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ファンダムマーケティング‐「トライブターゲティング」‐

ファンダムマーケティングは音楽やエンターテインメントのチカラを活用して企業のファンを作るマーケティング手法です。

これまで以下のテーマで連載してきました。

第一回:「ファンダムマーケティングとは?!」
第二回:「企業の差別化ってどこにある?」-
第三回:「選ばれるブランドが持つ”マインドシェア”の価値とは?」 -
第四回:「記憶のメカニズムについて」

連載といえど、それぞれの記事単独で読めるものとなっておりますので(今回の記事も同様)ぜひ、ご覧いただければ嬉しく思います。

さて、今日はファンダムマーケティングには欠かせない「トライブ」という概念について考えていきます。個人的には日本でいちばん「トライブ」について考えている自負があります笑

「トライブ」「トライブ」「トライブ」
なんか聞いたことはあるけど、具体的にどういうことなんだろう?と思われている方もいらっしゃるかもしれません。

これからのマーケティングにおいて「トライブ」は非常に重要な概念です。では、いったい何に寄与する領域なのか。それは「ターゲット深度」と「自分ゴト化」「話題の影響範囲」の3点です。

オールターゲットはオールターゲットに刺さらないジレンマ

よくターゲットのイメージを聞くと、オールターゲットに当てたいという相談を受けます。確かにホテルやアミューズメント施設などは老若男女に来てほしい、買ってほしいというのがあるのだと思います。

しかし、残念ながらオールターゲットに刺すようなマーケティングは結局のところ、誰の心にもひっかからないという事態が生まれます。なぜか?

それは、「自分ゴト化」される要素がないからです。広くあまねく伝えるということは、それだけメッセージも画一化されていきます。すると、誰にもわかるように伝えることで、誰にもわからないというジレンマが起きます。ゆえに、オールターゲットを規定することは、自らターゲットのプライオリティが立てれていない。選択と集中ができていないことに気づいてしまうのです。

そうなると、次のワードが登場します。F1やM1といったターゲットの規定ワードです。

F1やM1といったターゲティングは終わった

テレビを中心に今でもピッチのオリエンなどでも出てくるこのワード。

「今回のメインターゲットはF1です。セカンダリーはF2です」

ふと思いませんか?これでターゲット規定できるのか?と。
例えば、F1とは20~34歳の女性を指します。20~34歳?あまりにも幅がありすぎます。ただでさえ、年齢幅だけでも大きいのに(干支一周以上!)ターゲットを括れるわけがありません。同時にテレビを見る人、見ない人。インドアな人。アウトドアな人。といった具合に多様な趣味嗜好があるはずです。

それをF1で括ることなど、不可能です。私たちはもっと多様な価値観や趣味嗜好で生きています。この時代、F1やM1といったターゲット規定はもはや陳腐化しています。

F1やM1が機能した時代というのは、情報のフローが一方通行で成立した時代でした。テレビを中心に発信される情報は多くの人に同じ情報をもたらし、情報フローも今のように多様ではないので、情報発信者と情報受信者の情報秩序が決まっていたからです。

リアルな知り合いを「ソーシャルグラフ」と言います。一方、趣味嗜好でつながった仲間を「インタレストグラフ」と言います。これまではこの「ソーシャルグラフ」と「インタレストグラフ」が同一化されていた時代がありました。

例えば、昔の音楽番組「HEY!HEY!HEY!」を見た翌日には学校や職場で話題になります。自分の好きなアーティストが出てた出ていないに関わらず会話が成立していました。

いまはどうでしょう?ソーシャルメディアの浸透によって情報フローはひとつではなくなり、情報を得る場所も複数にまたがり、それぞれが思い思いのライフスタイルをソーシャルメディアに投げる。コミュニケーションをする。つまり、これまで同一化されていた「ソーシャルグラフ」と「インタレストグラフ」が分断される時代になったのです。

図6

ということは、「ソーシャルグラフ」と「インタレストグラフ」が同一化されていた時代は、共通言語が多くそれは購買に至っても同様で「F1やM1が機能した時代というのは、「私が欲しいものはみんなほしいもの」な時代だったのです。だから、大きな括りのターゲティングでも機能しました。情報が一歩通行で双方向ではなかった時代だから可能となったのです。しかし、いまは違います。

