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エンジニア採用のボトルネック/エンジニア採用担当・ジンジニア・EM・VPoEの会社選び

ありがたいことに転職相談を頂くことが増えて来ました。私としましても皆さんのリアルな悩みは学びが多いです。

中でもエンジニア採用に関わる職種については私自身が通った(結果的には選ばなかった)道でもありますので質問ポイントをお伝えしています。普段はご相談頂いた皆さんの境遇や方向性を見ながら出し分けているのですが、今回はそのダイジェスト版です。

私が転職活動をしていたのは2020年7月、8月でした。その時と比べてもエンジニア採用シーンは厳しくなっており、「まずは採用担当から」とする企業も増えている印象です。スカウト媒体などでもスキルのところにプログラミングやマネージメントと並んで「エンジニア採用」とされている方も出てきました。

雇用条件がマッチするという事実だけ見ると良いことですが、そこまで単純ではありません。キーワードは仕事のやりやすさです。では注意点を見ていきましょう。

採用担当は全能ではない

人事採用担当と言っても、企業によって異なりますが下記のような働きが必要です。

・人事機能の一部
・企業ブランディングから始める場合は広報
・候補者に対してスカウトを打ち面談で口説く姿勢は営業職
・予算獲得の姿勢は事業責任者
・数値管理の観点からデータアナリスト
・文化形成の観点からムードメーカー

これらを満たした上でも経営者でもなければ、別にプロダクトを作っているわけでも、プロダクトを売っているわけではありません。プロダクトを取り巻く時勢も必要です。

全ての環境や時勢に恵まれると気持ちよく採用How Toが発揮できますが、大きく欠落するものがあると厳しいものになります。そのため、今回のテーマである企業選びが重要になってきます。

【企業選びの前に】自身の能力を正しく評価する

最初に出しますが、一番難しいポイントです。自分自身が主にこれまでの所属組織のハロー効果をどの程度纏っているかは全く分かりません。普段一緒に働いている人も分かりません。並の転職エージェントもあまり分かりません。

多くの職業において職歴のハロー効果である程度仕事ができますが、採用担当については全くハロー効果を纏ってない看板を背負い直したときに何が起きるのかが問題です。母集団形成が自社のブランド名で放っておいてもできていた頃から、全く何もない、もしくはマイナスからスタートするのでは全くやることが違います。

マイナスからのスタートについて私の経験から補足しておきます。前任者が紹介会社に対して高圧的だったことから驚くほどに都内の紹介会社から距離を取られていました。一社一社訪問し、会社説明とサービス説明をしながら「弊社、怖くないですよ」と誤解を解いていきました。しかし紹介会社界隈は当時から人材が流動的だったので悪評とエージェントの転職がセットで拡がっていきます。自社の悪評を聞かなくなるまでに3年程度掛かりました。これがマイナスからのスタートです。

残念ながらこのポイントは非常に重要でして、ハロー効果の大きい著名なメガベンチャーや、ハロー効果に加え批評する側に回ってしまっている人材紹介会社から1-10、10-100フェーズの企業に移って苦労するパターンは非常に多くあります。個人のSNS発信からして止まる。

逆にSeed期やネクストユニコーン以外の中小企業で経験者採用を成功させた経験がある場合は、自身の功績部分や工夫した点を棚卸しすれば概ね問題のない傾向にあります。

会社を選ばねばならぬ理由

どこもかしこもエンジニア不足、エンジニアの確保が中小企業の明暗を分けかねないので採用担当の獲得は必死になっています。

採用担当はそんな中からどう会社を選ぶ必要があるでしょうか。それは採用担当である自分自身の福利厚生や待遇よりも「仕事のしやすさ」であり、「採用のしやすさ」です。

残念ながら「エンジニア採用担当が来たからこれで後はこの人の責任だ!」と切り上げてしまう企業は少なくありません。

・採用のスタートラインはどこか
・企業からの支援はあるか
・企業からの支援と、スタートラインを差し引きしたときに自分がどうにかできるレベルか

最後の計算が不釣り合いであればその企業は選ばないほうが良いでしょう。

【会社選び】採用にかける予算

採用にどの程度予算があるか分かる質問として、人材紹介会社と契約する際の人材紹介フィーがあります。2021年の相場だと35-40%ですが、これを渋る会社さんは採用にかける予算が低い可能性が高いです。契約前に値切って25%とかあります。契約はできますが紹介優先順位は下がります。

