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自治体職員に対する大きな誤解3選

私自身も自治体職員として12年以上働いてから独立したわけですが、”自治体職員”という仕事や人に対する誤解って結構あるなーと改めて思ったりもします。

今回はそんなもののうち、特に気になる3つの誤解について挙げてみます!


誤解①安定した仕事である

先日「消滅可能性自治体」に関する報道がわっと出て、人口減少と流出で全国の自治体の4割ほどがまずい状況にあるぞーと話題になったりもしました。

まぁ何をいまさらと言ったところでもあって、そもそも既に財政的には自主財源が崩壊しており、実態としては国や県からの交付金だけでなんとか生き残っている自治体というのも珍しくありません。

「公共サービス」自体は安定の代名詞というか、無くなりようのない仕事ではありますが、人や自治体そのものがなくなってしまっては元も子もありません。

こういった疫病や災害に依らない人口減少局面は前例もなく、それがもたらす変動が社会システムにどのような影響を与えるかは未知の部分も多いです。そして実は自治体の存在は、前述の財源のように国の法令や政策によって左右される要素も大きいです。

そういう意味でも、自治体職員=安定という前提は成立しなくなってきています。短期的にはともかく、中長期的には極めて不明瞭ですね。

ちなみに公務員はリストラがない・・・と言われますが、法律上はちゃんとリストラ可能です。

第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
(略)
四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合

地方公務員法第28条(分限処分)

もちろん現実的には労働法体系での労働者保護もあるのでリストラは困難です。ただし、今後の社会の状況次第でどうなるかは分からないことですね。

誤解②民間と比べて◯◯だ

自治体職員をしていると耳タコワードなのが、「民間と比べて〇〇だ」というやつですね。独立して改めて思いますが、これをあんまり真に受けるのもどうかと思います。

というのも民間もピンキリで幅が広いので、「それってあなたの会社と比べてってことですよね?」みたいな話になることも多いです。

ゴリゴリのベンチャーなんかが自治体と全く違う文化を持つのは当たり前ですが、伝統的かつコンサバティブでいることが求められる業界(例えば金融や保険など)の経験者からは意外と役所と類似点のあるエピソードを聞くこともあります。役所よりもっと役所らしいところもありますね。

さらに言うと例えば「社長」と一言で言っても、私みたいな一人社長、スモールビジネスの社長、中小企業の2代目社長、売却やIPOをゴールに命を削る社長、サラリーマン社長、雇われのプロ社長など、置かれた立場によって様々な違いがあったりもします。

このように民間もかなりの多様性があるわけですが、それでもあえて「民間と比べて~~」という広大な枕詞がついてくるのは、単に「私の話に注目して聞いて欲しい」という心の声なのではないでしょうか。要するに、実はその後に続く言葉とは特に関連性のない一文ということです。

誤解③自治体職員には何を言っても問題がない

自治体職員へのカスハラも最近はようやくピックアップされるようになってきましたね。前からずっと職員は悲鳴を上げていましたが、何か対策をしようとすると、「自治体がそんなことをするなんて大人げない」という謎の有識者コメントつきのテンプレ新聞記事が毎回出ていたものです。

これはもちろん接客のある民間サービス業でも同じように起こっている問題ではあると思いますが、やはり特に自治体職員は感情のはけ口にされがちです。

最近は気候変動の影響もあってか災害の規模も大きくなっていますが、その度にやり場のない怒りが現場で自治体職員に向けられることはよくあります。

また「淡々としている」という風に見られがちなところもありますが、色々な罵声を浴びせられた結果として、身を守るために淡々と仕事をせざるを得ない職員もたくさんいます。

そして住民からのカスハラは守備型志向(コンサバティブ)に自治体職員を育成していくことになるので、結果的にその自治体で将来的に変化の兆しをつくれる職員の芽を摘んでいくことになってしまいます。

この辺りは冒頭の消滅可能性都市の文脈なんかと融合してかなり強力な負のループを生み出しているので、自治体職員もまず「人としてされて嫌なことは嫌」と表現していく余白が必要だと感じています。

いずれにしても、色々な誤解が解けてもっと自治体職員のリソースが有効に発揮されるようになるといいですね!


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