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【やってみた】アラフォーミドルの転職 IT中間管理職編 〜コロナ禍の激闘23社

 先の退職エントリへの反響、ありがとうございました。あちらはキャリアパスのお話でしたが今回は戦果報告です。転職をする時期としてはご時勢、年齢、役職のいずれも厳しい感じでした。普通、頃合い的には転職を選択することはないと思いますが。結果、納得のできる着地ができましたので、自身の反省点を交えながら残しておきたいと思います。何かSPA臭がしますが、極力自己開示させていただきました。

・WEBベンチャー界隈ではシニアにカウントされる38歳
・転職しにくそうな中間管理職(非CxO)
・市場が不明で多くのスカウトサービスにカテゴリすらないEM職
・転職しにくいと言われるコロナ禍

 転職活動中の方、転職を考えているミドルの方、漠然とミドルに対して不安を感じている若手の方、そしてミドルに苦手意識のある転職エージェントの方などにも参考になれば幸いです。

私自身のスペック

 20代のときはITインフラ研究職をしながら大学教員を目指していました。その後マッチングサービスのSRE・エンジニアリクルーター・情シス、上場を経てレバレジーズに至ります。強みはEM、プレゼン、非専門職への教育、インフラ、情シスなどになります。ここ4年程度は中間管理職です。開発組織を倍にしたり、2社続けて情シスをつくったりしてきました。現職ではVPoE的な役回りでしたが、会社の方針でCxO・VP職の正式な肩書はありませんでした。最近こういう会社は増えていますよね、というのはまたの機会に触れます。

採用チャネルとサマリ

 退職日が先に決まり、3ヶ月に及ぶ転職活動を開始しました。曲がりなりにも採用セミナーとかやっていますし、これだけキャリアパスについてマガジンを書いておきながら「転職失敗しました」は洒落にならないので気を揉みました。お世話になった採用チャネルは下記です。

ヘッドハンター 3
紹介会社 2
友人知人 3

 合計面談をしたのは23社に上ります。別に内定を蒐集するつもりはありませんでしたが(言い聞かせていた)全く気持ちに余裕はありませんでした。「株でも売って一ヶ月くらいゆっくり転職活動したら?」という妻の言葉はありがたかったです。お盆前後に甲乙つけがたいキャラ立ちの激しい3社から内定を頂き、8/25火に承諾しました。本日9/1火に出社というアルバイト並の速度で動く中間管理職ですみません。

お見送りされた数

 まず最初に次のキャリアとして想定したのはVPoE候補、EMあたりでした。これまで2社続けて開発組織を採用したり、制度づくりをしてきたりしてきたので、それなりに自信はありましたが…これでうまく行ったらnoteにしなかったと思います。

 読者の方が気になっていそうなお見送り数は下記です。

企業からのお見送り 5社
双方お見送り 9社

 ポスト数が1、もしくは無いところを攻めていったのでまぁまぁお見送りされました。選考中に人物像が固まるケースは多く「こういう人をお探しなのではないですか?(私ではありませんが)」と企業へフィードバックしつつお話を終えていたのが後者の双方お見送りです。ポスト数が複数あるポジションではあまり起きない現象に思えます。

小さい会社はVPoE/EMのポジションでもプレイヤーを求め、中規模以上の会社は既に居る

 まず求人票を開けている企業はコロナ禍でもたくさんあります。しかし採用基準は非常に上がっています。古巣のレバテックで「採用のハードルは上がっています」という原稿を書いたりチェックしながら、自分自身でもハードルにガンガン当たっていました。

 全社で50名規模の会社がVPoEやEMを募集している場合、このポジションはいつかは居て欲しいが緊急性は低く、暫く現場で実装していて欲しいというパターンがほとんどです。開発組織がほぼ形を成していない場合はきちんと募集があります。切り拓くことが期待されています。

 一方、エンジニア数が50名規模になるとVPoEやEMの存在に理解を示し始めます。ただそうした会社には既に当該ポジションの人が収まっています。勢い、VPoE候補、EM候補なのだけどもまずは半年くらい採用担当からというなんとも言い難いポジション提示がゴロゴロあります。いきなりマネージャーへの就任は難しいにせよ、飲むかどうか悩む提示です。

 ちなみに自社メディアであってもSIer出身者が多かったり、人月ありきの伝統的な開発現場はVPoE、EM職について理解できていませんが、これはまたの機会に触れます。取り敢えずソフトウェアファースト読めば良いと思います。

