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バク転できないジャニーズアイドルでも

80年代前半のソロ男性アイドルにこだわってつらつら書いてきました。主にダンス系アイドルについて。だから、いままでマッチ、近藤真彦クンについてはスルーしていましたが、なんといってもトシちゃんと二大巨頭で80年代を支えた存在。スーパーアイドルです。

ファンの方には申し訳ないけど、初めて彼をテレビで見たときは衝撃でした。「えー、こんな顔も良くない上にダミ声なのにどこがいいの?」って、子供心ながらに。『スニーカーぶる〜す』1980のときは、まだ顔もぷくっとしてニキビ面で、あの声にも抵抗があって、これでテレビ出たり歌ったりしていいの?って。しかもすごい人気だったから、世の中おかしいんじゃないかと本気で困惑していた小学生のころ。

そのうちマッチもだんだんあか抜けて男前となっていきましたが、当時から彼に対する意識はそんなになく、近年ネット動画で昭和を振り返られるようになるまで関心はありませんでした。

トシちゃんが軟派で王子様系(後年はオレ様キャラ)だと、マッチは硬派でヤンキー系。ちなみに後に、トシちゃん路線を少年隊、マッチ路線をシブがき隊が継ぐのですが。

硬派ヤンキー路線の特徴は「バク転をしない」。というか、できない。だからこの路線で行った、というわけではないのだろうけど、理由のひとつでもあるでしょう。シブがき隊もそうだし。男闘呼組も?

バク転ができないとダンス路線を取りにくいし、かといって特別な歌唱力があるわけでもない、となると、表現力となるわけです。ジャンプを武器としないフィギアスケーターが表現力で勝負するような感じ。じゃ何を表現するか、というとき、ヤンキー気質となるわけです。当時はヤンキーがかっこいいという風潮が強くありました。

その表現力が、マッチは抜群だったと思う。今振り返れば。「青いいな・づま~」とか「ギラリあ・ついぜ~ 太陽のリズム」とか、溜めがいい感じです。スターの自覚があってこその、なりきり歌唱です。照れて心の中で赤くなったりしない。「なんでオレこんなことやってんだろ」なんて思わない。臆面もなくシャウトする。「殺すんなら俺を殺せー!」と。あ、これは曲中じゃなかったか。

シブがき隊は、赤面しちゃうような「肉食系上から目線トンデモ歌詞」を歌っても3人で 'テレ' を分散できるけど、マッチは一人で負っていた。ダンスが激しくないぶん、表情やシャウトで勝負。少年期から青年期への移行もうまくできていて、『愚か者』1987とか『アンダルシアに憧れて』1989とかひとつの物語を見せてくれていたと言えます。

何が言いたいかというと、ソロアイドルは何かしらを武器に、一人身をさらし視線を一身に受けて勝負していたということ。特に当時はテレビの力が強い時代だったから、今と違って「国民」に見られるような存在だったので、その負担は計り知れません。当時アイドルをちょっと軽くみていたけど、今振り返ると本当に貴重で大変な存在だったんだなと思う。

ちなみにバク転、マッチだって歌わないときはなんとかできてて、全然できないわけじゃないのだけど、基本的にステージでは無理。ただ、アクロバットがダンスというわけではないし、トシちゃんだって初期以外はあまりしませんでした。