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つれづれなる日々のこと

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#エッセイもどき

親友Rのこと

親友Rのこと

2017年も、残すところあとわずか。もう本当に「もういくつ寝るとお正月」という言葉がぴったりの時期になってしまった。

noteのハッシュタグ企画もあり、2017年を振り返ってみようとおもったけれど、なぜかあまり記憶がない。

一月に何をしていたか? 二月何が起きていたのか?

ぼんやりと毎日を過ごしていた訳ではないと思う。むしろ毎日何かしらバタバタと慌ただしかったと思う。けれども、「ああ、そう言

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くらやみ迷路

くらやみ迷路

文化祭の思い出、といって、すぐに思い浮かぶものはどんなものだろう? 

高校三年生の受験を控えて、不安な胸の内を隠すかのように、出し物に打ち込んだときのこと。

大学生のときの、ちょっとした恋の芽があちらこちらで花開いたり、枯れてしまったりもした人間模様。

どちらにも心当たりがあるし、思い返すとちょっとだけ泣きそうになるものや、大声で「うわー、青春だったね!」と叫びたくなるほど恥ずかしくて、レモ

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選ぶもの、捨てること。

選ぶもの、捨てること。

「ちょっとさ、報告があって」
向かいの席に座った彼女は伏し目がちに、そう切り出した。

久しぶりにゆっくりお茶でもしようよと、奮発してホテルのアフタヌーンティプランを予約していた。ちょっぴりラフな格好で出掛けてしまった私は、そのホテルの雰囲気にいささか居心地が悪かった。柔らかいソファにもお尻がモジモジして落ちつかない。キョロキョロと子供みたいに「ああ、もっと、おめかししてくれば良かったかなぁ……」

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何気ないひとことで

何気ないひとことで

「あなたに聞いてるんじゃないの、口をはさまないで」
幼稚園の年長クラスにいた時に、先生に言われた一言が、今でもずっと心に引っかかっている。
教室で、お絵かきだか何かをしていたとき。
私の左隣に座っていたサオリちゃんが、私の左ななめ前に座っていたノリコちゃんに、いじわるな言葉を投げつけて、ノリコちゃんを泣かせてしまった。

ノリコちゃんは、しゃくりあげ、大号泣した。慌てて先生が駆け付けてきて、サオリ

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10年のあいだに作られるもの。

10年のあいだに作られるもの。

「お前には、まだそれは10年早い!」
この前言われてしまった言葉だ。
ニュアンス的にはもっと柔らかかったし、「下手に手を出さない方がいいよ」という意味合いが強かったんだとも、今になって思う。けれど、私は結構なショックを受けた。

もちろん、まだまだ勉強が足りないことは自分でも分かっている。アイデアだなんてとても言えない段階。発芽も何も、まだ袋に詰められてホームセンターで並んでいる花の種くらいのレベ

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栗に教えてもらったこと。

栗に教えてもらったこと。

「初物だし、せっかくだからもらってきたよ」
夫はそう言いながら、紙袋を私に手渡してきた。
私はありがとう、と紙袋を受け取り、袋の中をのぞき込んだ。
やれやれ、だ。
嬉しい気持ちもあるけれど、ちょっとウンザリする気持ちがどうしても混じってしまう。

紙袋の中にはたくさんの栗が入っていた。
夫の実家は、ちょっとした栗の畑があった。昔は観光農園のようなことを営んでいて、栗拾いや芋掘りに来る人も大勢いたと

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柿みたいな距離感の人

柿みたいな距離感の人

「ごめん、仕事中に」
夫から電話がかかってきたのは7月の終わりの暑い夕方だった。正確な日にちは覚えていない。夏休みが始まったばかりで、これからワクワクした毎日が始まるんだとでも言わんばかりにヒマワリが咲いていたことだけは覚えている。

「どうしたの? 今ちょっとなら手が空いてるから大丈夫だよ」
普段は仕事中に夫から電話がかかってきても、出られないことが多い。そのために、用事があるなら電話じゃなくて

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1分くらいで、世界は変わる。

「よう動く足やなぁ」
母が言った、私にとっては名ゼリフと思える言葉だ。

私に言ってくれたのではなくて、一緒に暮らしていたチワワにかけた言葉だった。
猛ダッシュをしたとき、足の動きが見えないほどに動き回るため、母なりの褒め言葉だった。

そのチワワは、昨年の9月に突然死んでしまった。真夜中に突然痙攣しだして、五分ほど苦しんだ後には、もう心臓が止まってしまっていた。

私達家族は、あまりのことに事態

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