選考の過程で出てくる役員が予算や費用感について態度変容できなさそうであれば避けたほうが懸命です。

ワーストケースとしては採用コストが最も安価で無尽蔵に時間だけかかるTwitter採用しかできなくなります。コストを掛けずに手間と工夫で乗り切るというのは聞こえは良いですが、一種のやりがい搾取であるリスクがあります。

【会社選び】何故内製化しようとしているか

何故内製化しようとしているのか質問してみてください。予算投下がまとまって必要な採用である一方で、雰囲気で内製化をしている会社さんはあります。雰囲気で内製化する会社さんは雰囲気で海外開発拠点を作ったりするので、予算が分散しがちです。

エンジニア組織をつくる文化形成に対する理解にも繋がるため、クリアにしておくのが良いでしょう。

【会社選び】エンジニアを大切にしようとする気持ちがあるか、給与提示はどうか

妙に待遇が相場より低かったり、みなし残業が長かったりしませんか?

2015年までは上記が多少不利でもプロダクトの魅力で訴求することができました。何なら「他社より低い提示をしてそれでも来てくれたらガッツがある」として内定出しができました。ある組織づくりの書籍に同様のことが書いてありましたので営業職などでは通用するのかも知れません。

このロジックは2015年以降の売り手市場では無理です。フリーランス化に向けての実績が欲しい1年で辞める未経験しか来ません。スタートラインに立ってないのです。

【会社選び】エンジニア採用で武器となる就業規則に対する理解があるか

リモートワークNG、副業NG。これも前提条件です。各種採用媒体でも検索条件に実装されています。これをNGにすることは(特に経験者の)検索に出て来ないことを意味します。

フレックスNG。リモートワーク前提であれば優先順位としては以前より低くなったように見えますが、育児中世代だとここはまだ高いです。

未導入の場合、この当たりの変更の余地があるかを確認しましょう。けんもほろろだと採用には相当苦労します。

【会社選び】自分がスカウトを打つことを想定したときにウリ文句を想像できるか

この観点は重要です。これからスカウトなり、面談なり、面接なり、オファーなりで自社のミッションビジョンから始まってこんこんと魅力を唱えなければなりません。

私も組織の立て直しを何度か経験していますが、特にミッションビジョンについてはボトムアップで決めるものではなく、経営層が定めないと迷走します。

自身の選考過程の中で候補者に訴求できそうな材料はあるのか振り返ってみてください。特に見つからないとなると入社後に「うちの会社って何が良かったんだっけ?」と自分自身のキャリアにも影響するレベルで迷子になります。

【会社の雰囲気】現場との温度感

役員がエンジニア組織に期待していることと、エンジニア組織、特にエンジニア組織のトップが抱いている思いが全く違うことが多々あります。

私が経験したところで行くと、役員が改革を焦っているのに対し、ある程度のデータ優位性があることを知っているエンジニア組織のトップは改革を検討する必要すら感じていないケースがありました。影響力が強い部署がポジティブに胡座をかいている場合、会社代表より強かったりするので改革はやりにくいです。

ポジティブに胡座をかけているということは今現在の業績という意味では非常に心強いのですが、役員から期待される改革の達成は現場の協力なくして達成はできないです。宙に浮いたり消される可能性すらあります。

ポジティブに胡座を書いている組織より、社内受託感が漂っている組織のほうが「助けが来た」という観点で歓迎されますし、視座上げやBizDevの重要性を説くなど方法論があるのでやりやすいです。

【内定後】入社後の握り

「半年でn人採用」などの握りは避けましょう。現在の採用市場では会社からのバックアップが無限でも厳しいです。無理な約束ですし、真っ当な開発組織であれば「数より質」を問います。「質より数」を追うのはエンジニア職ではなく営業職のロジックです。真っ当な現場であれば質を問います。大量採用で有名になった企業さんでも、現場は「数より質」と嘆いていました。

【企業】そして企業はどうすべきか?

上記を整備すれば採用のミッションは履行しやすくなるため選ばれやすくなります。しかしそれでも複数名の経験者を採用できるとは限らないのが難しいところなので、採用市場の変動も含めて気長に見守ってください。特に2021年7月現在では直ぐに採用に繋げられるのは未経験くらいでしょう。

よくRPGの序盤で王様が勇者一人を呼び出してボロい剣や布の服といった最低限の装備を与えて「国を救ってくれ」と言いますよね。でもそれって国を救ってもらう気はないですよね。本来であれば活躍のためにはそれなりの武器、予算、仲間を与えた上で依頼するべきなのです。

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