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大人になっても、人生は辛い?

この日は仕事を終えて、家で缶ビールを飲みながら『REON』を観ていた。何度観ても当時13歳だったナタリー・ポートマンが醸し出す圧倒的な存在感には圧倒された。 3本目の缶ビールを取りに立ち上がろうとしたところでスマホの画面が光った。 「よってかえられへん、カラオケ、むかえチャリ」 LINEの通知画面にはこの文章が表示され、僕はLINEを開くかどうか躊躇した。正しい文章に変換すると、「カラオケで酔い潰れて帰れないから、チャリで迎えに来てくれ」という内容だったからだ。それにいつも

    • 言わないで……

      「中野で餃子を食おう」と元同僚からの誘いがあり、仕事終わりに中野に向かった。 店に入ると、カウンターのみの1階席は全て埋まっており、2階に案内された。 2階は2人掛けのテーブル席が2つの小さい空間で、1つのテーブルにはカップルらしき若い男女が座っていた。 僕達は空いている方のテーブルに座りとりあえずの生と枝豆を注文した。 彼はメニューを見ながら、「ここのしそ餃子がマジで美味いらしい。信頼できる情報筋からのネタだから間違いない」と言った。 「でも結局、王将の餃子が1番美味いよね

      • Dear Christmas

        「メリークリスマスって24日に言ってもいいの?24日はクリスマスイヴだから、本当は25日に使うべき言葉なんじゃない?」とバイト終わりの休憩室で三澤さんが言った。正直、心からどうでもいい疑問だったけれど、「確かにそうですよね〜」と適当に答えた。世間は、大衆は、メリークリスマスの使い方なんて頭の片隅にもなく、もはや24日と25日のどちらがクリスマスかも気にならないくらい、ハッピーでスペシャルでプレシャスな日なのだ。メリークリスマスなんて言葉はただの飾りで、弁当の隅に小さく入ってる

        • 無題

          お久しぶりです。 1時間ドラマの脚本を書きました。 誰にも頼まれていないのにです。 何してんだろ、と思いながらとにかく書きました。 ここで公開しようかと考えましたが、勿体無い気がするので、フジテレビかテレ朝かどちらかのコンクールに出そうかと思います。

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          あのさ

          「明日の夜空いてる?ちょっと話したいことがあって」 1週間ぶりのラインが届いた。十中八九別れ話だろうと思ったけれど、そこには触れずに、「空いてる」とだけ短く返した。「じゃあドライブしよう。仕事終わりだから21時頃くらいになると思う」とすぐに返信が来た。私は「了解」と返してそのままベッドに横になった。仰向けになりながら適当にネットニュースを読んでみたけれど、文章が全然頭に入ってこない。いつその時が来てもいいように心の準備はしてきたつもりだけれど、いざとなればやっぱり動揺してしま

          じゃあ、またね。

          「君は、今泣いてるんだろうね。気付いてやれなかったとかどうのこうの言って、馬鹿みたいに泣いてる姿が目に浮かびます。そんなに悲しまないで。って言っても意味ないか。この手紙のせいで、余計悲しくさせてしまってるかもしれないね。ごめんね。でも、そんなに悲しい事じゃないよ。どうせ数十年で、みんな同じところに行くんだから。あっ、君は道頓堀で拾った財布に入ってた4万円をごっそり抜いて、しめしめ顔でそのまま高級風俗に行くような男だから、同じところには行けないかもね。アイコスの吸い殻をゴミ箱に

          じゃあ、またね。

          団地

          5歳くらいの頃までは家族で団地に住んでいた。 元々はグリーンだったであろう外壁の塗装は剥げまくり、まだ名前のつけられていない色をしていたし、ボロボロのくせして棟の数と大きさで地域一帯に威圧感を与えるような、そんな団地だった。 近くのコンビニまで歩いて15分。 たしか、初めてのコンビニは近所の兄ちゃんのトシくんに自転車の後ろに乗せて連れて行ってもらったような記憶がある。 その頃のトシくんはたぶん高校生くらいだったけど、 学校にはいかずに団地の公園でよくタバコをふかしていた。

          ありがとう18歳の自分。ごめんな18歳の自分。

          久しぶりに、村上龍の「限りなく透明に近いブルー」を読もうと本棚の奥の方から取り出してページをめくったら、ボロボロの5000円札が出てきた。 全く記憶にない。この小説を読んでいたのは、たしか大学一回生の頃、当時の僕は5000円札を栞代わりにするほど懐に余裕があったのか。いや、間違いなくそんなことはない。人生のどの地点でも、そんな時期はなかったはずだ。 では、この5000円はなんだ。ふと、「どこかからくすねた金なのか?」と思ってしまったが、それもたぶん違う。自分はそこまで落ちぶ