多様なライフスタイル、多様な価値観、多様な趣味嗜好の中で私たちはパーソナライズされた情報を取得しています

例えば、smartnews。各人にパーソナライズされた情報で構成されています。よって、それぞれ見ている情報は異なります。例えば、Twitter。フォローしている人たちは人それぞれです。よって、話題になっているコンテンツでもそれは「ある仲間内での話題化」であり、一歩外を出れば誰も知らないコンテンツなんてことはざらにあります。

そこで、「トライブ」です。

トライブとは、〇〇が好きな人たち

「トライブ」は、「年代や性別を超え、共通の趣味や興味、価値観で形成される部族」という意味です。

図1

今までのような年齢区切りなどではなく、趣味嗜好でつながっている部族。それが「トライブ」です。わかりやすくいうと、〇〇が好きな人たちです。

ゲームトライブ、音楽トライブ、スニーカートライブ、キャンプトライブなどなど、趣味嗜好の世界には必ず「トライブ」が存在します。ソーシャルメディアの影響により、これまで見えてこなかったそれぞれの趣味嗜好=「トライブ」が見える化される時代になったのです。

これからは趣味嗜好の「トライブ」でターゲティングを行うことが重要です。もちろん、同時に年齢や性別といったデモグラフィックなターゲティングと掛け合わせることが必要です。

つまり、これからのターゲティングは以下のようになります。
これまで→20~30歳の女性(終わり! )
これから→メイクや美容が好きでキャンプも好きなトライブでメインは20代

トライブ(趣味嗜好)×デモグラフィックの掛け算でターゲットを規定します。そうすることで、トライブを軸に自分たちがアプローチしたいターゲットに対して「自分ゴト化」しやすいメッセージを送ることができます

図2

情報大爆発の時代、ターゲットに深く刺すためには、デモグラフィックだけではなく、趣味嗜好のトライブも加えてアプローチすることが重要です。

人気番組の裏にトライブあり

テレビ番組は不特定多数の人に見るように作られています。しかし、人気がある番組と人気がない番組の違いに実は「トライブ」があります。

例えば、「アメトーーク!」これはまさにトライブの番組です。銭湯大好き芸人、ジョジョ大好き芸人、一人飲み好き芸人など、扱うテーマはすべて趣味嗜好の「トライブ」です。

そこに、その「トライブ」に熱狂的な芸人がトーク力を活かしてエンタメ化する番組、それが「アメトーーク!」です。

図3

もうひとつ「マツコの知らない世界」も「トライブ」をテーマにしたテレビ番組です。マツコの知らない素麺の世界、マツコの知らないグミの世界、マツコの知らない昭和家電の世界など、これもその該当トライブに熱狂的なトライブマスターとマツコ・デラックスの掛け合いでエンタメ化しています。

図4

どちらも不特定多数向けに作られている番組なのに扱っているテーマはすべて「トライブ」なのです

このように、オールターゲットといえるテレビ番組でも、しっかりとファンがついている番組の裏には「トライブ」が存在しているのです。

話題の影響範囲を設計する

最後に、話題の影響範囲のはなしをします。そもそも話題の影響範囲は「自分ゴト化」「仲間ゴト化」「世の中ゴト化」の3段階で成り立っています。特にこの「仲間ゴト化」=トライブと思っていただいて問題ありません。

話題はトライブ(=仲間ゴト)の中で広がります。逆にトライブの中でしか広がりません。だからこそ、多様なトライブを設定し、きめ細かく対応することが勝敗を分けるのです。

さきほど、話題になっているコンテンツでもそれは「ある仲間内での話題化」であり、一歩外を出れば誰も知らないコンテンツなんてことはざらにあると書きました。それはつまり「あるトライブ内での仲間ゴト化」といえます。

どこの「トライブ」に火をつけるのか=ターゲティングが重要になります。企業は自社が所持するトライブを見極め、もしくは狙いたいターゲットのトライブを見定め、マーケティングアプローチを試みます

誰でもが知っている「世の中ゴト化」に至るためには、まず「仲間ゴト化」されないと、ステップは拡大していきません。

「トライブ」はターゲットに「自分ゴト化」させること、そしてその「トライブ」内で「仲間ゴト化」させること。そして、そこから「世の中ゴト化」に持って行く。これらすべての根幹に「トライブ」はあります。

では、この「トライブ」=〇〇な好きな人たち、趣味嗜好の部族というのはわかったけれど、まだまだ「トライブ」は奥が深いのです。次回「トライブ」をテーマに深堀っていきます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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