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SDGs経営に求められる未来のグローバルリーダーを育成!産学連携の取り組み

SDGsの達成や多様なステークホルダーとの価値共創のためには、企業と大学の協働が重要であると言われています。マクロミルでも産学連携の取り組みを推進しており、その1つとして京都大学大学院での講義を通じた未来のグローバルリーダーの育成に取り組んでいます。今回は、次世代のグローバルリーダーのポジションを担うであろう学生に対し、海外での経験豊富なマクロミル社員が行った、「SDGs下で求められる経営戦略」というテーマの講義について、取り組みの背景や講師の想いなどをご紹介したいと思います。


講義を務めたのは、グローバルシニアプランナーの岸原文顕(きしはら・ふみあき)です。前職はキリンビール社で、「キリンフリー」などの新商品開発をはじめ、国内外での営業やマーケティング、新規事業の推進など多岐にわたって経験をしてきたスペシャリストです。京都大学大学院では、実際のグローバルマーケティング事例のケーススタディと、マーケティングリサーチ講座の2コマを講義。当日の様子、取り組みや学生への想いなどお話をうかがってきました。

「総合マーケティング支援企業」へのパーセプションチェンジにかける想い

―当取り組みの背景や、講義するにあたっての想いを聞かせてください。

岸原:私は普段、クライアントに商品やサービスのコンセプト開発、広告コミュニケーション開発といった領域をご支援しています。しかし、多くのクライアントにとっては、「マクロミルはマーケティングリサーチ専門会社」であるという印象が強く、「マーケティング全般やブランドのコンサルティングといった支援は、マクロミルの領域外なので広告代理店に相談」という方が多いのが実態です。おそらく、マクロミルにお願いすることとして想像もしないというのが、多くのクライアントにおけるマクロミルに対するパーセプションだと思います。

これらのパーセプションを変えるためには、マクロミルにはリサーチを越えるマーケティングの上流から下流までご支援するスキルを持った多様な人材が在籍しているということをもっと社外の皆様に知っていただくことが重要だと考えました。私がマクロミルに来てからこれまで取り組んだ、複数大学(明治大学、法政大学、京都大学)での講義経験の発信もその一助になるのではないかと考えたのです。なぜなら、アカデミアでの取り組みでは自分自身のビジネス経験を一般化(社会に広く共通して認められる)する必要があり、その一般化された知見は、さまざまな業種の事業に対しても普遍的に活かすことができる、という一つの信頼要素になるからです。

今回は京都大学大学院より依頼を受けて、「SDGs下で求められる経営戦略」というテーマで、SDGs経営で重要となる、ビジネスモデル、イノベーション、リスクマネジメント、ガバナンス、新興国におけるマーケティング、人材マネジメントなどを理解する目的で講義を行うこととなりました。学生がさまざまな研究を進める際に実施するリサーチの実務を体系的に学べる「マーケティングリサーチ講座」と、ケーススタディ形式でグループ討論を交えた内容です。

講義参加メンバーの集合写真(長山教授(右)、マクロミル岸原(右から3番目)と、
受講された学生の皆さん)

リサーチの基礎を正しく学ぶこと、消費者に傾聴することの重要性

―SDGsの達成のために、マーケティングリサーチはどのような役割を担うのでしょうか?

岸原:SDGs達成に向けてマーケティングリサーチをする目的は、各地域や産業における現状の持続可能性や、持続可能な商品・サービスへの需要や消費者の嗜好を理解すること、そして、そのような事業やプロジェクトに対する投資機会を特定し、政策やイニシアティブの効果を把握して必要に応じて調整を行うことです。

しかし、グローバルリサーチは、さまざまな人種や地域ニーズといった視点など、多様性を考慮して、信頼できるデータを取得する必要があります。そのためには、適切な調査手法を採用しなければなりません。また、関与するすべてのステークホルダーを巻き込んでリサーチすることが必要になります。

こうした中、同院の長山教授は博士課程の学生がそれぞれの研究テーマに応じてさまざまな調査を行う際、どのように調査を設計し、どのような調査対象者に対してアンケートやインタビューをするか、またそのデータの読み解きや活用といった実務など、マーケティングリサーチの基礎を学ぶ機会が不足していることの課題を感じられていました。そこでマクロミルが日頃から開催している「マーケティングリサーチ基礎講座」というセミナーの英訳版を作成し、リサーチの目的、企画、調査票設計、クロス集計について順を追って解説しました。

