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【後編】「eNPS®マップ」で従業員エンゲージメントを可視化する

前編では、従業員エンゲージメントを測定する指標「eNPS®(Employee Net Promoter Score)」と、それを可視化するためにマクロミルが独自開発した「eNPS®マップ」の概要・考え方についてご紹介しました。後編では、「eNPS®マップ」にスコアをプロットしたら、どのようなことがわかり、改善施策を検討できるのか、詳しく解説していきます。

▼前編はこちら

1. eNPS®マップで明らかにできること

eNPS®マップを使うと、企業と従業員のエンゲージメントの度合いが、どの程度醸成されているかを視覚化することができます。eNPS®の値が同じであっても、プロットされたマップ上の位置が異なれば、その値が持つ意味合いは変わります。

eNPS®マップの6つのゾーニング

また、エンゲージメントが高まるにつれて、マップ上のプロット位置は、左下から右上に推移していきます。これを踏まえて、マップ上の自社のプロット位置を見ることで、エンゲージメント向上のために目指すべき次のステージが見えてきます。

eNPS®の改善に伴うプロット位置の推移

つまり、eNPS®マップを活用することで、下記の2点を可視化することができます。

① eNPS®だけではわからない自社の現状の理解
② 自社のエンゲージメント向上のために、目指すべき次のステージ

2. プロット別にみる、“現在地”と改善施策

それでは、実際にそれぞれのゾーンにプロットされた場合の状況と、改善施策を見ていきましょう。

1)「低エンゲージメント」にプロットされた場合

従業員の半数以上が批判者(6点以下)であり、中立者(7-8点)、推奨者(9点以上)がどちらも2割未満と、従業員エンゲージメントは非常に低い状況にあると言えます。これは、多くの従業員が現在の就労環境に不満を感じており、仕事に対する誇りややりがいを感じていない状態と言えます。早急な改善策の実施が必要です。

低エンゲージメントからの脱却を目指しeNPS®改善のために行うべき第一目標は「批判者」の割合を減らすことです。eNPS®マップ上では、「満足者充足率」を高め、「中立ライン(=中立者の割合が20%以上)」を上側、改善フェーズ1にプロット位置を移動させることを目指します。そのためには、NPS®の回答が5点もしくは6点の従業員の不満点を確認し、その改善に取り組むことが有効な手段と考えられます。

「低エンゲージメント」にプロットされた場合の第一目標と検討すべき施策

2)「改善フェーズ1」にプロットされた場合

従業員の半数以上が批判者(6点以下)ですが、中立者(7-8点)が2割以上と一定数存在します。しかし、推奨者(9点以上)は2割未満であるため、エンゲージメントが低い状況にあります。「低エンゲージメント」に比べると、就労環境に不満を持つ従業員は少ないものの、半数以上は現在の就労環境に不満を感じています。引き続き就労環境の改善策が必要です。

eNPS®改善のために行うべき第一目標は、引き続き「批判者」の割合を減らすことです。eNPS®マップ上では、「満足者充足率」を高め、「満足者充足率」を50%以上とし、プロット位置を改善フェーズ2に移動させることを目指します。そのためには、引き続きNPS®が5点もしくは6点の従業員の不満点を確認し、その改善に取り組むことが有効な手段と考えられます。

「改善フェーズ1」にプロットされた場合の第一目標と検討すべき施策

3)「改善フェーズ2」にプロットされた場合

中立者(7-8点)と推奨者(9点以上)の合計が従業員の過半数であり、職場に対してネガティブな層よりもポジティブな層が主流で、一定のエンゲージメントが醸成された状況にあると言えます。就労環境に不満がある従業員は半数を切りますが、推奨者(9点以上)は少数であり、職場に愛着がある方は少数です。仕事へのやりがいや誇りを醸成できるような施策が必要とされています。

eNPS®改善のための第一目標は、「推奨者」の割合を増やしていくことです。eNPS®マップ上では、「推奨者充足率」を高め、パレートラインの右側にプロット位置を移動させ、「エンゲージメント」ゾーンを目指す段階にあります。そのためには、NPS®の回答が7点もしくは8点の従業員の不満点を確認し、その改善に取り組むことが有効な手段と考えられます。

「改善フェーズ2」にプロットされた場合の第一目標と検討すべき施策

4)「エンゲージメント」にプロットされた場合

中立者(7-8点)と推奨者(9点以上)の合計が従業員の過半数となる中、推奨者の構成比が全従業員の2割を超え、エンゲージメントが向上している状態です。
就労環境に不満がある従業員は半数を下回り、職場に愛着を持つ層(=推奨者)も2割を超えています。こうした層をより増やしていくために、一層、仕事へのやりがいや誇りを醸成できるような施策が重要になります。

eNPS®改善のために行うべき第一目標は、「改善フェーズ2」よりもさらに「推奨者」の割合を増やしていくことです。eNPS®マップ上では、「推奨者充足率」を高め、NPS®ラインの上側にプロット位置を移動させ、「高エンゲージメント」ゾーンを目指す段階にあります。そのためには、eNPS®が7点もしくは8点の従業員の不満点を確認し、その改善に取り組むことが有効な手段と考えられます。

「エンゲージメント」にプロットされた場合の第一目標と検討すべき施策

3. eNPS®マップの応用

eNPS®を全体値で見た場合、従業員全体のエンゲージメントを確認することができますが、これを応用すると、さまざまな課題を洗い出すことができます。例えば、eNPS®を部署別や年代別など、他の視点で分析することで、エンゲージメントが著しく下がる「離職リスク期間」の発見などにつなげることができます。

下記は、世代間ごとの課題の発見するべく、年代別にプロットした例です。
このように、職場に対するエンゲージメントが低い若年層(20代、30代)とエンゲージメントが高い高齢層(40代、50代)に二分されていることがわかりますね。また、年代としては近い30代と40代ですが、エンゲージメントの差は大きく、中高年にとって働きやすい一方、若手が育ちにくい環境にある可能性もあります。

eNPS®の年代別比較


また、縦方向と横方向の差分にも注目してみると、満足者充足率(縦方向)の差が28.1pと推奨者充足率(横方向)の差(9.7p)に比べて、著しく大きくなっています。ここから20代、30代の若年層は、現状に対する満足度が低く、職場に対する不満を持っている可能性が高いこともわかります。若年層については、待遇の改善も含めた不満点のヒアリングが急務です。
また、全年代を通して、推奨者充足率が低く、職場に対する愛着の育成が進んでいないことも目立ちます。仕事に対する誇りを持つことができる情報発信ややりがいの育成などにも力を入れる必要があるでしょう。

4.最後に

従業員エンゲージメントは生産性や顧客ロイヤリティ、企業の売り上げと密接に関わっており、エンゲージメント向上は経営において非常に重要です。しかし、目に見えにくい従業員エンゲージメントを可視化し、管理していくことは難しく、可視化の手法も限られています。
エンゲージメント指標として実績のある「eNPS®」と「eNPS®マップ」を組み合わせることで、エンゲージメントの可視化と向上のお役に立つことができたら幸いです。従業員のエンゲージメントの可視化にお悩みを持つご担当者様が本記事をご参考にしていただければ幸いです!

この記事を書いた人

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(左から、平岩、竹内、川村、徳田)

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