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社会課題領域の“これからの活躍人材”を育成する「Leaping Rabbit」運営者インタビュー|企画背景や今後の展開は?

この記事は、弊社で運営する人材育成プログラム「Leaping Rabbit」について、共同運営会社である株式会社Dropとmorning after cutting my hairとで対談形式のインタビュー取材を受けたものとなります。プログラムの企画背景や想い、第一期生たちの様子などをお伝えしています。

近年、SDGsが広く語られるようになり、世界の環境・社会・経済などのサステナビリティ(持続可能性)への注目が高まっています。それに伴い、サステナビリティや社会課題への取り組みは、公的機関・非営利団体だけでなく、民間企業や個人にとっても、身近な存在になりつつあります。

ソーシャルセクター内での「プレイヤー」へのニーズは今後より一層高まると予想される中、「社会課題解決の現場でプレイヤーとして活躍できるようになりたい」という想いを抱えた人向けに2021年2月から2ヶ月にわたり開催したのが『Leaping Rabbit』

社会課題領域で活躍するのに必要なマインドや思考力、スキルアップのための土台を磨くことができるプログラムです。

2021年8月から開催予定の第3期に向けて、この記事ではプログラムの開発を担当した株式会社morning after cutting my hair(以下、morning)の中西須瑞化さんと、株式会社Dropの篠田厚志さんにLeaping Rabbitの実施背景や魅力についてインタビューした内容をご紹介します。

/// 運営者プロフィール

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中西須瑞化 / 株式会社morning after cutting my hair
大学4年の就職活動時に「世の中にある選択肢を知らずに就職してしまう自分にモヤモヤを感じて休学。休学している間に多方面で活躍をするたくさんの大人に会う中で、一般社団法人防災ガール(現在のmorning after cutting my hairの前身)と出会い、団体の立ち上げ期から参画。有機的解散をする2020年3月までの5年間、事務局長として活動をおこなう。
現在は社会課題解決に特化した企画・PRや人材育成をおこなう株式会社morning after cutting my hairで取締役をしながら、フリーランスとしても活動。自身の生きづらさにも焦点を置き「生きる選択肢の提示」をテーマに、ライティング、イベントのディレクション、ナレーションなどの仕事にも従事している。

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篠田 厚志 / 株式会社Drop 取締役 CHRO
大阪府庁に入庁し、12年間人事・財政の担当として従事。29歳で食道粘膜下腫瘍を発症して、父親としてキャリア・ライフデザインを見つめ直し、大阪府庁を退職。その後、かねてから好きだった子どものためにできることをしたいと子育て支援を行うNPO法人ファザーリング・ジャパン関西を設立。理事長として、子育て支援に関するイベントや企業での研修・コンサルティングを実施。2020年、旧来の友人であるDropの代表米田の誘いでDropにジョイン。NPOの最前線で活動してきた経験を活かし、株式会社Dropの人事取締役として、社内外の組織開発と人事コンサルティングを担う。

ソーシャルセクターが悩み続けてきた「求める人材」と「候補者」のミスマッチ

——Leaping Rabbitはお二人のこれまでの活動の中で感じてきた課題意識をきっかけに生まれたと聞きました。どのような課題感があったのでしょうか?

中西:morningでインターンやスタッフの募集をすると、ありがたいことに応募者は多いのですが、ソーシャルセクター活動するにあたって必要になるマインドやスキルが十分でないと感じる方が多かったんです。熱い想いを持っていても、知識や経験が十分でなかったり、即戦力として働けるスキルをもっていても、社会課題解決というものに対して気持ちが追いついていなかったり。現場ではなかなか育成に時間をかけられないこともあり、こうした方々の採用に踏み切れず歯がゆい想いを抱えていました。

篠田:私も長らくNPO法人で働いていましたが、同様のことを感じています。よく応募者から「入ったら何をするんですか?私の役割はなんですか?」と質問をいただくのですが、毎回答えに窮してしまうんです。というのも、社会課題を解決する現場でやるべきことは多くあるけれど、同時にそれらをいきなり全部お願いすることは大変だと知っているからです。
社会課題に対する熱い想いやその複雑性に対する視座と、現場で柔軟に働けるスキルを兼ね備えている人材が少ないことがあらゆるソーシャルセクターの課題かな、と。

中西:本当にそうですよね。想いとスキル、両方のバランスがとれたプレイヤーが増えないと、課題解決が間に合わないとも感じています。だからこそ昨年、社会課題領域の“これからの活躍人材”を育成するプログラムを立ち上げたんです。

——ソーシャルセクターで働く人に必要な「スキル」は具体的にどういった力なんですか?

