見出し画像

うだるような暑さのなか、下鴨納涼古本市に繰り出した

ずっと憧れだった、下鴨納涼古本市。

下鴨神社の納涼古本市にずっと行きたいと思っていた。
もちろん森見登美彦さんの作品がきっかけ。
糺の森、古本市、ラムネ。
ときめくには、このキーワードだけで十分だ。

そんな憧れの場所についに訪れてみた。
神社の境内にうっすら立ち込める土埃の中、大量に並ぶ本、本、本、本……。
次々に手に取って、眺める人々。
思った以上の賑わいだった。

全体的に、風情がありすぎますよね。


まずは、下鴨神社に参拝

古本が目当てで来たわけだけれど、神社にお邪魔したからには神様にご挨拶をと思い、まずは参拝することにした。

立派な造り。こういうそりかえった屋根が青空に突き出ているのを撮るのが好き。


お参りの記念に御朱印を。

池田理代子先生の紫式部イラストの入った御朱印をいただいた。
光る君へに大ハマりしているから、本当に嬉しい。

本殿のそばにある相生社は、産霊神を祀っていることから、えんむすびの神として信仰されている。
普段おみくじは引かないのだけれど、せっかく来たしということで、えんむすびおみくじを引いてみた。
源氏物語をモチーフにした凝ったおみくじ。
開いてみると…波乱の兆とのこと。
心を乱す出会いがあるそうな。
今のところその気配はないけれど。

着物のようなデザインが可愛い。
しおりとして大切に使おうかな。


運命の出会いを求めて、本の大海原に漕ぎ出してみた

複数の古本屋さんで参道は埋め尽くされ、
テント内にぎっしり詰まった本棚が狭い間隔で並んでいる。
一心不乱に本を読んでいる、大きなリュックを背負った男性と注意深くすれ違う。 

魅力的な本がありすぎて戸惑う。


どれでも300円と書かれた本たちは、机の上に背表紙をうえにしてびっちりと並んでいる。
何の気なしにふっと一冊手に取ると、空いたスペースは本たちの圧ですぐに消えてしまい、戻すのにひと苦労だった。

今回のお目当ては、最近ハマっている日本画や、源氏物語に関する本。
古本ならではの出会いがあると良い。
そう思いながら、本棚の間をゆらりゆらりと練り歩いた。

本当にたくさんの本がある。
岩波文庫の、印刷の字体も文体も、何もかもが古い本。
浮世絵を特集した大きなグラフィックの図録。
研究者の講演を文字に起こしただけの書籍。
見たことも聞いたこともないような出版社の本。
戦争や宗教に関する、見た目も中身もかなり重たそうな本。

古本でしか出会えないような本たちは、魅力的だけど、読み通す自信はなかった。
手に取っては、知らない世界に恐れ慄き、また閉じて、ということを繰り返した。

暑さを癒すラムネを求めて、いったん休憩。

それにしても暑すぎる。
昨日雑貨屋さんで買った扇子が大活躍した。
心底、買ってよかった。

神社の境内の道路は暑さで渇き、うっすら舞う土埃で周囲は煙っていて、どことなく幻想的な雰囲気を感じた。
たまにテレビで観る異国のバザールも、たしかこんなふうに土埃で煙っていた気がする。
人とモノが集まり交わり出会う場所の普遍的なイメージに包み込まれる。
店番をしている人が代わるがわる打ち水をしているが、その水もすぐに地面に吸い込まれてしまう。

……そうだ、ラムネ。
森見さんの小説でも、古本市でラムネを飲む場面があった。

休憩所の売店までいったん戻ってラムネを買い求める。
レジ打ちをしている高校生ぐらいの女の子にお釣り間違えられたけど、違っているよと指摘できなくて泣き寝入り。
100円くらいでつべこべ言いたくないなという謎のプライドが邪魔をした。

ラムネはもはや瓶ではなくペットボトル製で、記憶の中の郷愁と異なるその軽さは何だか落ち着かなかった。

ラムネのビー玉を落とす時の、不可逆性に心を惹かれる。
一回落としてしまったらもう戻せない。
大好きな小説、ホリー・ガーデンで、果歩が中野に「ラムネの中のビー玉を取り出してあげたいくらい」と言う場面がすごく好きだ。
ラムネを飲むときに思い出さずにはいられない。

口元にラムネを持っていくと、どぶん、とビー玉の動きに驚いて、胸にぼたぼたこぼしてしまった。
下手くそ。

「お父さん、ラムネ飲んじゃダメだよ」
「ビー玉、飲んじゃダメだよ、じゃない?」
「あー間違えた! アハハ」
近くの親子の会話にほのぼのする。
糺の森の木漏れ日がゆらめいて、人々の休日の午後を彩る。

ラムネという存在自体が涼しい。


再び、大海原へ…掘り出しもの発見!!!

ラムネを飲んで、少し回復したため、最後にもう一周することにした。

源氏物語の書籍になかなか出会えないな…と思いながら、あるテントの奥の本棚に入り込んだ。

「…………あ!」
一冊の本に目が吸い寄せられる。
手に取ったのは、俵万智さんの「愛する源氏物語」。
しかも、表紙をめくると本人の直筆サイン入り。
ついに見つけたのであった。

「これって掘り出し物じゃない?」
パラパラめくると、俵万智さんが源氏物語に出てくる和歌を、自分の言葉で噛み砕いて丁寧に見せてくれるのがよくわかる文章だった。
惹き込まれる予感とともに、読み通す自信がみるみる湧いてきた。

こうして掘り出しものに満足した私は、古本市を後にしたのであった。

御朱印と合わせて完璧👏🏻




暑すぎて、カフェで涼んで帰る

葵橋の西詰にあるカフェ、「コーヒーハウスマキ」。Pop eyeの京都特集号で読んでからというもの、ずっと気になる存在だった。

ちょうど下鴨神社から、歩いて5分ほど。

落ち着いた純喫茶の店内は、とても居心地が良い。

自家製辛いソースの挟まったチリコンカンホットドックのセットを注文。
もちろん、ホットドッグも美味しかったけれど、添えてあるポテトサラダの美味しさに震えた。
ピクルスのような酸っぱいカリカリが良いアクセントになっている。

彩りが抜群じゃない?


暑くてとっても疲れたけど、充実していた

うだるような暑さのなか、たくさん歩いたからクッタクタだ。
でも、素敵な本や場所と出会った。
私の夏の思い出のいちページだ。

16日まで古本市は開かれているらしい。
本好きなひとは、熱中症に気をつけて、ぜひ足を運んでみてほしい。

《おわり》

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?