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児童がPCを毎日持ち帰ったらできること~先生の仕事も激減!?~

 3月末に入り、今年度も終わろうとしています。私はこの1年間、子ども達にPCを毎日持ち帰らせました。最初は、「パソコン重いよ~!」とブーブー言っていた子ども達も、1年経つとパソコンなしは考えられないまでに変容しました。それほど便利だったことを私を含め子ども達が実感したのです。今回の記事では、PCの持ち帰りで何ができたか。どんなことが便利になったのか。持ち帰りのために準備したことは何か。について書いていこうと思います。来年度、PCを持ち帰らせようか迷っている人は、是非最後までご覧ください。必ず持ち帰らせたくなりますよ♪


紙の連絡帳を廃止


 どこの小学校でも連絡帳を毎日書いていますよね。私の学校では、どこのクラスでも朝登校した子から、先生が黒板に書いた明日の予定を連絡帳に書き写しています。私が子どもの時から当たり前のようにあったことですが、困ることが多々あります。
 ・朝ぎりぎりで登校する子の書く時間がない。
 ・朝会や集会が朝ある曜日は、書く時間がないため、1時間目を削らなく  
  てはならない。
 ・書くのがゆっくりな子は異常に時間がかかる。
 ・書かせるからには、全員書いたかチェックしなければならない。
   (回収→提出者チェック→先生のサイン→返却)
 ・間違えて書き写している子が度々いる。
まだまだ連絡帳困りポイントを書けます。なんだろう。そもそも明日の予定を毎日子どもが紙に書き写し、全員分チェックするこの流れが余りに生産性が低いように感じてしまうのです。中には、連絡帳を書かせることで字の練習になるの!とベテラン先生にご教授いただいたこともありましたが、字は何も連絡帳がすべてではありません。国語の授業を軸に、どの教科でも横断的に指導すればいいのです。連絡帳に拘る必要はありません。
 そこで、Microsoft Teamsのアプリを通して、私が連絡帳を子ども達のPCに送信することにしました。


連絡帳の内容(例)

 教員が朝子ども達のPCにチャット機能で配信します。あとは教室のテレビに映しておくだけです。子ども達はテレビに映った予定を観て、持ち帰るものを確認したり、明日の授業の見通しをもったりします。先生が配信するので、児童の書き忘れや連絡帳のチェック、回収、配布の全てがなくなりました。そして子ども達の朝の時間にゆとりができました。紙の連絡帳の場合は、毎日保護者が内容を確認し、サインをしてもらっていました。Teamsでは、サインの代わりに「いいね!」をしてもらうようにしています。便利なことに、保護者の方はご自身のスマホからもTeamsを閲覧可能なので、いつでも、どこでも確認可能となりました。
 また、Teamsを使用して「おお!」と予想外の衝撃を受けたことがあります。それは、宿題忘れへの対応です。時々、子どもがチャットに「ノートはあるのですが、算数の問題集を学校に忘れました!」なんて投稿をします。すると、別の子が今日の宿題範囲であるページを写真で撮って投稿してくれるのです。宿題で難しい問題があれば、質問し合う日もありました。困ったときも「繋がっている」という安心感を与えることができるのではないでしょうか。
 

音読カードとリコーダーカードの廃止


音読カード

 2つ目は宿題あるあるの音読カードとリコーダーカードの廃止です。厚紙で冊子を作り、毎月のりで貼っていますよね。低学年なんかは、どこを音読したらいいか分かるように、音読カードに読む日付とタイトルを予めPCでポチポチ入力してから印刷することもあります。ていねいです。非常にていねいです。でも、それもやめちゃいましょう!ぽいっ!!
 パソコンを使う上で、あれもこれもと様々なアプリをまたぐと、子ども達は混乱しますし、先生も管理しにくくなります。そこで、1つ目に活用したTeamsを同じく使用します。先生が送った連絡帳のチャットに「読みました。」とコメントするだけです。印刷いりません。回収しません。先生サインしません。返却しません。楽です。パソコン画面1つで解決するのです。中には「読んだふりしてズルする人がいるのでは?」という人もいますが、それは紙であろうとデジタルであろうといます。PCだからどうという話ではないのです。しかし、紙をも超えて完璧に提出させるのであれば「課題」という機能を使って自分が音読をした音声を録音させて、提出する方法もあります。使い方次第で圧倒的に紙を上回ります。

