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バナナマン設楽さんに助けられた話
大袈裟なタイトルを付けてしまって勘違いされないかドキドキしている。でもこのタイトルしか思い浮かばなかった。
他の人が読んでも大した話ではないかもしれない、とだけ前置きしておく。
十数年前、美術館の展覧会特設売店のバイトをしていた。社員さんはどの方も優しく楽しい人ばかりだったがその中でも特に1人、面倒見の良い男性社員さんがいた。
僕や多分他のみんなの事も、趣味嗜好を熟知していて別の地方へ出張に行っ
第六章 太陽の塔光発電所その3
不穏な噂と抗議についての話が、少しずつみんなの中に蔓延していき、日頃からの不満なども相まって、ある日爆発する。
それはしばらく休んでいた曽根崎(通称曽根ヤン)が復帰した日だった。
「おお、久しぶりやな。どうしとってん?風邪か?」
アキラにそう聞かれ曽根ヤンは曖昧に返した。
「え、あ、うんまあ」
なんだか挙動不審だ。しかも何か落ち込んでいる様子だ。
「どうしたんや?なんかあったんか?」
周り
第六章 太陽の塔光発電所その2
その日以来この顔の光は何なのか、という議論がなされた。しかし太陽の塔を作った張本人はもういない。分かりようがない。それよりもこの光を何かに利用できないかという話へと次第に変わっていった。
そして、この光をソーラーパネルにあて発電する、太陽の塔光発電所が作られた。発電所といっても顔からの光がしっかりあたる位置にソーラーパネルを設置しただけだ。
さすがに太陽と同じ光量なわけもないのだが、それでも昼
第六章 太陽の塔光発電所その1
万博記念公園のシンボル、太陽の塔には3つの顔がある。一つ目はもちろん、胴体の上、もう一つはお腹、そして背中。しかし、実は、あまり知られていないが当初は4つ目の顔があった。
それは塔の地下部分に設置されていたのだが、万博(もちろんこれは大阪での一度目の万博だ)の終了のどさくさで、どこかへ行ってしまったのだ。
それがひょんなことから、見つかり、塔へ返されることとなった。
大々的に発表されることも
第五章 宇宙エレベーター六代目通天閣その3
宇宙エレベーターはノボルが24歳の時に完成した。もちろんノボルも第一号の
お客様の一人として完成記念式典に招待された。
「カントク!」
呼ばれてノボルは振り返った。そこには懐かしい顔があった。現場で仲の良かったオッチャン達や、本物の初代現場監督だ。
「オッチャン!お久しぶりです。完成おめでとうございます」
「いやいや、俺らはもうとっくに引退して若いもんに任せたからな。俺らもおめでとうて言う側や」
第五章 宇宙エレベーター六代目通天閣その2
それからもノボルは毎日のように工事を見にやって来た。すっかりこの辺りでは有名人となり、新世界の住人たちからは「カントク」と呼ばれていた。この工事現場の特別顧問と言ったところだろう。
「よ、カントク。今日も出勤か」
「カントク、あとどれくらいで完成や?」
などと親しげに声をかけられ、ノボルもいつしかすっかりこの工事について詳しくなっていた。
そのうち観光で来た人たちに工事について説明するようにな
第五章 宇宙エレベーター六代目通天閣その1
初代通天閣はパリの凱旋門の上にエッフェル塔を合体させた節操のない塔であった。まことに大阪らしい。それが二代目、三代目と形を変え、そのたびに高くもなっていった。アベノのノッポビルを越えたのが五代目の時であった。そこまで高くなると、通天閣という名の通り、天への通路としての塔にしようという案が半ば冗談として囁かれ始めた。半ば冗談という事は、半ば本気なわけであって、実際宇宙エレベーターにしようという事が決
もっとみる第四章 天王寺パーク・ザ・ライドその3
次はどんな仕打ちが?とすら思っていただけに、何事も起こらない事に安堵していた子供でさえ堪り兼ね
「うわー退屈やー」と言い出した。そして鞄から4DSという携帯ゲーム機を取り出す。しかし当然水に濡れて使い物にならない。
「だから防水の方買ってって言うたのにー」と母親を責めている。
「なんでこんなトコ持ってくるのよ、高いのに壊して!」と母親も気が立っている。
確かに持ってくるのが悪いのだろうが、高いのに
第四章 天王寺パーク・ザ・ライドその2
代わり映えしない景色の中をゆっくり走るライドはやがて噴水の前にあるガラス張りの植物園まで来た。
「植物園やわ、乗ったまま見て回れるのと違うかしら」ハンカチを扇子に持ち替えて、噴水はなかった事のように優雅にヒラヒラとあおいでいる。
しかし、植物園は素通り。植物園の屋根の上を行く。屋根の下の植物がうっすらと見える程度だ。
「な、なんや入らんのかいな。まあ、これ入れよう思たら、植物園の上の方に入り口作
第四章 天王寺パーク・ザ・ライドその1
公園なのに入場料がいる。万博記念公園ならいざ知らず、天王寺公園、多少広いものの本当にただの公園である。中に美術館があるが、当然別料金だ。公園に用はなくても展覧会が見たい人はまず入場料を払って中に入り、美術館でもチケットを買わないといけない。理不尽だが二重にお金がいるのだ。
動物園も併設されていて、公園にいても動物達の声が聞こえてくるが、これも当然別料金だ。
しかし、そんな公園にも実はUSJばり
第三章 キタ流行発進基地その2
次の日、三十代男性カプセルを持って、また一行は屋上へやってきた。
「流行、発進!」
ボタンが押されるが、カプセルは飛び出さない。
「あれ?」三浦が何度か押してみるが、やはり全く反応がない。
「え。まさか」
部下がざわつく。
レイコが作った流行を機会が受け付けない。それはまさしくレイコの流行センスの衰えを意味していた。
「うそ、私…クビ?」
「でも!今レイコさんがいなくなったら誰が代わり出来るって
第三章 キタ流行発進基地その1
JR大阪駅周辺の再開発をきっかけに、幾度となく再開発が繰り返され、その度キタはウネウネと形を変えながら巨大化していった。
たくさんの商業ビルやホテル、駅、オフィスビルが渡り廊下で繋がり、やがてそれでは飽き足らず、繋がっている範囲がドンドン大きくなり、屋上はとうとう全てが一つの床として繋がり、高低差はビルごとにあるものの、まるで巨大なグラウンドのような面積になった。
渡り廊下の増加も加速度を増
第二章 大阪城外ホームランその3
夜に大阪城地下に忍び込んだ三人は、あの石垣の場所へ進んだ。
「大阪城に忍び込むなんて、なかなか泥棒としては大仕事やな」
チビは少し得意げだ。
それを聞いてテツはご先祖様との因果を感じていた。
ーあんたが忍びこんだ逢坂城、今俺も入ってるで。
懐中電灯で石垣を照らす。かんざしを取り出し、昼間と同じように差し込む。ゴゴゴゴという音だけが、気になるが警備員が来る様子はない。
石垣は振動し、やがて人