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そこまでヘタじゃないよね、慎吾ちゃん

あの日から今夜まで、いつも僕と一緒に駆け抜けた、フラット気味の決して音程のいいとは言えないナンバー  風見慎吾 Tokubai  For Life 1985

かなり以前、「そこまでヘタじゃないよね、トシちゃん」という記事を書きました。何がって、まぁお分かりかと思います。

トシちゃんは、歌手になりたいというよりスターになりたかったわけで、歌は手段。でも肩書は当然歌手だからそのためのレッスンを受け、努力もしたと思います。実際、かなりのレベルまで到達しました。

一方、慎吾ちゃん。たまたまテレビに出ることになり、お笑い番組でコントをやっていたら突然番組のために歌わされることになり、そのため歌のレッスンに通い始めたら欽ちゃんに「上手く歌おうとするな」とやめさせられ、歌手になる気なんてまるっきりなかったのにレコードを出すことに。

- 練習まったくなしのぶっつけ本番でレコーディングスタジオにやってきた風見慎吾クン。レ、レ、レコーディングなんて、もちろん生まれて初めての大事件。デビュー曲『僕笑っちゃいます』を最初はやたらとリキんで歌う慎吾クンに、突然、作曲の吉田拓郎サンは立ち上がる。-     shueisha  1983

oricon  1983

トシちゃんも慎吾ちゃんも喉が弱いタイプで声域が狭く乾いた声。歌唱力がないのは自覚があったと思う。トシちゃんは方々でさんざん揶揄されていたし、慎吾ちゃんも「恥ずかしくてたまらない」って。

「ああ、僕に歌唱力があったらいいなって思います。でも大将が言うんです。“歌うまくなろうとする慎吾ちゃんって大キライ。歌は自然に出てくるものよ” って。」 風見慎吾 shueisha  1984

だからふたりともトータルパフォーマンスの質を上げようと、歌のマイナスポイントを補って余りあるほどにダンスを磨いた。

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shueisha 1985

だけど慎吾ちゃんの場合、あれほど激しい動きだと息継ぎさえカツカツで、歌に全神経を注げない。

「 またヒットを出すためにファンから慎吾くんへ伝えたいこと、それは … せーのっ!  “フラット気味の音程を直す!”  」    慎吾ファン便り BP  1985

音程はあきらめてたけど   「歌」を捨ててたわけじゃない

For Life Records  1984 

「歌」を捨てたなんて言ってない

踊っているときは「正直、音程の方は捨てていた」んでしょうけど、歌を大切に大切に思いながらリズムとメロディーに乗り、独りきりで歌い切った。

一方グループ、例えば少年隊だったら「迷いこんだイリュージョン♪」ってニッキが歌っている間、他の二人は息継ぎできる。ヒガシの不安定さもユニゾンでごまかせる。視聴者が聞いているのは斉唱。

ソロとグループの一員じゃ負担が全然違う。ヒガシが著書で「やはり三人だと心強い。緊張も三分の一になる」と言うように。元シブがき隊の本木雅弘氏が当時を「ファンから受ける愛はその三分の一」と言うように。ソロだと会場に響き渡るのは終始自分だけの声。視聴者や観衆の視線を一身に浴びる。バックダンサーがいたとしても大衆が見るのはスター。緊張は倍増。

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 shueisha 1985

以前、例外的にニッキ取り上げたけど、本来は比較の対象にならない「唯一の主役」かどうかで、置かれている立場が全く違う。

慎吾ちゃんは、周りにハイハイと従ってさえいれば、4曲目は番組の計画通り穏やかな曲になって少ない負担で女の子にキャーキャー言われることもできたのに、新たなジャンルの導入を自ら大人たちに提案した。指導者もいないのにダンスを習得し振り付けも考えた。曲もプロデュースした。それにより、女の子だけではなくアイドルやダンスに興味のなかった男子たちの注目をも引き付けた。

「ボクは初めて大将にさからった。“やりたいことがあるんです、やらせてください”って。」     風見慎吾 shueisha  1985

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shueisha 1985

歌うつもりもアイドルになるつもりも、そもそも芸能人になるつもりさえなく、歌唱面でのマイナスポイントからのスタートだったのに、やるからにはと腹を括って未開の領域に挑戦し、ムーブメントを起こし日本にブレイクダンスを広めた。それは彼の覚悟によるもの。

番組の企画モノから始まった歌手活動だったのに、あそこまでやってのけたのは凄い力量だと思います。

全ての視線を身に受け勝負に出た。彼以降、ほとんどいないソロアイドル。

kazami shingo mid - コピー (2)
For Life Records  1985 

慎吾ちゃんの歌声、大好きです。若々しくて優しい気持ちになれるから。

変わってないのがひとつだけあるんです。昔をとどめているのが。フラット気味の音程。これはずっと不変です。 風見慎吾 Tokubai  For Life 1985