自由進度宿題

 先ほどは音読カードやリコーダーカードのペーパーレス化について記しましたが、次はリコーダーの宿題事態の質を上げるものです。3年生の担任をしたときは、初めてリコーダーを扱うこともあり、音楽の授業だけでは練習時間が不十分です。そこで、宿題でもリコーダーの練習を取り入れることがあるのですが、ここで大きな問題があります。学校では見本の音源を聴き、みんなと一緒に吹くので、なんとなく吹けるのですが、家に帰っていざ練習しようとすると、音のリズムを忘れていることがあるのです。リコーダーが苦手な子は音のリズムが頭に入っていないパターンが多いです、なので、せっかく宿題を出してもめちゃくちゃなリズムで練習してくることがあるのです。そこで、Teamsに演奏したい曲の音源をアップします。また、先生の演奏している動画も見本としてアップします。そうすることで、児童は家でも音源を聴いて、リズムや先生の指使いを視覚的、聴覚的に確認しながら練習に取り組むことができます。また、慣れていない子は再生速度を×0,8や×0,5のスロー再生にすることで、ゆっくり練習することができます。得意な子で、宿題に飽き始めた子は×1,2や×1,5のハイスピードに挑戦する子も。まさに自由進度宿題!この動画視聴を取り入れてから、児童の上達スピードが格段に上がりました。もちろんこの動画は、家庭だけでなく授業中も自分のタイミングで視聴して活用しています。

動く学級通信

 3つ目は学級通信に関してです。私は年間60部ほど学級通信を発行しています。子ども達の学校でのがんばりが保護者にも伝わるように、よく写真を載せています。百聞は一見にしかず。どんなに文字を見るよりも写真の方が伝わりますよね。ましてそれが動画だったら…。そう、動画も載せれるんです。それが「動く学級通信」です。物理的に紙に動画を載せるのは不可能なので、代わりにTeamsを使います。保護者に観てもらいたい動画をTeamsのファイルにアップ→リンクをコピー→QRコード生成→QRコードを学級通信に貼り付け で完了です。あとは、家に帰って児童が端末でQRコードを読み取ると、学校の様子を親子で観ることができます。これは数年間続けていますが、保護者受けがよく、学校への安心感をもっていただけます。詳しいやり方はいつか記事にできればと考えています。学級通信を書いている先生は是非、チャレンジしてみてください。

宿題プリントはデジタルで

 4つ目は、宿題プリントについてです。算数や社会、理科の宿題は、プリント集を印刷して配布するのが一般的です。しかし、この紙の宿題は困ったあるあるがあります。 ・先生、プリントなくしました問題 ・無記名問題 ・欠席児童に宿題届ける問題 ・提出者を1人1人チェック問題 ・回収→採点→返却たいへん問題 ・机の中プリントでぐちゃぐちゃ問題 ・印刷の手間問題これは誰もがうんうん!と共感してくれるのではないでしょうか。これ、毎日あるものだからこそどうにかしたいですよね。そこで、近年どこでも導入しているであろうデジタルドリルを宿題として出すのです。自治体によって取り入れているアプリは異なると思いますが、大体どこかの企業が開発したデジタルドリルアプリを導入しているのではないでしょうか。PCの持ち帰りをしていないクラスは、これを教室の空き時間などでしか活用していない印象です。しかし、宿題として家でやってもらうのです。私の自治体が採用しているデジタルドリルはAI機能が導入されているので自動採点、ヒント、児童のレベルに合わせた問題の出題などをしてくれます。また、元々宿題機能がついているものもあり、宿題範囲と期限を先生が設定することができます。誰が実施し、誰が未実施かも教員画面で2秒で確認できます。記名要りません。机の中ぐちゃぐちゃしません。○付けいりません。何から何まで便利です。 ただし、ペーパーレスな私でも新出漢字などの暗記系は紙で取り組んでいます。鉛筆で「書く」ことで頭に入る児童も多くいるからです。書く作業は知識を整理してくれ、頭の中に残りやすくなります。種類によって使い分けるスキルが私たちには必要なのです。

チャネルでトーク


Teamsのチャネル

 こちらはMicrosoft Teamsのチャネル機能の活用です。メインとなる「一般」のチャットルームは基本先生からの連絡帳のみを投稿します。しかし、その他に児童が自由にチャットができるチャネル(部屋)を開設しました。自由にチャットをしたらトラブルが起こるのではないか。という不安な気持ちも分かります。しかし、問題が起こるのを恐れて使わなかったら、いずれ将来使用したときにトラブルが起こるでしょう。それならば、小さいうちからチャットに触れ、情報モラルを身に着けておくほうがよっぽど教育的ではないでしょうか。また、Teamsの投稿内容は先生が常に管理しています。いつでも確認できますし、悪意がなくともあまりよろしくない単語がチャットで使われた場合は私の方で削除します。そうして子ども達は学んでいくのです。
 夏休みや冬休みなどの長期休暇前には「ナツトーーク!」「フユトーーク!」を開設します。長期休暇中もクラスの子ども達とチャット内で繋がることができます。長期休暇明けの不登校や自殺が多い日本の子ども達にとって、安心材料となり、1つの予防策となくのではないでしょうか。私はひたすら学校の畑で子ども達と育てていたひまわりの日々の成長を写真で撮って送信していました。

