第69回短歌研究新人賞佳作 五首抄
めくるめく落下が花を重くする 薄氷のいま壊れるところ
でも母はうつくしかった、蠟梅の花の奥からえくぼを生んで
くずし字のごとくに四肢を横たえてだんだんわかる雲の奥行き
がらんどう、というには細い 傘の柄で突かれたように疼く咽喉
遠くなる母の眼差し やどかりを外れてしまう貝の行方に
▼振り返りと余談です。
短歌研究新人賞、初応募でした。佳作をいただきました。
一首目は連作全体の一首目だったので、誌面で見ることができたのがとても嬉しかったです。そして、一字空けや読点をつかった歌が多く採られていたことに素直に驚きました。そこが本質というよりは、連作のなかで伝えたかったテーマとの近さや、歌そのもののクオリティ、いろいろと振り返る大事な五首選だと認識しています。ありがとうございました。
思えば昨年の今ごろは、恥ずかしながらはじめて「短歌研究」を購入し、こんな賞があるんだな、と頷いていた時期です。応募基準を満たしていれば予選通過扱いになることや、編集部による予選ではなく審査員それぞれに作品が分配されることも、応募してから知るという始末……。
短歌の新人賞というと角川短歌賞くらいしか知らなかったので、短歌研究をはじめ、歌壇、笹井宏之賞の存在を認識したのも同時期です。
賞やコンクールに応募しはじめたのもそのころからでした。一年経つとまた自分の意識が変わっていることに気付かされます。
歌壇賞、笹井宏之賞の結果はふるわず、いま応募作を見返してみると、それもそのはず……と納得できます。応募当時は、やるだけやった!と思っていたのに、不思議。新たな一歩と思うことにします。
あらためて、受賞作、次席、候補作、最終選考通過の皆様、おめでとうございます。佳作の欄にも知っているお名前をたくさん拝見し、これからも頑張ろうという気持ちになりました。
今回の誌面掲載をきっかけに、自分の連作をもっときちんと振り返る必要があると痛感しました。好きな作品の軸は揺らさず、今後もつくりつづけていきたいと思います。
直近の連作です。よろしければ。感想などいただけると喜びます。