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【アジア横断バックパッカー】#最終回 11ヵ国目:トルコ-イスタンブール→日本 旅が終わる


 イスタンブールには1週間滞在した。1週間滞在しても退屈しないほどイスタンブールには観光スポットがあり、僕は毎日いろんなところをまわった。  街並みを一望できるガラダ塔に登り、アヤソフィアやブルーモスクの内部を見学し、テオドシウスの城壁やグランドバザールを見に行った。トラムに乗れば大抵の観光スポットは無理なく回ることができた。ボスフォラス海峡クルーズにも行った。船によって値段がかなり違うが、安くて300円程度で2時間ほどのクルーズを楽しめた。

 朝食は宿で食べ、昼はヨーロッパ側とアジア側にかかるガラダ橋のたもとに出ている屋台でサバサンドを食べ、夜は「ロカンタ」と呼ばれる大衆食堂で食べた。ずらりと並んでいる料理の中から食べたいものを指さして皿に盛ってもらう。値段も安いし毎日違う料理を食べられる。地元の人で行列していることもあった。味は素朴な家庭料理といった感じで値段も安い。

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 トルコ人はいつでもどこでもチャイを飲んだ。食堂のメニューにチャイがなくても、頼めば店員が近所のチャイ屋に発注し、チャイ屋の少年が岡持ちのようなものにチャイを乗せて現れた。僕もロカンタで食事した後にチャイ屋へ行きチャイを飲んだ。テレビでたまたまW杯の日本戦をやっていて、隣に座ったトルコ人が僕が日本人だと気づくと何やら解説してくれることもあった。W杯ひとつとっても日本と海外では関心の度合いが全く違った。日本では自国の試合以外人々はあまり関心がないが、海外ではどの国の試合だろうと人々はテレビにくぎ付けになっていた。ゴールが決まったりすると街中からワッと上がる歓声がゲストハウスの窓からも聞こえた。

 最終日の前日、僕はゲストハウスをチェックアウトし、近くのホテルに移った。最後の夜くらいは少しいいホテルに泊まろうと思ったのだ。夕食もロカンタではなく、食事ができるバーで、この旅最後のビールを飲んだ。僕はそういう形式ばった事が好きなのだ。

 食事を終えると僕は歩いてボスフォラス海峡へ行った。8時近くまで明るいイスタンブールだが、もう日は完全に落ち、海面にうつる街の明かりが綺麗だった。海峡周辺にはまだたくさんの観光客がいた。僕は場所を見つけて岸に座った。

 旅も終わりだなあと思った。無事に目的地のイスタンブールに来ることができた。けがもしていないし、お金もとられていない。
 後は無事に日本に帰るだけである。

 僕が滞在した宿だけでなく、ほとんどの宿にはイスタンブール・アタテュルク空港への送迎サービスがあった。僕は飛行機の時間に合わせて送迎を頼んだ。
 最終日の朝、朝食を済ませ、最後にもう一度だけブルーモスクを見に行った。
 朝のブルーモスクは人も少なく、落ち着いて見られる。朝日に照らされたブルーモスクは相変わらずどっしりとして、見るものをぼうっとさせる力があった。
 これで見納めだと思うとなかなか目が離せない。どんなに写真を撮っても未練は残るものなのだ。
 だがもう行かないと行けない。僕は小さく息を吐いてブルーモスクを後にした。

 アタテュルク空港の警備は厳重だった。空港の入り口でまず持ち物検査がある。2016年のテロを受けての事なのだろう。
 だが一旦そこを抜けてしまえば後はすんなりとしたものだった。シンガポール空港経由羽田行。シンガポール航空である。有名な大手のキャリアである。ラホールでの一件からチェックイン時少しドキドキしたが、何事もなくチケットは発券された。離陸までの間ほぼすべての人がそうであるように、免税店をぶらついて時間をつぶした。

 シンガポール・チャンギ国際空港に到着したのはまだ暗い早朝。チャンギ国際空港はとてつもなく広く、無料の映画上映があったり、無料のマッサージ機があったりと時間つぶしには事欠かなかった。どこまでも伸びる動く歩道に乗って端まで行ったり来たりした。なんだかおまけの旅のようで僕はちょっと楽しかった。

 やがて時間になり、僕は搭乗ゲートへ向かった。羽田行きとあって周囲にいるのは日本人がほとんどだった。見る限りシンガポールの観光帰りのようだった。みんなまさか僕がアジアを横断して今から帰国するところだなんて思いもよらないだろう。かといって別に自慢するわけでもない。僕だってただの観光旅行帰りである。
 搭乗して離陸を待った。キャビンアテンダントがトングでおしぼりを配って回っている。
 やがて飛行機がゆっくりと滑走路を走り始めた。
 
 羽田空港に着くのは夕方。7月の上旬、季節は初夏。出国したときはまだ肌寒かった。
 日本は暑いだろうか、と僕は考えた。(了)

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(これにて終わりです。読んでくださった方、スキ、コメントしていただいた方、フォローしていただいた方、本当にありがとうございました。)

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