          ありがとう18歳の自分。ごめんな18歳の自分。

          6ヶ月分の定期を無くしました

          腹が立つことがあったら、一つ良いことをする事にしている。 反対に良いことがあったら、何か自分に罰を与えるようにしている。 そうやってバランスをとらないと何だか気持ち悪く感じてしまうようになったのはいつからだろうか。 こんなに面倒くさい生き方しかできなくなってしまったのはいつからだろうか。 嫌な事が続くのはなんとも思わないのに、良い事が続くと不安になってしまうから、何も起こらないのが最も心地良い。 人も環境も目まぐるしく変わってしまう世の中だけど、いつも変わらないものを探して

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          心配の9割は起こらない

          居酒屋のトイレの前で我慢できずに噴射した後輩のゲロが、近くに座っていたマンバンヘアのヤンキーの彼女に降り注いだ。その光景を少し離れたところから見ていた僕の目には、さっき食べた坦々麺が生き生きと弾ける様がスローモーションのように映った。勢いよく立ち上がるヤンキーの彼氏。甲高い悲鳴をあげる彼女。ゲロまみれの床に倒れ込む後輩。すべてを達観したように見つめる僕。ヤンキーは怒鳴り声をあげる。「連れおるやろがぃ。早よ出てこんかい」掃除にかけつける店員。泣き出すヤンキーの彼女。それを達観し

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          成長には痛みが必要?

          まず、誤解のないように言っておきたい。 指導という名目で生徒を殴る教師を僕は肯定する訳ではない。 ただ、時として、痛みが人を成長させるという側面があるという観点から言えば、鉄拳制裁は必ずしも間違った指導ではないのではないかという考えがあるということだ。 もちろん、先日のニュースになっていた、頭蓋骨を骨折させたり、激昂して寝技で失神させたりみたいな行き過ぎたものは言語道断ではあるが。 中学生の頃、口よりも先に手が出てしまう同級生がいた。腕っぷしが恐ろしく強かったので、手を出

          成長には痛みが必要?

          ラーメン・ラプソディ

          この間二郎系ラーメンを食べに行った時の話やねんけど、次の日休みやったからオーダーでニンニク、野菜マシ、アブラマシで頼んだのにニンニク入ってなかってん。すぐ気付いて、あれ?ってなってんけど、二郎系って店員至上主義みたいなとこあるし指摘しにくいなと思いながら、恐る恐る「すいません」って言うて店員さんを呼んで、「ニンニク入ってないんですけど…」って言うたら、めちゃくちゃガン飛ばしながら「入ってます」って返されたから、「はぁ…すんません」て言うしかなくて、俺が見落としてるんかなと思っ

          ラーメン・ラプソディ

          恋焦がれたPS2

          幼い頃の僕にとって、家電量販店は遊園地や水族館よりも胸を躍らせる場所だった。 そこでは、当時喉から手が出て鼻から足が出て耳から内臓が出るほど欲しかったプレイステーション2が体験できたのだ。 サンタクロースにプレイステーション2をお願いをしていた2002年12月24日の夜は気もそぞろで寝付けずに何度も起き上がると、「寝えへん子にはサンタさん来やんで」と母親に言われて、それはまずいと掛け布団の中に潜り込んだ。 朝目覚めて枕元にあったリボンのついた袋をワクワクしながら開けると、中

          恋焦がれたPS2

          アルコール中毒

          玄関に入り、「あぁぁ…」と腑抜けた声を出して、両手に抱えた一週間分の食糧と日用品が入ったスーパーの袋をドサっと床に下ろした。 腕がジンジンと痛んで、手首は真っ赤に染まっている。 「なぁ、パンの袋くらい持ってーな。めちゃくちゃ重かったでこれ。両腕の血流が完全に止まってたもん…結婚式の時さ、楽しいことは倍にして、辛いことは半分にするって誓ったやん…」 僕は後ろで、ロングブーツを脱ぐのに手こずっている彼女に嘆いた。 「やいやい言いなや。男やろ?力仕事は男の仕事って昔からきまってんね

          アルコール中毒

          今年一年良かったなぁ。なんて思えたことは一度もないから、来年こそは…と祈ります。 皆さま、良いお年をお迎えください。

          今年一年良かったなぁ。なんて思えたことは一度もないから、来年こそは…と祈ります。 皆さま、良いお年をお迎えください。

          どぶ川育ち

          日本で最も汚いとされている川の近くで育った。 浅瀬では生活排水から生まれた汚い泡がブクブクと沸騰したように動いていて、腐った牛乳みたいな匂いがする川だ。 雨が降って水かさが増すと、付近一帯がドブの匂いに包まれる。 そんなだから、幼い頃は親達から、「あの川には絶対に入ったらあかん。あれはウンコより汚い川や。あんなとこ入ったら病気なるで」と口すっぱく言われていた。 小学生の頃の僕達は、「入るな」と言われれば言われるほど、入りたくなった。 好奇心は止められなかった。 ある日、5.6

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