 こうして「実はこの道は重量級戦車で木製の橋を渡るような行為なのではないか」という気持ちになり始めます。

就職を結婚に例えるのはありやなしや

 選考中、後述する現状報告を長々と送っていました。するととあるエージェントの方に「久松さん。転職は結婚と同じような側面があります。並行して悩んでいるというようなことは言うべきではありません」というお言葉を頂きました。これは個人的には誤りだと考えています。多くの場合、企業側も並行して複数の候補者を前に悩んでいます。お見送りのあった5社中3社に「他の人に決めた」とお断りがありました。これはマッチングサービス同様、お互いにそんなものだと思わなければならないと感じています。余談ですが、その3社にどういう人が収まったのか、いくつか仮説を立てつつプレスリリースが出るのを心待ちにしています。この仮説については追々データを収集しながらnoteネタにする予定です。

お見送り理由

 面接官9年目としては、相手の面接官の気持ちの動きについては表情や間で十分把握可能なので1社を除いてNG理由を選考して当てることができました。具体的には下記のようなものがありました。後ろ2つはまた別にnoteネタにします。

・既存社員とのバランス、役割分担
・本当はプレイヤーが欲しい
・カラーのアンマッチ
・現場は人を求めているが、役員に当該ポジションに人を追加するつもりがない
・役員はテコ入れのために人を投入したいと思っているが、既にデータ量や顧客数などの観点で他社優位性があるため、現場トップが変化を望んでいない

 ちなみに「非常に勉強になりました!ありがとうございました!」で終わってからのお祈りという1社については納得があまり行っていないとともに、「面接の流れ、それで良いのか?」と今でも感じています。面接の際の求職者体験はミドルでも重要です。

芽生えた特殊能力

 役員と技術責任者の双方と話して本当に欲しい人物像を言い当てる能力が芽生えたので、言語化してnoteにしたいと思います。

ハロー効果との戦い

 社会心理学の用語です。後光効果とも呼ばれる認知バイアスの一つです。CxO候補、VPoE候補を狙いに行く場合、派手目の自社メディアや、担当していた有名タイトルとセットで訴求する方が有利です。「人材紹介会社の開発部長」はどんなに実績を語ったところで、「採用力」に対しての印象はハロー効果的に優位に持ってくれるのですがそれ以外は普通です。CxOでもないので中間管理職から抜け出せない感じは否めませんでした。

 察するにプレスリリースのことまで想像すると弱いのでは?と邪推しています。このあたりはもう少し掘り下げたいところです。この辺に気づいたのは転職活動開始から一ヶ月後でした。いっそ採用/組織改善で業務委託になろうかとも思ったりしていました。

ヘッドハンター・人材紹介会社の方々の技量に感動する

 7月中旬、提示されたポジションは「エンジニア採用」が並び、EMのポジションは何処にもないのでは?と思い始めた頃に、3名のエージェントの方から新規に提示されたキャリアがありました。

・組織改善コンサル
・エンジニア教育システムの監修

 自分一人で考えていた分には思いつかなかった内容なので非常に驚くとともに、自身のキャリアを振り返ると達成できるかも知れないと挑戦心が湧いてきました。ミドルのキャリアは棚卸しと光の当て方が重要です。

 イギリスのメンタリティを表現した言葉にAnywhereとSomewhereというものがあるそうです。端的に言うと機動性の高い人と低い人と言えそうです。こうした言葉を思い出しながら、Anywhereを意識して仕切り直したのが7月末のことでした。

Anywhereな人びとというのは、多様性に寛容で、どこにでも適応することができ、学歴も流動性も高い人たち。(略)高度な知識やスキルを武器に、自分をいちばん高く買ってくれる環境へホッピングするタイプのグローバルエリートです。
一方、Somewhereな人びとは、慣れ親しんだ環境を愛し、多様性に不寛容で、学歴や流動性が低い人たち。たとえば、地域の自営業の店主を想像してもらうと分かりやすいかもしれません。

転職活動対策

 続いて私が実行してきた転職活動対策についてお話します。レバテック技術顧問としてのキャリア観、自身の経験を重ねると下記のような傾向と言えそうです。

転職活動対策:履歴書、職務経歴書

 履歴書・職務経歴書はこちらをご聴取ください。私も収録した翌月に活動をすることになるとは思いませんでした。私の職務経歴書は10ページほどあります。冗長なのは良くないですが、2ページに収める必要はなく、その待遇をプレゼンするだけの文量(と視認性)が重要と考えています。

