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創作大賞2024応募作品

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静森あこが創作大賞2024に応募した創作
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記事一覧

愛玩の君 ─最終話─

マントの男は古びたノートを開いた。 ○月‪✕‬日 親の転勤で転校したけれど、僕は学校にほ…

静森あこ
1か月前
26

愛玩の君 ─6─

マントの男は椅子の上の骨を執事に退かせると、どろどろの肉塊の中に手を入れ、探った。真…

静森あこ
1か月前
25

愛玩の君 ─5─

闇の中を抜けると、前に夢で見た大きな屋敷の前にいた。庭の萎びた薔薇から芳醇な香りが漂…

静森あこ
1か月前
26

愛玩の君 ─4─

その日も教室でいつものように全員に無視されていた倉田は、最後の授業のチャイムが鳴ると…

静森あこ
1か月前
28

愛玩の君 ─3─

気分が悪くて気も沈んでいたが、仕事を休むわけにもいかず、寝不足で重い身体を引きずるよ…

静森あこ
1か月前
26

愛玩の君 ─2─

同窓会から1週間が過ぎた頃だった。仲の良いクラスメイトだった望美からLINEが送られてき…

静森あこ
1か月前
32

愛玩の君 ─1─

どうでもいい男が私の上で「気持ちいい」と息を荒げながら腰を振る。ああ、こんなはずじゃなかったのに、と私の自尊心はしっかり削られて不快ですらあるのに、意に反して喘いでしまう。それでどうでもいい男がますます興奮する様を、下から冷めた目で見ていた。されるがままのおもちゃみたいな気分だった。そのくせに体はきちんと反応するのだから、人間の本能ってすごいな、なんて、まるで他人事のように考えていた。  自分のケチぶりと酔いに任せた無駄な勢いを嘆いた。それとも私は寂しかったんだろうか。

音楽

目の前がスローモーションになっても、あの音楽だけは頭の中でBPMを変えずに流れ続ける。 …

静森あこ
1か月前
11

私を見ていて

壁にかかる古い絵の中の林檎に縦の亀裂が入ると、それはゴツゴツした人差し指と中指でめきめ…

静森あこ
1か月前
9

ある男の夏の終わり

吸いかけの煙草が口元から落ちた。残り火が死んだセミの羽を燃やし、ミーンとひと鳴きさせる…

静森あこ
1か月前
11

視姦

声色の変化と共に赤みを帯びた先端から白濁した体液が溢れ出す様を見て、触れていないのに温…

静森あこ
1か月前
9

壊れた女と壊れた男

男が規則的に落ちる血痕を追いかけると血を含みすぎたタンポンを片手にぶら下げる女がビルと…

静森あこ
1か月前
8

太陽は嗤う

夏の眼球を舐めたくなって生唾を飲んだ。黒水晶のように煌めく瞳、白磁のような白目。そこに…

静森あこ
1か月前
27

名前を呼ばれた気がして

自分の名前を呼ばれた気がして顔を上げたのは、今夜知り合ったばかりの名前も知らない男にラブホで後ろから突き上げられている時だった。その名前も知らない男は、私が昂っているのだと勘違いして、うなじにベタついた唇を寄せながら甘だるい声をかけてきた。それが薄ら寒くて、名前も知らない男に対してどうでもいい、から、少しの嫌悪を抱くまでになった。 私の名前を呼んだのは間違いなくアイツだった。 〈記憶〉をスクロールして削除ボタンを押しても、ゴミ箱の隅にこびりついたものが、容赦なく