VUCA時代を生き抜くための海外経営戦略 ~次世代のグローバルリーダーへ講義~
新型コロナや気候変動、不安定な政治情勢、世界的な原材料の高騰などによって環境変化が著しい今、企業には変化に対応する経営戦略が求められます。近い将来、そのポジションを担っていく可能性のある学生さんたちに対し、マクロミルのキーパーソンがマーケティング講義を行いました。
前職キリンビール社での国内外での経験をもとに
こんにちは!マクロミルの広報担当 度會です。マクロミルは、大学や大学院において、マーケティングやリサーチの講義、共同研究など、産学連携の取り組みをさまざま行っています。今回はその中の、京都大学大学院 総合生存学館の学生の皆さんに向けた取り組みについてご紹介したいと思います。
今回、講義の依頼を受けたのは弊社のグローバルシニアプランナー岸原文顕(きしはら・ふみあき)です。岸原は、前職でキリンビール社において「キリンフリー」などの新商品開発や、営業、マーケティング、新規事業など、国内外で多岐にわたり経験しました。キリンビール社における取り組みや事業環境の変化に伴う解決などはこちらの記事でご紹介しています。
ここからは、岸原に色々と話をうかがってみたいと思います。
度會(広報):長山教授からのご依頼内容や実際の講義内容について教えてください。
岸原:長山教授からは、「海外での環境激変下で生存するためにどのような戦略オプションを考えたのか、また悩んだ末にどう意思決定したのか。そして、その意思決定にいたる過程とその後のアクションについて、学生に「あなたならどうする?」という“思考と討議”をさせたい」とご相談をいただきました。
度會(広報):どういった学生の方に向けた講義だったのでしょうか。
岸原:京都大学 大学院 総合生存学館は文系・理系などに閉じない総合科学/リベラルアーツの先端教育を行うユニークな大学院で、講義を受けた学生の皆さんは京都大学をはじめとした国内外の大学を卒業した精鋭の大学院生でした。研究テーマは皆さんばらばらという点もユニークで、留学生も参加するために英語で講義しました。
度會(広報):「環境変化に対応する経営戦略」というテーマでどのような講義をされたか教えてください。
岸原:講義は、ケース仕立てにしました。すなわち、一方的な座学形式ではなく、事業の沿革や、市場の背景、競合状況などを説明した上で学生に問題を与え、討論してもらう、ケーススタディワークの形にしました。
岸原:ケーススタディでは激変する海外の事業環境への対応事例を取り上げました。机上よりは「現場」、理論よりは「判断と行動」に視点を置くことを学生の皆さんにも伝え、活発な討議が繰り広げられました。さらに事例紹介として、「人類と地球社会の生存」という同大学院が追求するテーマにも通じる、未来志向の価値創造と地域コミュニティのあり方について京都・広島・長崎(五島)の3つの国内での事例を取り上げました。
海外での環境激変下で生存するために重要なこと
度會(広報):キリンビール社時代のご経験が生きた、実践的な講義ですね。「環境変化に対応する経営戦略」において、海外での環境激変下で生存するためにどのような戦略オプションを考え、悩んだ末にどう意思決定するのか、今回皆さんに伝えたかったことはどんなことでしょうか。
岸原:今回は企業が生き残るための戦略で、学生には3つのオプションを考えてもらいました。身を縮めるか、逆に攻めに出るか、さらにもう一方向ということでしたが、その選択肢を考えた後の意思決定で必要になるのは、Mind Setだと伝えました。それは、将来、困難な状況に直面したときに何よりも大切にすべきなのは、「自分自身」の意思だということです。台湾での事例では、私は自分の立ち位置をどう定めてどう進めばよいのか悩んだ結果、それは「台湾と共に有ること。」だと気付き、下記のことを決心したと話しました。
「完璧主義」を捨てて、「決断する勇気」を持つこと。未経験の状況下で、かつ、前例がないことは、いくら綿密に調査してみたりしても答えは出ない。やってみなければわからないのだから、台湾人のように明るく勇気をもって一歩踏み出そう。そして、「台湾の次世代の感覚」を信じること。今を生きている生活者であり、かつ次の時代を創っていく彼らの言葉にはならない正直な感覚こそが正しいはず。
結果として、新たな価値を提案する新商品を開発して攻めに出る選択を取りました。そして、前例のないやりかたで商品が誕生しましたが、台湾人チームの洞察・希望・奮闘こそが、超特急での商品開発を推進し、現地の消費者の支持を得て事業の再成長に至る成功を収めた最大の要因でした。
また、ケーススタディの後で紹介した国内の事例では、「モノづくりの究極の目的はコミュニティを創ること。」だと話し、スタディツアーを組んで現地をぜひ見てほしいと伝えました。
― 今回オファーをくださった長山教授からコメントをいただきましたのでご紹介します。
度會(広報):さて、講義の中で、事業環境の変化に対応するには「経営戦略起点」のマーケティングが重要というお話がありましたが、何か課題意識などはありますか?