転職活動対策:面接ではノートを取る

 基本的なところですがノートを取りましょう。一回の面接で内定が出ることはミドルではまずないかと思います。23社も受けていると会社間の記憶は混ざるのでノートは若手のときより必須です。私の場合、プライベートではWG-S50を愛用しているのですが、会社ごとにノートを作成し、日付付きで下記のようなことをまとめていました。

・会社情報を見ての気づき(面接での質問)
・面談・面接でお会いした方の名前・ポジション・業務内容・略歴
・興味を引いたところ
・質問したい内容はマークアップ
・会社訪問をした上での気づき
・感想

 上記ノートとは別に日記もお勧めです。カレンダーアプリが一般化している現在ではいつどこへ行ったという内容はさほど重要ではありません。各回の面談や面接を経てどう思ったかを書いておくと後から自身の気持ちがどう遷移して行ったか、何を思ったかの筋道が見えるのでお勧めです。

転職活動対策:行動や意思決定と「なぜ」を考える

 技術的な質問はある程度ありますが、ミドルの中間管理職ともなると「なぜその行動をしたのか」ということだらけになります。日常的に「なぜ」を考えることこそが面接対策になります。

転職活動対策:ベーシックな面接質問も

 面接慣れしていない面接官の場合、新卒も中途もミドルもシニアも面接の質問が浮かんでいないケースは多々あります。流石に「エンジニアになった理由は?」とアラフォーには聞きませんが。

転職活動対策:企業側が面接慣れしていない場合

 仕方ないです。4:1の裁判みたいな圧迫面接をZoomで受けたときは何かと思いました。諦めましょう。

「死合・・・?」とご質問いただくのですが、予定の2倍が経過した面接で下記のようなのがありました。


転職活動対策:定期的な各エージェントへのレポート

 1−2週間に1度、各エージェントに下記のようなものをまとめて送付させていただいていました。採用する側からすると最もヤキモキするのは「その会社をその条件で進んでいるなんて知らなかった」ということでしたので、透明性を意識して長文を送付していました。あとから企業を追加提案頂く際も、重複を回避できて有益でした。加えて先に書いたような方向性への寄り添いと提案にも繋がったと考えています。

・方向性
・第一志望群
・選考中のもの、これからのもの全てのリスト、業務内容、所感
・お見送り/お見送られ理由

ミドルの転職で必要なもの:スキル、経験、感じの良さ

 2016年のアンケート記事ですが、ミドルの面接において企業が重視している人柄のダントツの1位は柔軟性であるとあります。ムスッとしたミドルは面接官としても不安になります。お互いにこやかに望みたいものですね。

スキル経験の熟成と、マッチングの狭さ

 ある程度スキルと経験が伴ってきたミドルにおいて、新卒のような「求められる人物像になりきって内定を無双する」などはまず無理なのだろうと感じるに至りました。どうしてもカラーは付きますし、経歴も特化していくのは避けられないところです。

 車で言うところの任意の型式エンジンをチューニングしていった先、そのエンジンを載せるためには同型式でないとミッションもCPUも変えないと行けないですし、何だったらシャシーから加工しないと乗っからないほどに切った貼ったをして迎え入れないと載らないのと同じようなものだと感じるに至りました。求職者と企業の双方がしっくりくる組み合わせに出会うか、当該求職者を迎えるために組織を切った貼ったする覚悟が企業側にあるかのどちらかでしか、マッチングはなし得ないのです。何を言っているのかこの例えが分からない方のために、最近見たWEB Optionから親しいものを貼っておきます。80年代のトヨタ車に切った張ったで90年代の日産車を繋げています。

まとめ

 求人はあります。コロナ禍でも採用しているというのは非常に心強いと言えるでしょう。

 話も聞いてくれる企業は多々あると思いますが、ポジションを明確に描けている企業は少ないです。取り敢えずお話しましょう。ただしハードルは上がっているので期待は禁物です。複数の専門家や知人にも当たりつつ、あらゆる可能性を考えましょう。

 何より、先に転職先を決めてから退職日を決めましょう。危なかったです。

 決してスマートとは言えませんが、非常によい結果に繋がりました。
最後になりましたが、ご支援いただいた皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました!







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