフレームワークの導入、強めのコンサルタント、剛腕タイプ(2000年代前半までの長時間残業をベースにした組織づくり経験者)の経営層や管理職を入れた

  5. 止まらない離職

ボトムアップ型の組織運営はパラメーターが多く、源泉としての従業員のモチベーションの問題があるため複雑です。その点、4に挙げた解決策は極めて分かりやすいものであるため、ボトムアップ型が面倒になった経営者には非常にウケが良いという側面があります。

もしあなたがボトムアップ型の組織づくりを好むようであれば、こうしたスパイラルに突入した企業へ中間管理職としての中途入社することはお勧めできません。受け入れる企業側としてもこれは宗教レベルの違いなので受け入れはお勧めできません。私もこうした方針を取られようとしている企業さんにはボトムアップ型を志向する中間管理職の採用はお勧めしていません。

ハロー効果でいつまで食えるか

有名企業に在籍した経験があると社格の小さな企業への転職が退職後数年間しやすくなります。無いよりはあったほうが良いが、永続的なものではないのもまたハロー効果です。注意すべきは4点です。

1点目はハロー効果のハードルです。IT企業の場合、いわゆるテックドリブンで且つ有名企業であればハロー効果は発生します。その一方でブランドイメージとしては派手めでも実態は営業職が強いとITエンジニアとしてのハロー効果はそう高くありません。このあたりは自身がトップクラスの有名企業に在籍していれば明らかですが、第二集団以降は実際に転職市場で多少揉まれてみないと分かりにくいものです。

2点目は経過時間です。元○○社という肩書を何年使えるかという問題です。5年以上前の在籍企業名を言われても今の評価とリンクして考えられるかというと厳しい印象があります。

3点目は当該企業が継続して輝き続けているかという問題です。例えば下記の3点です。

  • 一時期は業界内で有名だったものの買収されて痕跡がなくなり時と共に忘却される

  • 売上、ブランド力が低下して威光がなくなる

  • 何かしらのやらかしで悪い方向で有名になり口にするのも憚られる

特に最後のものは急に名乗りにくくなるので厄介です。独立し、ハロー効果で受注できていた場合はクリティカルな問題ですが、最早中の人ではないのでプロフィールから会社名を削ることしかできません。

4点目は組織化された企業の場合、その人単体になったときにどの程度のパフォーマンスが出るかは不明というものです。平たく言うと大きな仕事をできていたのはブランドイメージのおかげだったり、周りのスタッフが優秀だったりするというものです。このパターンは小さい企業に移った時に概ね悲惨なことになりがちです。自身のスキルに確証がない場合、同等の社格の会社間で転職するのがより確からしい傾向にあります。

Connecting the dotsによる経歴のストーリー立て

ポジションを問わず、過去の経歴を棚卸しし「自身の強み」として話せる準備は年を重ねるごとに重要になります。

一方、30代~50代から一念発起して未経験エンジニアを目指される方が居られます。それまでのキャリアを踏まえた上で挑戦される分には良いかと思うのですが、多くの方の姿勢が「人生のリセット」「一発逆転」を意図しているのが気になるところです。上記のように既に経験者エンジニアであっても注意点は多いので、全くの0からのスタートであると現職がよほど低い待遇で無い限りはお勧めはできません。自身のキャリアを棚卸し、そこにアドオンする形でITスキルがあるのであれば問題はないでしょう。他方、未経験フリーランスを煽る情報商材のターゲットにもなっている傾向がありますのでご注意ください。

一つの選択肢としてのスタートアップの立て直し

経験者エンジニアでないと入りにくいキャリアとして、個人的に注目しているのは「スタートアップの立て直し」です。

0-1が好きなエンジニアがドキュメントを残さず去ったものの、急に資金調達や契約が決まって慌てている企業が少なからずあります。こうした現場では何故動いているのかを解明するところから始めるため、難易度が高いため参入障壁が高いです。よく言えば古文書解析、そうでない場合は汚部屋のリフォームのようなものなのでお金はあってもなり手が少ないため狙い目ではあります。ただ、あくまでも確からしさがまだまだ不透明なスタートアップなので副業や業務委託からスタートし、双方のマッチングがあれば正社員転職するくらいが安全です。

定着していくと思われる副業からの参画

企業側も候補者側も共に年齢とともに警戒するのが今の日本の状態なのですが、それを緩和する打ち手が「実際にお試しで参画する」ことであり、その上で双方合意できれば正社員契約や長期契約をするというものです。

こう書くと「雇用主に優位なのではないか」という話が出るわけですが、候補者側からしても面接などでの数時間の接触で企業の良し悪しなど見極められるはずもなく、履歴書に余計な行数が増えなくて済むという点では合理的だと考えています。

見るべきは下記の3点です。

  • スキルマッチ

  • カルチャーマッチ

  • 社内政治

副業・複業マッチングサービスのOffersを見ていると、副業から始めて正社員になる方が増加傾向にあります。実状が分からないスタートアップは勿論のこと、漠然とした偏見を抱きがちな大企業への副業からのDXプロジェクト参画も起きています。

業務委託・独立・派遣という選択肢

中間管理職として転職をするのと、業務委託で提案をするのとを並行して進めると話の進み方が全く違うことがよく分かります。

ミドル・シニアになってくると一般的にそれなりの年収になることもあり、正社員の場合では下記のような懸念が企業側に湧いてきます。

  • 面接では良さそうな感触が得られたが、実際はどうなのか

  • 今までの実績は理解できたが、同等以上のパフォーマンスを発揮してもらえるか

  • パフォーマンスが芳しくないまま高額な年収で定年までぶら下がられたらどうしよう

私自身、スカウトなどを打ったりサポートしたりするのですが、40代は十分にスコープに入る企業さんが多いです。50代は企業さんによってはOKが出ます。しかし60歳や63歳などに対象企業の定年があると、スキルや人物面はよくても正社員としてのスカウトできないという現実があります。定年の定義が世間的に変わっても、それが浸透するのはいくらかラグがあるでしょう。

こうした状況を考えると、業務委託契約や派遣契約という選択肢は現実的です。起業までしなくとも、個人事業主で十分じゃないかと思います。50歳を越えて現職を退職する場合は、正社員転職のみではなく、個人事業主も同様に検討する必要があるのではないかと感じています。私自身、こうしたことを鑑みながら「流しのEM」としてマネージメント職を業務委託として切り売りする試みを実施しています。

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