教室が広くなる!?チャージスタンド爆誕

 PCを持ち帰るということは、家で充電する必要があるということです。そこで、学校に充電器を置かず、家用として持ち帰らせることにしました。これまでは、児童のPCを一斉に充電する保管庫が教室内にありました。この保管庫、大きすぎ!使いにくい!埃がたまりやすい!と課題が多々ありました。また、PCを使いたいときにわざわざ席を立って保管庫に行列を作らなけでばなりません。効率悪すぎる!!これだけでPCを授業で活用したくない立派な理由の1つになりそうです。

充電保管庫

しかし、家で充電するならこの巨大保管庫いらなくないか?という結論に達し、空き教室でしばらく眠らせることにしました。すると、教室が広くなり快適に!また、パソコンは保護ケースに入れ、机の横にかけることにしました。使いたいときに5秒で取り出すことができます。PCを筆記用具のように。そんな言葉が実現したのです。
 ですが、1つ解決すれば1つ新たな課題が出てくるのがICTです。「先生、家で充電してくるの忘れました!」と申し訳なさそうに子ども達はよく言ってきます。こんなことでいちいち叱りたくないのと、学習の保証という観点とで、新たな策を講じなければと考え、チャージスタンドを作りました。(充電保管庫の分広くなったのに結局場所とるんかい!!)

チャージスタンド

 使わない机を2つ並べ、充電コードを4本常備しました。充電がピンチな児童は、ここでチャージしながら学習できます。「ちゃんとお家で充電しなさ~い!」と叱らなくてもよくなりました。しかし、大前提として、チャージスタンドではなく基本は家で充電してくることを最初に確認しておくことが重要です。チャージスタンド、混みますので。

ランドセルの中身は最小限に!


デジタル教科書

 私がPCの持ち帰りを実施してしばらく経ったとき、保護者の方から「パソコンが重いからランドセルがとても重くなった。」とご意見をいただきました。確かに、児童のPCを持つと、軽くはない。小学生のランドセル重い問題は今や1つの社会問題でもあるし…。ランドセルの中がPCだけだったらどうだろう!?そう思い、子ども達の物を借りて持ってみると、重いとは感じませんでした。そう、教科書とPC両方持ち帰るから重いと感じるのです。そこで、置き勉大作戦を決行しました。机の中や教室後ろのロッカーに教科書を置いて帰るのを許可したのです。いや、むしろ置いていきなさいと言いました。その代わり、全ての教科書をスキャンしPDF化したものを児童のPCに入れました。(Teamsのファイルに収納)あれだけの本が1つのPCに入ったのです。まさに魔法の板。スキャンは以前記事で紹介したアドビスキャンか、スキャナーの機械を使用しました。教科書を置いて帰ることで「先生教科書忘れました!」問題も解消。だって学校に教科書置いているんですもの。ただ、置いて帰るものが増えるということは、整理整頓が難しくなるということです。そこで、ご家庭方から100円ショップに売っているようなファイル立てを用意してもらいました。これで教科書もきれいに保管できます。

ロッカーの中身

最後に

 児童が毎日PCを持ち帰ることで便利になる点をいくつかしょうかいしましたが、いかがだったでしょうか。1年間持ち帰りをさせた私からすれば、もう持ち帰りなしの生活には戻れません。しかし、まだ実施したことにない方にとっては、ICTの大きな一歩であり、ドキドキな実践になるかと思います。ここで大切なのは、保護者も同じ気持ちであるということです。人はこれまでと違ったやり方をすると、違和感を感じるものです。なので、私が最初に実施するときは学級通信で周知しました。PCの持ち帰りがなぜいいのか。どんなことが教育活動に役立つのか。これまでの紙の連絡帳はどうすればいいのか。宿題の見方はどうすればいいのか。考えられる問題点とその対策もすべて書き記しました。そうすることで「先生はしっかり計画的に考えたうえで取り組んでいるんだな。」と安心感をもってもらえます。ちなみに、私の場合は今後紙の連絡帳は何かあったときの保護者と担任との連絡ツールの1つとして活用していただくことにしました。
 少しでも参考になればと思います。みなさんも是非、試してみてください!

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