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漫画語りー9. 「食」の秋に、漫画で「命ある食」への感謝を再確認しよう <(後編)山賊ダイアリー&自殺島>
はじめに
こんにちは、マッチロと言います。
ぼくは漫画が大好物で、これまで何作品か読んで楽しんできました。その中で感動して印象に残った作品がいくつもあるわけですが、このnote上で、ここが好き、これを学んだ、等の自分の感想や印象をとことん綴ってます。
前編に続き、今回もぼくに「食べることの本質」を漫画で教えてくれた二作を紹介したいと思います。
前編はファンタジーの世界と稲作や野菜などの耕種農業のまだ穏やかな物語を扱いましたが、後編では現実的でより実践的な内容、つまりサバイバルや狩猟といった生き物の生死に関わることを扱います。
したがって、血や命など生々しい描写が出ると思いますが、肉や魚も普段私たちが口にするものなので是非向き合ってほしいと思います。
「食」以外の内容も含まれてますが、漫画の魅力を伝える意図もありますのでご了承ください。
拙い箇所もあるかもしれませんが、漫画が同じく好きな方は少しお付き合い頂いけると幸いです。
「山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記」
食うのに困らない飽食大国と呼ばれて久しい現代の日本社会。
そんな時代に逆行して、晴れて猟銃と罠猟の免許を取得した岡本健太郎さん(作者本人)が、地元岡山県の片田舎で憧れの狩猟ライフに奮闘する様を描いたエッセイ漫画。
有吉弘行さんも面白いの太鼓判。
狩猟とサバイバルの豊富な情報&知識
漫画では、事始めの狩猟免許試験の様子から、
狩猟の手順、注意事項、獲物の処理方法、獲物の調理、猟銃の解説、銃所有者としての心構え等、
山猟師に関するあらゆることが日記形式で綴られています。
それらの描写から、猟師は基本的になんでも一人でする苦労はありますが、一方
生で命ある生物に携わる実感と
高級かつ新鮮な状態で食材を味わえる醍醐味もあることが伝わってきます。
また岡本さんは山猟だけでなく、禁猟期には山菜採りや川及び海釣りに、SSでは魚突きまで幅を広げて食材を獲得してますが、そこでも採集のコツやノウハウ、野生動物と植物に関するノウハウやうん蓄を紹介してて非常に勉強になります。
ノウハウで言えば、山でいざ困った時に役立つ生き抜く知恵も様々教えてくれるので、アウトドア&サバイバル好きな方はおすすめです。
その他の魅力
作者の岡本さんは人よりも食への好奇心が強く、例えばカラスのような人が引くような生き物まで獲ってなんとか食べようとします。
その種類が普通の人にとっては非日常的な食材ばかりで、その食材はどんな調理してどんな味がするかといった様子が見られるのでなかなか面白いです。
岡元さん以外にも所属する地域猟友会メンバーの他の猟師たちも漫画で登場し、集団猟や飲み会で交流しますがその面子も個性的な方たちで面白いです。
個人的には、マサムネくんのヘタレ感&皮肉感と、佐々木さんのベテランな達人技がツボです。
正直な話、漫画の画力が高い・・・とはお世辞にも言えません・・・。
がしかし!、逆にこの親しみあるゆるい絵のタッチだからこそ気軽に読み進められますし、解体の描写もこの画力のおかげでそんなにグロくありません。
ちなみに個人的に印象的な場面で言うと、
5巻で描かれてる岡本さん&佐々木さんの信頼関係と、最終話の岡本さん&1羽のカラスが対峙している見開きページがグッときました。
冊数も全8巻でそんなに多くないため気軽に読めるでしょう。
「自殺島」
人物の顔の絵とタイトルであまり良い印象を持たなかったのでずっと避けてたんですが、いざ実際読んでみるとゴリゴリのサバイバル漫画でめちゃくちゃ面白かったです!たぶんタイトルで損してそうです・・・。
漫画では、架空の日本国政府が自殺行為を常習し未遂で終わった人に対してうばすて山のように無人島に送り込んで密かに隔離措置を取っているという設定で、ある日自殺未遂者たちが何も聞かされないまま突如その島に流れ着いた所から物語が始まります。
プロレスラーの棚橋弘至選手や中邑選手もこの漫画をお薦めしています。
自殺×リアルサバイバル=・・・
