マガジンのカバー画像

私の出会った先達の人生訓

23
新聞社で定年を迎えたこともあって、夢を追い、共に生きる社会を願い、先達との邂逅に恵まれた。人生をより豊かにしてくれた先達との出会いを伝えよう。
運営しているクリエイター

#シルクロード

私の出会った先達の人生訓 はじめます

私の出会った先達の人生訓 はじめます

 新型コロナ禍による世界の死者は、2021年6月現在380万人を超え、なお増え続けている。終戦の前の年に生まれた筆者は「戦争」を知らないが、まるで目に見えない敵との「戦争」のように思う。「人生80年」、それ以上の超高齢化社会の日本ゆえ、重症化や死亡率が高く予期せぬ難事となっている。昭和、平成、令和と生きてきたが、これほど命の儚さと、日常の大切さを思い知ったことはない。これまでの生とこれからの生を思

もっとみる
歴史地理学者の千田稔さん 学術研究の人生を邁進、幅広い見識で諸活動

歴史地理学者の千田稔さん 学術研究の人生を邁進、幅広い見識で諸活動

「人生100年時代」といわれるが、その第四コーナーを回った現在、時にふれ来し方を振り返る。順風満帆とは言えない人生の過程で、その後の人生に大きな影響をもたらせた、キーパーソンともいうべき出会いがあった。歴史地理学者で、奈良県立図書情報館館長の千田稔さんは、まさにその一人だ。

新聞社の記念企画で、歴史上実在した玄奘三蔵をテーマに一大プロジェクトに挑んだ私にとって、羅針盤のような役割を担っていただい

もっとみる
文化財保存に貢献、日本画家の平山郁夫さん 〜平和を求め、仏の道を描いた平山芸術の足跡を追悼

文化財保存に貢献、日本画家の平山郁夫さん 〜平和を求め、仏の道を描いた平山芸術の足跡を追悼

 日本画壇の重鎮であった平山郁夫画伯が2009年12月2日に逝去され、2021年13回忌を迎えた。生前は画家として《仏教伝来》や一連のシルクロードを描いた数々の名作を遺しただけでなく、ユネスコ親善大使、文化財保護・芸術研究助成財団理事長、東京藝術大学学長など、さまざまな立場での業績をはじめ、国際的な文化財保存や平和活動でも貢献された。1998年に文化勲章、2001年にマグサイサイ賞など国内外から数

もっとみる
アフガニスタン往還半世紀の前田耕作さん
バーミヤン遺跡調査など文化財保存活動を続ける

アフガニスタン往還半世紀の前田耕作さん バーミヤン遺跡調査など文化財保存活動を続ける



書斎でくつろぐ前田耕作先生(2008年、前田耕作さん提供)

 私が少年であったころ、日本は戦争のさなかにあった。戦争というものに終りのあることを初めて知ったのは、1945年8月15日であった。それからも世界にはいくたびも戦争が起こった。燃えては消え、消えては燃え、いまなお戦火はおさまっていないのが、わが愛するアフガニスタンである。

 この文章は、和光大学名誉教授の前田耕作さんが『アフガニス

もっとみる
考古学者で文化人類学者の加藤九祚さん  シベリア抑留を体験、老いて遺跡発掘の生涯

考古学者で文化人類学者の加藤九祚さん シベリア抑留を体験、老いて遺跡発掘の生涯



2002年に受章した「ドストリク」(友好)勲章を胸に正装の加藤九祚さん
(2008年、奥野浩司さん撮影)

■シルクロードの名著、90歳過ぎても現場へ
 90歳を過ぎても、シルクロードの要衝の地、ウズベキスタンで遺跡の発掘調査を続けていた考古学者で文化人類学者の加藤九祚(きゅうぞう)さんが、発掘のため訪れていた南部・テルメズの病院で2016年9月12日に亡くなって5年になる。94歳だった。大半

もっとみる
白鳳伽藍再興に尽力、薬師寺長老の安田暎胤さん 玄奘三蔵を顕彰、「心の復興」を唱える宗教者

白鳳伽藍再興に尽力、薬師寺長老の安田暎胤さん 玄奘三蔵を顕彰、「心の復興」を唱える宗教者

■写経で白鳳の七堂伽藍再興に尽力 法相宗大本山薬師寺で唯一、創建当時から1300年を超す時を経て現存している国宝の東塔は昨春、全面的な解体大修理事業を終えた。平成21年7月に着手し、令和2年4月に落慶法要を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大により延期されたまま、今年3月から一般公開されている。これより先に、薬師寺は金堂に続き、西塔、講堂、食堂(じきどう)など次々と再興し、創建時の白鳳伽藍が

もっとみる