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大羊春秋~羊務執筆者党史~(4)

この「大羊春秋」(だいようしゅんじゅう)とは、私が主宰していた同人誌サークル「羊務執筆者党」(ようむしっぴつしゃとう・略称SSP)の活動を振り返る「回顧録」です。

誕生! 羊務執筆者党

生まれて初めて作った男性向同人誌である『四面楚歌 -第弌号-』は、昭和62(1987)年8月9日(日)開催の「コミックマーケット32」で初陣を飾ります。
終了後、私は頒布結果の報告書をI上へ郵送しました。
「そこまでしなくても」と思われるかもしれませんが、たとえ趣味(遊び)で行っている同人誌活動でも、万が一のトラブルを避けるために金銭関係は明朗にしたいという私の考えによるものです。

それが「四面楚歌販売報告書」(原文のまま)と題した、ワープロ打ちのB5判1枚のプリントです。

「羊務執筆者党」の名が初めて登場する「四面楚歌販売報告書」。「無料配付者」の5名は実名のため消してある。

この報告書の作成中、私はサークル名の変更を思い立ちました。
というのも、この「面妖本執筆者党」というサークル名はあまりにも露骨で恥ずかしかったのと、捻りが無く面白味に欠ける思ったからです。

新しいサークル名を考えるにあたり、私には次のこだわりがありました。
(1)軍隊調のものは同人誌界に溢れ陳腐なため◯◯隊や☓☓師団といった名にはしない。
(2)カタカナ名も多いので採用しない。
(3)日本らしく漢字のみにする(当時はそう考えていた)。
(4)政治的な名にし、それらしくするため「△△党」にする(この理由は長くなるので割愛します)。

「面妖本」という呼称については、第2回「面妖本執筆者党の誕生」で述べた通りです。
ところで「高橋留美子総合F.C. U&R」在籍中、私の周りの一部の人達の間では「面妖本」を「羊本」(ひつじぼん)と呼ぶようになっていました。
その理由について私はよく分かりませんが、「面妖本」という呼び名がメジャーになりつつあり、スラングとして機能しなくなったからかもしれません。
何故「羊本」かと言うと、「面妖」を同音異義語である「綿羊」(ヒツジの一種)に引っ掛け、そこから「羊」を抜き出したものです。

このことから新しいサークル名に「羊」という語を用いようと思いつきました。かと言って「羊本執筆者党」では芸がありません。
実はこのあたりの思案についてはあまり憶えていないのです。
もともと歴史が好きなことから、中国の清王朝末期の19世紀後半に行われた「洋務運動」をどういう訳か思い出し、「さんずい」を取れば「羊」になるので、この捻りは面白いと考えました。
そこから、「羊本の製作に務める執筆者の党」という意味で「羊務執筆者党」というサークル名が考え出されたのです。

プリントの日付が昭和62(1987)年8月14日(金)だったため、8月14日が結成日となり、このことから後の解散日も14日になった訳です。

よって「面妖本執筆者党」は同人誌即売会に参加することも無く、1年も経たずに消滅してしまいました。


36年と5ヶ月の間、このサークル名で活動する訳ですが、正直言うとちょっと恥ずかしいと感じたことはあります。このネーミングに後悔し、名を変えようと思ったことは1度ではありません。
でも、それなりに愛着が生じていましたし、コロコロ変えるのは節操が無いと思い実行するに至りませんでした。

同人誌サークルらしからぬ独特な名ですが、この「ようむ」という音と、「羊務執筆者党」という字面はどうやら印象的だったようで、これは活動のうえでプラスになったと思われます。

その後「党章」「スローガン」などが決められ、発行する同人誌名も変わる訳ですが、それは次の機会にお話ししましょう。

《第4回おわり》

※文中敬称略

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