篠田:ソーシャルセクターでは「営業でアポ何件獲得する」といった特定のスキルを求めているというよりは、課題解決に必要なことを「何でもしてもらう」ケースが多いです。その認識がズレていると、いざ関わり始めてから「思っていたのとは違う」とミスマッチになります。
それを防ぐためには、今すでにそれぞれがもっている対人スキルやビジネススキル、企画や営業などのスキルを活かしながら、取り扱う社会課題に対して十分に想いを持って働けることが重要。そしてスキルにとらわれず「何でもする」という、働き方に対する心構えが必要なんです。

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中西:「何でもする」に関してだと、組織にもよりますが、作業だけを切り出して仕事をすることがあまりない気もします。
どうしてその課題が生まれているのか。どこが解決するポイントで、関わっている人がどれくらいいるのか。その人たちはどんな気持ちでいるか、社会構造のどこに問題があるのか……。たとえ現場のプレイヤーや制作部分のみを担うクリエイターであったとしても、社会課題に向き合う場合は特にそういったことを多面的に理解して取り組むことが求められます。
そういう意味では、一般的なビジネススキルだけでなく、課題に真摯に向き合える力がないと働きづらいのではないかと思います。
同時に、ソーシャルセクターという組織でミスマッチをせず、自分の能力を発揮して志を果たすために働くには、その課題に対して「自分は何ができるのか」を認識していることも求められますよね。

——確かに重要な点ですね。でも、普段からそれを理解しておくのは意外と難しいのかなとも思うのですが……。

中西:そうですよね。だからこそLeaping Rabbitでは「得意不得意」「自分が今できること」「求められているレベル」「今やりたいと思っていること」「それをやりたいと考えているその人らしい理由」を主観的・客観的に考え、適切に認識し、相手に伝わるように表現できるスキルを育むことを大切にしたいと思っていました。
応募者の方が自分をしっかりと理解でき、想いの面でもスキルの面でもそれを適切に表現する力を持っていれば、現状おこりがちなミスマッチも減っていくのではないかなと感じています。もちろん、受け入れる側のソーシャルセクターの団体や企業にも改善すべき点はたくさんあると思うので、弊社ではブランディングやPRの支援事業もおこなっているのですが(笑)

——morningとDropの2社で企画をしていますが、どうして共同で始めたのですか?

中西:morningは東京で社会課題解決に特化した企画・PR・人材育成をしていて、Dropは大阪でSDGsの視点で企業のコンサルティングを行っている会社です。アプローチ方法は違っても、根底にある「社会課題を解決して、より良い社会を築きたい」という想いは一緒だと感じています。だったら、お互いの強みをいかして共同で実施した方が、参加者に幅広い切り口で社会課題領域の多様な視点を届けられると考えました。

篠田:DropはSDGsを起点に、利益を求めることと社会課題を解決することが結びつくビジネスモデルを実装することを目指しています。
ビジネス分野は得意としていますが、社会課題の解決手法に関しては、Dropはまだまだ弱い。morningさんと組むことで補完できるのではと思っていました。

第1期の2つの魅力と受講者の共通点

——4月に第1期が終了しました。実施してみて改めてプログラムの目的と、魅力を教えてください。

中西:社会課題に対して、自分の頭で理解・咀嚼し自分の言葉で語れる人になること。自分のスキルについて正しく理解することを目的にしています。
その上で人生の限られた時間を何に費やしたいのかという、壮大な問いを見つめながら、どうしてこの課題に自分は取り組みたいのか、どうして心が熱くなるのかを見つけてもらう。最終的にはソーシャルセクターに何らかのカタチで一歩踏み出すステップになることがねらいです。転職でも、ボランティアでも、企業内での取り組みでも、それはさまざまなステップの方向があっていいと思っています。

篠田:魅力は大きく2つあると感じています。1つは幅広い視点で社会課題について考える機会になること。
Leaping Rabbitは社会課題解決に特化したmorningとSDGsを専門的に取り扱うDropが運営するプログラム。そのため、社会課題についてソーシャルセクターやSDGsなど多様な切り口で説明でき、漠然と社会課題に関わりたいという想いをもった人にとっては、どの領域で何をしたいのか幅広く考える機会を提供できると思っています。

2つ目は、自分と似たような考えをもった人たちと一緒に学べること。
メディアで取り上げられるソーシャルセクターの人材は特別な存在として映ることが多いと思います。実際リーダーとして第一線で働く人が取り上げられることが多いです。しかし、現場で働く人の多くはプレイヤーであり、特別なスキルや原体験、想いをもった人ばかりではありません。Leaping Rabbitは運営しているスタッフ含め、社会課題解決に何かをしたいという想いを持つ人とともに学べるコミュニティ。特別なスキルや原体験の有無を問わず、これまでのそれぞれの経験をもとに新たに一歩踏み出したい人にとってとてもいい環境だと思います。

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(第1期生の講座後のコミュニケーションの様子)


——第1期、どんな方が参加されていましたか?

