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隣には誰もいないけど、歌って踊った

ヒガシだけがなぜか中継先にいて、二か所に分かれて歌う少年隊の様子が某動画サイトにありました。『ふたり』1988で、ステージ上はニッキとカッちゃんの正に二人。

冒頭からソロ歌唱。カッちゃんの出だしに続いて中継先のヒガシが歌うのですが、声が裏返ってしまい会場では客席からドッと笑い声が起きて。本人はその場にいないので笑われたことに気づかなかっただろうけど、ステージ上のニッキが笑いをこらえていて、その様子がまた可笑しくて。でも直後、しっかりソロパートを歌い切ったニッキはさすがプロ

子どものころ、男性アイドルの歌のウマヘタを気にしていませんでした。だから、ヒガシには歌唱力があまりないと当時は気づかなくて。この映像に限らず、大人になって動画が普及して改めて見るようになって「あ、そうだったんだ」と。なるほど、いろんな曲でヒガシのパートは負担が少なめのところに配置されてる(一方『stripe blue』1987は冒頭からなかなか挑戦的)。でも優しい声だし、ほとんど三人で歌うからよく分かっていませんでした。何度も何度も書くように、マッチにはしょっぱなから驚かされましたが。

ステージで二人といえば、ヒガシとカッちゃんの二人で歌う貴重な映像もありました。『仮面舞踏会』1985で何かの音楽祭。ニッキは入院により欠場。彼のパートを二人で分け合って歌うのですが、ヒガシが緊張でガチガチ。途中で歌詞が追いつかず、終盤では息が上がってしまって「がなる」感じに。カッちゃんはわりと落ち着いていたけど。一人欠けたらこんなに違う。

本番は緊張したが、やはり三人だと心強い。緊張も三分の一になる。
(「夜のヒットスタジオ」出演時)  東山紀之『カワサキ・キッド』 2010年

彼らはたった一人で舞台に立つことはない。絶対に隣に誰かいる。ライブでソロ曲を歌ったとしても観客は皆ファンだから全員味方。大衆の前にたった一人で立つ、視聴者何千万人の視線を自分だけで受けるということはない。

植草「踊っている最中に緊張しちゃって真っ白になっちゃって、アレ? 何だったっけ振り、ってなっちゃうんですよ。」 
加賀「3人でよかったねえ。ソロだったらえらいことよ。」
植草「だから、二人より一歩下がって、二人の振りを見ながらやる。」
植草克秀 加賀まりこ 「夜のヒットスタジオ」 1990年5月16日

そこはマウンドではない。

☆彡

トシちゃんと慎吾ちゃんはただ一人のスターとしてステージに立っていた。全視線を一身に浴びて歌い、踊った。歌唱力を揶揄されてもダンスで息が切れても、ランキングや売上げが落ちても、その評価を誰かと分け合うことなく全て独りで負った。

自分自身の名を背負い マウンドに立っていた

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Oricon  1985

ステージに独りで立つアイドルは、もういないんじゃないかな。キラリ光る一番星を見ることは、もうないのかな。