一連の調査体験を通じ、回答を得たい実際の消費者から本当に求めているものを聞くことによって、学生の研究精度のブラッシュアップにつながります。本来マーケティングリサーチとは、消費者が本当に求めているものを、商品やサービスを生み出す企業に伝えていくことで、実際に求められている商品やサービスが提供されるようになるためのものです。企業は売れないものを生み出すといった無駄が無くなりますし、必要とされるものが必要な分だけ消費者の手に渡ることにもなり、持続的な社会へとつながって行くのです。

マクロミルの「マーケティングリサーチ基礎講座」(英訳版)の項目

ケーススタディでは、SDGs経営でのビジネスモデル改革、リスクマネジメント、海外でのマーケティングなどの重要なテーマを学んでいただき、「持続可能な開発目標(SDGs)に適合した企業戦略を考えること」そして「持続可能な事業に、組織の価値観と社会的責任のある行動を組み込むこと」の意義を理解することが目標です。

「SDGs経営での意思決定に至る過程と、その後のアクション、あなたならどうする?」と、学生に“思考と討議”を促したところ、事業環境の変化に適合しながら次世代に向けた価値創造の在り方については、机上よりは「現場」、理論よりは「判断と行動」に視点を置いた活発なクラス討議となりました。

なお、参加した博士課程の学生8名の専攻バックグランドはさまざまで、化学工学、MBA、コミュニケーション管理、比較経済政策、分子生物学、臨床検査医学、機械工学、都市計画など。国籍も日本に加え、中国、マレーシア、モザンビークと多様。中には、帰国後に国家や地域レベルで貢献を求められている留学生もいて、ディスカッションや講義は終始英語で行われました。

ケーススタディの内容(英訳版)
(和訳)(1)海外A市場における自社ビール事業の沿革と事業環境変化(背景紹介)
(2)競争環境が激変する中で生存するための戦略オプションは?(学生討議)
(3)選択したオプションを実行する「マーケティング戦略」は?(学生討議)
(4)まとめ

「リサーチ基礎の体系的な学びと実体験が、将来の持続可能な事業運営へとつながれば」

―講義をされてみての感想や得られたものなどをお聞かせください。

岸原:産学連携を通して高度な知見を取り入れることで、学生のスキルアップが期待できます。SDGs経営での戦略策定において学生がさまざまな研究を進める際に、実施する調査の実務を体系的に学べるマーケティングリサーチの講座が必要であると実感しました。今回の講義での学びや体験がグローバルリーダー育成への一助となれば幸いです。

また、持続可能な事業に組織の価値観と社会的責任のある行動を組み込むことは、次世代のグローバルリーダーには欠かせません。その意義への彼らの理解が深まったと考えます。一方で、私自身はさまざまなデータから生活者のインサイトを導き出し、海外業務経験やノウハウを活かして、クライアントと一緒に「価値ある商品やサービス」を産むことで世界の人々を幸せにしたい。その実現を通じて、マクロミルのパーセプションチェンジに取り組んで行きます。

―ここで、参加された学生の皆さんと長山教授から、講義の感想コメントをいただきましたので、一部抜粋してご紹介します!

■学生からのコメント
・この講義を受講して、国際大学でMBAを取得したときのマーケティングの授業を思い出しました。もしこれが大学の特別講義としてあれば、マーケティング・プロジェクトの研究をする際にとても役に立つだろうと思いましたし、再び開催されれば多くの学生が恩恵を受けると思います。

・授業が双方向的で、ディスカッションの質問が「枠にとらわれずに考える」ことや、合理的な議論に創造性を注ぎ込むように促してくれたことが良かったです。また私の専攻に関連して、この講義は意思決定における人間主導のニーズに重点を置いているという点で役に立ちました。

・定量調査のいくつかの手段や例を聞くことができて今後の研究に役立ちそうだと思いました。定量・定性調査の組み合わせ方、段階的に調査を進めることなどの話も聞けて良かったです。

長山教授からのコメント
講師の業界経験を活かした説明は非常に体系的です。マーケティングに限らず、プロジェクトのガイドラインやプロセスの改善など、多くのステークホルダーや社員が関わる中で、正しい課題解決につながるかを確認するために応用できるので非常に有益な講座でした。

マクロミルでは「クライアントが心から満足し、感動するサービス」を提供することをミッションとして掲げ、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が自身の強みを活かしてプロジェクトを推進しています。今後もこういった社員の取り組みをご紹介していきたいと思います!


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