中西:非常に多様な方々が参加してくれました。20代から30代の7名で、住まいも北海道・東京・静岡などさまざま。大手企業で営業をされている人、病院で専門職として働かれている人、フリーランスで既にに活躍されている人、学生さんなど本当にバラバラで、参加した目的や社会課題というものに対する理解度や置かれている状況もさまざまでした。
受講者の多くに共通していたのは、応募時点で何か具体的に活動していなかったとしても、心のどこかで社会課題に取り組みたいと前々から思っていたことですね。

<受講者が抱えていた想い(応募書類やアンケートから抜粋)>
・今働いている会社でサスティナビリティ関連の新しい企画を立ち上げたい。
・まだ社会課題について調べ始めたばかりだけど、今後社会課題領域で働いてみたい。
・自分自身社会課題の当事者として、企画を立ち上げたくて形にできる力がほしい。
・学生時代は社会課題に対してアクティブに動いていたけど、就職を機に少し離れてしまった。心のどこかで気にはなっているので、プログラムをきっかけにまた動き始めたい。
・既にソーシャルセクターに関わっているけど、自分がなぜ取り組んでいるのか自分の言葉で語れないことにモヤモヤを感じている。

篠田:よく「本業として関わる勇気をもてなかった」と聞きますが、単純に具体的に関わるための情報が届いていなかったり、間口が狭かったことでいわゆる「普通」の就職をしていたんだと思っています。働き続ける中で「本当にこの会社でよかったんだろうか」「自分のやりたいことはこの仕事だったのだろうか」と迷いや悩みを抱えていたときに、たまたまLeaping Rabbitを見つけた方が多かったように思います。

ユニークな選考内容と選考のポイント

——応募フォームの内容がユニークで、設問が10問以上とたくさん記入する印象を受けました。どんな意図があったんですか?

中西:
改めて振り返ってさすがに長かったかな、とは思っています(笑)。でも1期生はみなさんたくさん書いてくれて嬉しかったですね。書類では「気になる社会課題」「その課題が気になる理由」「自身の強み・弱み」など、自分の内面と向き合いながら答える必要があるものを聞いています。これはLeaping Rabbitで大切にしている価値観でもあり、合否に関わらず、質問に回答する過程で自分が考えていることを自分の言葉に落とす内省の機会にもしてもらえたらと思っていました。

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——書類選考後には面談もありますが、どんなことをお話するのでしょうか?また選考のポイントはありますか?

篠田:社会課題領域で働く中で一番求められることは、「コミュニケーション能力」。相手が望んでいることを理解し、気持ちに寄り添うことだと思っています。ソーシャルセクターの仕事において、提供した支援・サービスの対価を困っている当事者に求めることはできません。そのため企業や個人から投資を受けて支援やサービスを実施することが多いです。その際に、組織の内部メンバー・クライアント・地域住民・投資してくれる人など、すべてのステークホルダーとコミュニケーションがとれる力は非常に重要です。
そういう意味で、どういう意図で問われているのかを想像しながら、自分の中にあるもので何を伝えられるのか、という観点は大切にしていました。

中西:面談の目的は、書類選考では伝わりづらい人柄を見ることです。話してみると、緊張で自分を表現することが苦手なんだなとか、文章ではいまいち伝わらなかったけれど、話してもらうと気持ちが伝わってくるなとか。講座開始前の段階で、参加者のパーソナリティを理解することは大切だと思っていました。
突拍子のない質問にも「わかりません。少し待ってください」など、素直に受け答えできるかもポイントでした。上手に喋れるかどうかではなく、あくまでも自分の言葉で語ろうとしているか、語れるようになりたいと思っているかが大切かなと思います。

2ヶ月のプログラムで見えた受講者の変化

——プログラム期間中で印象に残っている受講者の変化を教えてください。

中西:
初めてお話したときに、うまくコミュニケーションとれるかな、と少し不安に思った方がいました。その方は長年営業として第一線で活躍されていたので、自分から話すのは上手なのですが、相手や周囲に合わせながら話をするのが苦手そうだなぁと感じたんですよね(笑)。

でもいざ始まってみると、誰のどんなフィードバックも「たしかにそうですね」と真摯に受け止められて、変化を恐れないように見えました。プログラムを通じて自身と向き合う中で、今の自分のリーダー的なスタイルよりは、誰かを応援するフォロワーの中のリーダーでありたいと気づき、受講期間中に部署異動を実現。一貫して本当の自分と向き合い行動されていて、いい意味で印象がガラッと変わった方でした。

