コーチングでネガティブな感情をどこまで取り扱っていいの?
ネガティブな感情が苦手・・・という方は多いのではないかと思います。私も日常生活においては、「ふりかけにして食べたい」と思うほどネガティブ感情が好きというわけではありません。
一方でコーチングという場においては、ネガティブな感情はどのように取り扱わるものなのでしょうか?コーチはどのように向き合えばいいのか、またクライアントはどこまでネガティブな感情を打ち明けてよいものか。
もちろんコーチングは成長や目標達成などを目的として行われるものです。そのためうつ病などの病気の治療については、ちゃんと別の専門家をご案内しお任せする必要があります。
その上で、現実的にそこに存在するネガティブな感情ひついて、どのように向き合うべきかについて書いてみます。
「良い結果」をもたらすのはポジティブ感情
まず前提として、様々な研究からも、クライアントに望ましい結果をもたらす源泉はポジティブな感情であることが明らかになってきています。
例えば仕事に活力と熱意をもって没頭している「ワーク・エンゲージメント」の状態においては、パフォーマンスにも好影響であることが分かっています(言わずもがなですが)。そしてそんなエンゲージメントを高めるためには、ポジティブな感情を高めることも一つの要素として重要であることも分かっています。
ここで言うポジティブな感情とは「自己効力感(自分はやればできる!という感覚)」や「レジリエンス」みたいなものが含まれます。
ちょっと面白いのは「楽観性」という要素で、「上手くいったのは自分の実力、上手くいかなかったことは外部要因だ」と割り切る力も実はエンゲージメントを高めることを通じてパフォーマンスに好影響を与えます。日本人は「自責思考」みたいな楽観性と真逆のスタンスが好きだったりするので、これはちょっと意外なところかもしれません。
他の切り口からもポジティブ感情の重要性を示す研究は色々とありますが、なんにせよコーチングにおいてはポジティブ感情の力で夢の実現や目標達成のエネルギーに換えていくことがひとつの大事なプロセスになってきます。
一方で、「じゃあネガティブな感情なんて取り扱う必要はないじゃん!」と言えるかというと、現実はそう簡単なものでもありません。
でもネガティブ感情にフタをするとストレス反応に変わる
「さてポジティブな感情が大事なのは分かっただろう?じゃあネガティブな感情は捨て去ろう!」と言って、実際にそのようにできるでしょうか?
まずできません。感情は身体から生まれてくるものであって、そういったものは頭で考えてどうこうできるものではないからです。
しかし自ら心の奥底に抑圧することはできてしまいます。過度な飲酒、ギャンブルの刺激、過度なスポーツといったもので不健全に見て見ぬふりをすることがあるかもしれません。またワーカホリックな状態(義務感や恐怖心を原動力に馬車馬のように働く状態)になっても目を背けることができます。
ところがこれらはあくまで目を背けるだけで、本質的な解決には一切なっていません。
それどころか、事態を悪化させていることが通常です。義務感で馬車馬のように働くワーカホリックな状態は特にメンタル面での病気に関連することが研究でも分かってきています。(そらそうだ、という話ですが)
また感情の抑圧はより様々な面での心身への悪影響も指摘されています。感情の抑圧はストレスホルモンの分泌を促すことも示唆されていたりと、ストレス状態を通じて脳や健康に悪影響を及ぼします。
そしてコーチングの場においても、そんなストレスホルモンがバリバリな状態でどこまでポジティブになれるのかという話ですね。
加えて、「ポジティブにならねばならない」となってしまうと、それは身体から来るネガティブ感情の否定を通じた人間性の否定になりかねないので、より注意が必要です。
どんな感情もまずは受け止めるコーチのスタンスが大事
これらを踏まえて大切なのは、コーチは出された感情はまず受容すること。一方、クライアントは今あるものから可能なものは目を逸らさずその場に出してみること。そしてそれができる信頼関係をコーチとクライアントが協働作業でつくりあげていく、ということじゃないでしょうか。
特に日本だとコーチングにせよ相談的な対人支援はクライアントにとって踏み出すハードルが高いことも多く、だからこそいったん受容する姿勢がより大事だと思います。
例えばクライアントが思い切ってコーチに相談したときに、「いや、そういうネガティブな感情を扱うのがコーチの仕事ではないので…」と軽く拒絶されてしまったら、きっと今後他の誰にも相談したくなくなってしまいますよね。
もちろん話を聞く中で明らかに他の専門家をご案内することがベストだとすれば、ちゃんとその旨を伝えることは必要です。
もちろんコーチも人間なので常に100%受け止めきれないこともあるのが現実ですが、そんな状態を素直に自覚することも含めて、ちゃんと向き合っていくことが大切だと考えています。
なので、思い切ってコーチングの場に来てみてくださいね!
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