ファンダムマーケティング-「企業の差別化ってどこにある?」-
『ファンダムマーケティング』なるものの連載をひっそりと初めてみました。前回は序章的な感じで『ファンダムマーケティング』とはなにかを書きてきました。
『ファンダムマーケティング』とは、音楽やエンターテインメントのチカラを活用して企業のファンをつくるものです。
その『ファンダム』とは、wikipediaによると以下のように定義されています。
ファンダム(fandom)は、趣味・アニメ・漫画・小説・スポーツなどの分野の熱心なファンたち、また熱心なファンによる世界、彼らによって形成された文化である。
さて、なぜこの『ファンダム』を企業のマーケティングに生かすことが大事だと思っているのかというと、『企業のファンって本当にそんなたくさんいるの?』という素朴な疑問から生まれてきたものでした。
もちろん、AppleやNIKEのように圧倒的なファンを持つ企業はあります。また、企業内のある商材に対して強いファンがいる場合もあります。なので、いることはいるのです。
ですが、その圧倒的ファンを持てるくらいの企業とそうでない企業とどちらが多いかと言われたら、私はそうでない企業のほうが多いのではないかと思うのです。
一握りの企業だけが到達しうる圧倒的なファンをみんながこぞって目指しています。その理由は明らかです。どこでも言われている話ですが、機能的価値だけでは、いまはもう戦えないからです。
機能価値とは、商品のスペックだったり、価格だったりします。素晴らしい商品、素敵なデザイン、お値打ちな価格。もちろんこれらも購買意志決定には大きな影響を及ぼしますが、現代そこでどれほど他社と差別化が図れるでしょうか。
特にBtoC商材はコモディティ化が激しく、もはやA社もB社もC社もさほども違いは見受けられません。
例えば、音楽サブスクリプションサービス。Apple Music、Spotify、LINE MUSIC、AWAなどなど数サービスがありますが、ぶっちゃけどこもだいたい同じ楽曲数、価格帯でほとんど機能的価値部分では差別化することはできません。
各サービスを詳しく見ていけば、当然違いはあります。しかし、ユーザーから見れば機能的価値だけでは違いはあまりないといえます。
または、メガネなども近いかもしれません。だいたい同じ価格帯で、同じサービス、同じエリアに出店、デザインもそれぞれ違いはあるが、大きな差別化には至っていない。
ですが、そこにはファンがいる企業とファンがいない企業が明確にあります。その違いはどこにあるのでしょうか。
先に述べたとおり、機能的価値は必要です。加えて、重要な購買意志決定として、情緒的価値が必要となります。
つまり、好きとか嫌いとかといった「感情」です。もしくは、感情を動かす要素といってもいいかもしれません。
Spotifyを使っているとなんかカッコイイとか、このメガネメーカーは好きといった、感情をデザインする要素です。
いま、企業が独自性を生み出し、差別化を図り、ファンを生み出すためには、この「感情をデザインする」ことが必要なのではと思っています。
〇〇といえば、〇〇。このブランド”で”いいのではなく、このブランド”が”いい。その感情をデザインするためには、よく言われるストーリーやバックボーンといったものが大切になります。
例えば、ストリートブランドの『Supreme』は絶大な人気を誇ります。パーカーが3万円でも売り切れます。『Girls Don't Cry』というブランドのTシャツは発売されれば長蛇の列ができて、リセールショップでは数万円で売られています。(もちろん、ブームになって流行りもの好きが乗っかっているいうこともあります)
いうならば、ただのパーカーであり、Tシャツです。にも拘わらず多くの人が大金を払ってまで買いたいと思うのは、機能的価値を超えた情緒的価値が備わっているからです。だから、ブランドなのです。
多くの企業がファンをつくりたいと願いながら、一部の強力なブランドの後ろ姿を追い求めて、最愛ブランドになろうと動いています。ここで、ポイントなのは、みんな「自社のチカラだけで行おうとする」ことです。
そもそも企業にファンがつくということは簡単なことではありません。というか、エンターテイメント級の愛と熱量を持って、愛される企業などほとんどありません。(おそらくあったとしても片手に収まるくらいかと思います)
『ファンダムマーケティング』とは、音楽やエンターテインメントのチカラを活用して企業のファンをつくるものです。
そこでまず理解すべきなのは、
1.時代は機能的価値だけでは差別化は図れないということ
2.情緒的価値の創出が他社との差別性を生み出すということ
3.熱烈なファンがいる企業は一握りだということ
4.自社単独でファンを生み出せる企業はほぼ皆無に等しいこと
5.しかし、ファンを生み出せないと競争優位性を保っていけないこと
これらをベースに、ではどうすれば桃源郷のような場所に君臨しているファンを持つ企業のようになれるのか。その手段のひとつに音楽やエンターテインメントのチカラを活用して企業のファンをつくる『ファンダムマーケティング』があるのでは?と思っています。
しかし、その前にもう少し、企業が自社を選んでもらうために、必要な概況や要素を整理する必要があります。
次回は、企業が獲得すべき、重要な要素、『想起』について考えていきたいと思います。