岸原: マーケティングは、「市場調査」「商品開発」「広告」「デジタル」などのパーツパーツで語られることが多いと思います。しかし、それらはあくまで「狭義」のマーケティングに過ぎません。本来は、「企業活動の全て」がマーケティングであり、活動全ての上位に「企業の存在意義(パーパス)」があります。CEOや社長をはじめ社員全員で、価値を生んで社会をより良くしていく活動がマーケティングなので、必然的に「経営戦略」起点とならざるを得ないからです。
私は現在、マクロミルで「プランナー」と呼ばれる仕事をしていますが、それは単なる「調査の企画担当」ではありません。調査という領域を超えて、クライアントの「マーケティング・ブレイン」でありたいという考えです。クライアントと一緒に海外進出や展開のあり方や戦略を考え、商品やサービスの開発、マーケティング施策の立案実行など、事業の成功に至る全ての道筋で相談に乗り解決策を考えることを自分の仕事としています。なぜならば、私達の存在意義は、クライアントが社会に「新しい価値ある商品やサービス」を産むことで世界の人々が幸せになる、そのようないい成果を生むために情報や知見から生活者のインサイトを導き出しながら伴走することにあるからです。
マクロミルはネットリサーチを事業基盤として成長をした会社で、ネットリサーチの会社というイメージが強いかもしれませんが、前述の通りそれは「狭義」なマーケティング支援に過ぎません。実際にはネットリサーチ以外のさまざまなデータ収集や、経営起点でのマーケティング支援も多数行っています。クライアントの成功のためには、このような仕組みをさらに構築してもっと伴走支援を増やしていく必要があると考えています。
度會(広報):最後に、次世代のグローバルマーケターを担う学生の皆さんに対する期待や願いなどをお聞かせください。
岸原:目の前の現実を必要以上に素直に受け入れて小さくまとまるのではなく、大きな構えで夢や理想を描いて欲しいです。新たな出会いや体験にワクワクする子供のような好奇心をもち続けて、どうすれば世の中をもっと良く、もっと楽しくできるのかという構想や妄想を仲間と自由に語りあい、そして情熱が沸いてくるようなら一歩踏み出して挑戦してみる。格差や差別、戦争や分断など、世界は混沌としていますが、その中でも起きている小さいけれども良い変化をとらまえて、それを加速させてください。
皆さんが近い将来社会に踏み出したら、
「今日の自分の仕事は、本当に世の中を良くしているだろうか?」「自分は幸せか?」と、働くことや仕事の意味を折に触れて考えたり、一杯やりながら語り合ったりしながら、ワクワクする仕事に同志の仲間と挑戦してほしい。仕事と生活、どちらも楽しみながら、平和で幸せな世界を創りたいですね。Own it, Enjoy it!
度會(広報):ありがとうございました!