時をかけて 笑っちゃいます
前回、ダンス語りから脱線してしまったので、その勢いでまた脱線して80年代ソングを振り返ります。
以前、慎吾ちゃんと共に1983年夏の主役だったのは原田知世さんだと書きました。85年にかけてふたりが歌で活躍した時期が一緒。日本が一番キラキラしていた時代です。
このふたり、歌がヘタだとか言われていたけど、そもそも歌手じゃない。確かに歌唱力はないのでしょうが、当時特にそう思わなかったし、今もそう感じない。なぜなら、それを凌駕するほどの世界観を創っているから。
ふたりとも、もうなんと言うか、やりきれないほどに清々しく透明で、真っすぐで清涼で、けがれも疑いの欠片もない哀しいほどの少年少女の純粋さを体現しているのです。今振り返ると、かえって胸が掻きむしられるほどの。
『時を~』も好きですが、『天国にいちばん近い島』1984 を今聞くと、どうしようもなく切ない気持ちになります。当時この曲を好きだと思わなかったのに。知世さんのファンでもなく映画も観たことなく、彼女を可愛いとか美人だとか思ったことなかったけど、やはり特別なものを感じてしまう。遠くなった青春を振り返った時、そこで今も静かに輝いている水晶のような。
『早春物語』も当時はその良さがわからなかった。やっぱりまだ子供だったから。メロディーもだけど、「他のだれかに愛されるなら あなたのために悲しむ方がいい」という詩は少女の胸にはまだ響かず、淡い記憶。でも強烈に覚えているのは、この曲で紅白に出場した時の彼女。ウチの母が「何なの、あの化粧! 'おてもやん' みたい!」と笑い飛ばしたのが昨日のようです。
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永遠の爽やか振られソング『僕笑っちゃいます』。これ以上に少年の愚直な想いを表現した歌があるでしょうか。彼女といて僕はこんなにうれしい、きっと彼女も僕といてうれしいからこんな笑顔なんだ、と。青春とは、なんて自分本位の季節なのでしょう。
鮮やかにあの夏の風景を私たちのまぶたに映してくれるのです。