篠田:僕も1人プログラムを通していい意味で自信を無くした方を紹介します。その方はそつなく何でもできて、応募してきてくださった段階からアクティブに活動されている印象でした。一方で何でもできてしまう上に周りへの気遣いや気配りが得意だからこそ、これまで自分のことにはあまり向き合う機会がなかったのかなとも感じました。

実際、プログラムを通じて自身のやりたいことや課題意識を深掘ったときに、自分が本当にやりたいことに迷いが生まれたそうです。結果的にプログラム終了後、転職を決意したものの、この限られた期間内では明確な着地点を見つけられたわけではありませんでした。
もしかしたらLeaping Rabbitを受ける前のほうが、迷いなく進んでソーシャルセクターで活躍できたかもしれない。でも自分と向き合い悩んだことはこれからにも必ず活きてくるとご自身でも話されていて、2ヶ月で大きな変化を感じた方の1人でした。

——第1期が終わって2ヶ月が経ちますが、受講者のその後の変化はありますか?

中西:
Leaping Rabbitとは別のコミュニティで、Leaping Rabbitで内省した内容を踏まえて考案した新しい企画をプレゼンした方がいたり、Leaping Rabbitで作った「新しい履歴書」をSNSに載せたことで、これまで本当はやりたいと思っていたけれどご縁がなかった仕事につながったという方がいたり、嬉しい報告を聞いています。プログラムが終わった後も、Slackでお互いの近況報告をするなど、受講者同士のやりとりも続いていますね。

8月から新たに開催する第3期への想い

——7月から第3期の募集を開始すると聞きましたが、第1期の内容から変更したことはありますか?

篠田:目的や大切にしていることは変わりません。ただ、第1期を企画してから半年以上経っているので、世の中の課題感や社会課題に対する感覚の変化を踏まえて企画内容自体は少しアップデートする予定です。運営もさらにメンバーを増やして活発化させるなど、より充実したサポートができる体制を整えています。

——どんな人にLeaping Rabbitをお勧めしたいですか?

篠田:
僕自身、長い間社会課題領域で働いていますが、この業界は足を踏み入れようと思っても、リファラルでしか手繰り寄せられない難しさがありました。でもこれからはびっくりするくらい、ソーシャルビジネスの間口が大きくなると思っています。一方で大きくなるからこそ、情報がほしい人に届かないという課題も顕著になってくるはず。今は、自分の想いを本業にしやすい時代。本当は社会に対して熱い想いをもっている人が、もっと積極的に動ける環境が増えてくるでしょう。もっと人材の流動性がダイナミックになってほしいし、Leaping Rabbitはその波の中でプレイヤーとして生きていく人の力になりたいですね。

中西:「ソーシャルセクター」や「社会課題領域」と何度も口にしていますが、他の課題や業界と境界線を引きたいわけではないんです。個人的には、自分にとっての幸せや嫌だと感じること、周りの人の幸せはなんだろうと考えていった先にたくさんの人が関係する「社会課題」が見えてくるんだと思っています。
いきなり「ソーシャルセクターでがんばりたい」と決意できなくても、人生にちょっとモヤモヤしていたり、人生の時間を何に使うか悩んでいたりする人はいると思うんです。その中で社会課題や社会貢献の文脈にちょっとでも関わりを感じる人、自身の生きづらさや周りの人が抱えている困りごとを感じている人にとっては、その人の人生を一歩でも半歩でも前に進める経験をLeaping Rabbitではお届けできると思っています。書類選考はちょっと長いですが、ぜひ応募いただけたら嬉しいです。

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Leaping Rabbitは7月1日から第3期の募集を開始する予定です。
社会や自分の人生にもやもやを抱えている人、自分の仕事について一度立ち止まって考えてみたい人、社会課題に一歩踏み出して取り組んでみたい人にとっては、視野を広げるきっかけを大きく秘めているプログラムになると思います。
まずは応募フォームを記入をする過程で、自分の内面と向き合いながら自分が考えていることを自分の言葉に落とすことから始めてみてはいかがでしょうか?きっと自分の内にある想いをカタチにする第一歩を踏み出すことができるでしょう。

(取材・執筆:齋藤 汐帆 / 株式会社Drop)

7月1日より、第3期参加者の募集が始まっています。
少しでもチャレンジしたい気持ちがわいた方はぜひ
以下のフォームよりご応募ください!
【 第3期ご応募はこちらから 】
(応募締切:2021年8月1日(日)23:59)


Consulting for Social challenges with Love. based in TOKYO & SHIGA, JAPAN. ///// 世の中にある「課題」に挑む人たちの想いを伝え、感動と共感の力で、『人の心が動き続ける社会』をつくる。