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ポルトガルのエッグタルトに魅せられた

ここ最近、食への興味が薄れてしまっているような気がする。

食べることは大好きなはずなのに、段々と食べたいものが浮かばなくなってきた。コロナで人とご飯を食べる機会が減った今、全部自分の意思でメニューが決まると思うと、考えるのも億劫になる。

特に自分では作れない外国料理は、もう最後に食べたのはいつだろうかと考えると、つい眉間に皺が寄ってしまう。スペイン料理、トルコ料理、タイ料理……食べたいなあ。甘いケーキだって、買ってきて家で食べるのも良いが、カフェで座って空間ごと嗜むのが好きだ。

旅では食は醍醐味のひとつ。現地ではなるべく毎日その土地ならではのものを食べたいと思っている。ご飯やスイーツ、旅先で口にして美味しいと思ったものは数多い。

そのなかで特に忘れられない味はポルトガル・リスボンで食べた、エッグタルトだろう。

ポルトガルには、友人といったスペイン旅行の後でもう少し休みが取れるという理由で1人フラッと行った。目的があったわけではなく、スペインから近いしこれを逃したらわざわざ行くことはないだろうと思ったから。(実際に行ったらすっごく楽しくて日数が全然足りなかった、ちゃんと行くのがおすすめ!もう一度絶対行く!!!)

ゲストハウスのスタッフさんに食べておいた方がいいものを聞いた時、絶対に食べるべき、と強くお勧めされたのが「Pasteis de Bêlem」というエッグタルト専門店。
ポルトガルではエッグタルトではなく、パステル・デ・ナタと呼ぶ。有名なのは知っていたが、具体的に何がそんなに有名なのかはよくわかっていなかった。

Pasteis de Bêlemは、パステル・デ・ナタの発祥の地らしい。リスボンの中心街から少し離れたベレン地区というところにある。トラム15番に乗って約20分くらい揺られていく。

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ちなみに私は路面電車が大好きだ。街の間をゆっくりと練り進む様子は見ていても愛おしいし、乗っていると気持ちがほっこりするから。東京でも、時々世田谷線に乗るときはウキウキしている。
そんな路面電車大好き人間だから、カラフルなリスボンの街並みや時々現れる海を眺めながら乗るトラムは、もう最高に心地よかった。

ジェロニモス修道院という名のバス停で降りると、きっとすぐにお店は見つかるだろう。パリッとした青い軒先テントの下には、一瞬気後れしてしまうほどにたくさんの人が並んでいる。これは一体買うのに何分かかるのだ……と絶望した。

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だが、列は早く進むのでご安心を。店の中に入ると、多くの店員さんが見事にお客を捌いていて、本当にスムーズに買えるのでぜひ行列を見て諦めない欲しい。

せっかく来たし、明日の朝ごはんにもできるかと思い、2つ買った。

気持ちの良い晴れ空だったので、横にある世界遺産ジェロニモス修道院でも眺めながら食べよう。ベンチに座り、甘い香りで一杯になった紙袋からひとつ取り出す。

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まだほんのり温かい。焼きたてだ!焼きたてというだけで、お菓子はいっそう贅沢になる。

ひとくちかじると、美味しすぎて全身にハッピーが走った。

外側は、パイ生地でパリパリっとしている。そして、中には甘くてまろやかで濃厚な、黄色いクリームがたっぷりと詰め込まれていた。パイ生地とクリームのハーモニーがたまらない。
こんな美味しいスイーツがあるなんて……。ほっぺが落ちそうとはまさにこのこと、というくらい本当に絶品。パステル・デ・ナタのお布団に包まれて眠りたい。

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ぺろっと平らげて、我慢ができずにもうひとつも続けて食べてしまった。

ああ、しあわせの味がする。口の周りにつく優しいクリームをペロリとする瞬間も愛おしい。

2つ食べて満足したと思った。しかし、翌日またあの味が食べたくなってしまったのだ。もうパステル・デ・ナタで頭は一杯である。もはや麻薬!

もう一度食べたい。できれば次は店内で食べてみたい。

この日はちょっと足を伸ばして観光をした後、夕方ごろにまたお店に向かっていた。テイクアウトとイートインは列が分かれているのだが、イートイン列もちょっと長い。これはすぐに席にはつけないかしら、と少しドキドキしたのだが、案外スルッと私の番に。

店内に入ると想像より広く、席数も十分にある。まるで大食堂のような広さだ。ファミリーや現地の若者らしきグループなどがわいわいとしている中、1人なので少しソワソワしながら空いている席につき、またこの日も2つオーダーした。

隣の若者グループが、チラチラとこちらを見てくる。1人だクスクス、とか思われているのかなと居心地悪くなりかけたところに、黄金のそれが私の目の前においでなすった。匂いを吸い込んだら、もう周りなんて気にならなくなる。

この日はテーブルに置かれているシナモンを振りかけてぱくり。ポルトガルでは、シナモンと砂糖をかけて食べるのが主流なんだそう。
まったりしたクリームにシナモンの香りが絡まり、ちょっと大人な味わい。これも美味である。一緒に頼んだブラックコーヒーをお供に、いくつでも食べられそうだった。

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お腹も心もパステル・デ・ナタで満たされたポルトガル旅行。
ひとつの地でこんなに同じ食べ物を、しかも食べ比べるわけでなく同じ店で食べたのは初めてだった。それでもまだまだ食べ足りないと思うくらい、私はその味に魅せられてしまった。

ポルトガルは人も優しく海も穏やか。美しい景色がたくさんあり、美味しいものにも事欠かない。全てが素晴らしい国であったと思う。

しかし、ポルトガルと言って私が一番に思い出すのは、トラムの旅の先にある、あの青いお店の小さな黄色い焼き菓子なのだ。もう一度、あの味を口にすることを願ってやまない。

ちなみに今あの味にすごく飢えているので……もし東京近辺であの味が食べられるところを知っている人がいたら、こっそり教えていただけたらすっごくハッピーです!!

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