ありきたりな無人島サバイバル設定でも、この漫画の特徴は、体も心も特別屈強でない一見不相応そうな自殺願望者にサバイバルさせてることです。
無人島前の生活ではイヤなことをきっかけに現実から逃げつづける日々を送っていた自殺未遂者も、衣食住が保障されてない環境ではさすがの彼らも生き延びる努力をせざるを得ません。
漫画では、そんな彼らのサバイバル生活の様子を
狩猟、採集、漁、家畜、武器や防具といった道具の役割、稲作、子孫を残すこと等の原始的な活動を通してリアルに見せてくれます。
こうした知識って歴史博物館にある原始時代コーナーで当時の生活や道具の資料展示物を眺めても結局よくわかりませんでしたが、漫画だと絵と共に知らなかった為になるノウハウも補足で説明されてるため非常に勉強に理解しやすいです。
彼らの中でも弓矢を扱うハンターとして頭角を表す人物が、主人公であるセイ。
島に来る前に本で学んだ知識だけで弓矢を扱い、不安と恐怖と緊張の中模索しながらも初めて生きるために鹿を殺します。そして自分で解体し、獲物を食した時セイは自分自身が幾星霜の命の上に立っていると痛感し涙するのです。
セイと同様に他の自殺未遂者たちも、とにかく考えて動きながら必死に毎日を生きるのですが、やがて彼らも島の発展と比例するように精神的に成長していきます。そして、元の生活で蔑ろにしていた生きる意味や生きる価値を次第に見出すようになります。
自殺というネガティブな問題と、極限な状況を掛け合わせて当たり前を問う。
"人間は追い込まれた状況で必死に頑張った時が一番成長する"
とよく言われますが、この漫画を読めばその成長の様子を垣間見ることができるでしょう。
集団で生きるということ
もう一つよくできた設定は、サバイバルが単独ではなく集団ということです。
彼らの集団生活では、同じ辛い境遇を持った者同士だからこそ連帯感が生まれて作業の効率化や助け合いにつながるケースもありますが、決して良いことだけではありません。
やはり自殺未遂者も十人十色で、横取りしようとする者、自殺するように甘く誘う者、独裁で人を支配する者たちがいて、人間面でも困難に直面します。そうした困難を彼らがどう切り抜き、どうまとめるのかが見所です。
それに関していうと、ぼくは11巻の全体会議の回が民主主義、多数決、責任、意志に関する意見が面白くて特に興味深かったです。
一応セイたちのグループではリョウかリュウがリーダーの役割を担ってるのですが、ぼくが個人的に注目したのは眼鏡をかけたスギという人物。
物知りで物事を合理的にとらえ、語彙力に富み、判断力に優れてるためなかなか重宝するため個人的に一番好きです。
このように漫画を読んでると、
限られた且つ無法の地帯において人間は良くも悪くもどういう行動をし、それがどう進展する可能性があるか、
が非常に学べるので、もし今後集団や個人に悩んだ時の良いヒントになるでしょう。
おわりに
「山賊ダイアリー」も「自殺島」も、サバイバル環境を通して他の生命を頂いて生きることをありありと見せてくれるので、私たちに普段の食事や、命の尊さや、便利な現代社会の生活を見直させてくれます。
当たり前じゃないんだって。
「自殺島」作者の森恒二先生は些細なことでも喜びを感じる能力を作中で訴えていますが、当たり前に抗うための大事な考えです。
ぼくもまずその意識を保ち、実践していけたらと思います。
最後に、
両漫画を読んで狩猟のことを知り狩猟に興味が出ましたら、ぼくの尊敬する人物である罠猟師、片桐邦雄さんも是非知ってほしいです!
以前クレイジージャーニー等何回かテレビ番組に出演されましたが、片桐さんの食材に対する姿勢、精神は素晴らしいです。
もしまだご存知ない方は「罠師」という本を読むか、Amazon primeビデオのカリギュラで「東野、猪を狩る!」でわかります。
食の恵みを豊富に頂ける秋の季節。
グルメ漫画といえば名店の美食を味わって食レポしたり、食材を調理して美味しそうな料理を作ったりする物語が大半ですが、それ以前の食材をどこから調達するか、またなぜ私たちは食べるのかを知ることはもっと大事だと思います。
今回紹介した漫画が、一人でも多くの皆さんに当たり前じゃない食の本質を見つめ直し、感謝につながるきっかけになってくださると嬉しく存じます。
「罠師」
「ラストハンター」
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