「頑張れ」という言葉に対する患者目線での想い

「頑張れ」って、よく患者には禁句って最近では言われてますよね。

でも、それは常に禁句ってわけではないと思います。

患者仲間同士でも、お互いを励ます時や気遣う時に、「頑張ろう」という言葉に代わる言葉がない時もあります。

ただ、それは今現在もお互いに頑張っているということを肯定し、同時に無理もせずにという意味の言葉も添える。

そう。

思いやりや労りを含み、それを言葉に出して表現した文の一部に他の言葉では代替できない「頑張ろう」のフレーズを含むことは、禁句ではなく、むしろ励まされる時もあります。

禁句なのは、精一杯頑張っている最中に、それを認識されずに追い討ちをかけられるかのような「頑張れ」だと思います。

これは、何も「頑張れ」という言葉だけを指しているわけではありません。

追い討ちをかけたり、鞭を撃つように受けろられてしまう表現が時に相手を傷つけ、追い込んでしまうのだと思います。

健康な友人や家族に「前だけを向いて」とか、「ネガティブなことは考えないようにしよう」と言われても、それが無茶な時もあるということは段々周知されて来たと思います。。

今まで頑張って受けて来た辛い治療もものすごく頑張っていたのに、効果が乏しくて「もうこれ以上闇雲に頑張り続けるのは辛い、でも生きたい。しかし、この辛さから解放されたい」という意味で、「これ以上の治療は受けなくていい」と口走った時に、「頑張って」とか「諦めないで」と言われるのと、励ましとお互いを気遣う時の「頑張ろう」とでは、大分ニュアンスが違うように思います。

同様に、「次の治療は(も)辛いけど」、「今もすごく頑張っているのは分かってるよ」、「少し休む時も必要だよね」、「こんなにあなたばかり再発・治療抵抗性・合併症が起きるのは不条理だね…」、「こんなにキツイ中よく耐えてると思うよ」

こういう気持ちもある中で、一言「頑張れ」と言われた時は、もう散々頑張っていて、もうさらに頑張れって、「いつまで?」「どこまで?」という気持ちも湧いてしまう時もあります。

こういう時は、「頑張れ」という言葉が何処か追い討ちをかけるような、重い・痛い言葉になってしまうこともあります。

逆に、その過去の頑張りも今の辛さも肯定されていれば、そしてそれを言葉で伝えてくれるのであれば、「頑張ろう」というのが支えになる時もあるでしょう。

「もっともっと生きたい」し「こんなところで諦めてたまるか!」と涙を堪えて、自分を奮い立たせている時に「頑張らなくていいんだよ」と言われてしまうと… 心の中の勇気や生きる希望を支えている細く爛れた糸が、プツッと切れてしまいかねません。

こういう時は、「僕も(私も)できることはやるから、『一緒に頑張ろう』」といったような言葉が重要な役割を果たすこともあります。

さらには、闘病の重荷を一緒に背負って助けてくれているという印象を与える使われ方もあるでしょう。

だから、どんな状況でも、常に「頑張る」という言葉が禁句な訳ではないのではないでしょう。

不自然に、無理矢理「頑張る」という言葉を避けているのがあまりにもあからさまだと、それもまた複雑な気持ちになる人や場面もあるかもしれません。

こういうのって、空気を読んだり、察っしたりするだけでは、上手い具合にバッチリ状況や心情が分からない時もあります。

いや、むしろ言葉を交わさなければ分からないことってとっても多いのではないかとも思います。

だからこそ、適切な会話が必要ではないでしょうか。

そして、だからこそ教科書的に、一律に「頑張る」という言葉は病人や怪我人には絶対的禁句ではないように思います。

オフシーズンの怪我と、甲子園直前の怪我では受け止め方が違うのと一緒です。

状況によっても、内容によっても、もちろん人によても受け止め方は違います。

心が状況を消化して、受け入れるのに要する時間も異なるでしょう。

質問さえるのがキツイ時もありますが、逆に質問された方が、お互いに考えを打ち明け、意識合わせや向く方向を同じにしていくことができることも多いでしょう。

辛い時はあっても、コミュニケーションは大切ですし、気にかけてもらって悪い気はしないことも多いと思います。

たとえ、目の前が突然真っ暗になったかのように感じたあの時は、言葉をかけられて衝突してしまっても。質問した時に、「見ていて分からないの?」と問われても。

「その津波のような事態が起こった直後は〜だったけど、今は」に、「衝突してしばらくして振り返ったら」、「あの時は自分のことで頭が一杯であなたもショックなのに気づけなかったけど」、「あの時言ってくれてありがとう」・「あの時聞いてくれてありがとう」なんてこともあると思います。

目の前のその人がどういう人で、どういう状況にあるのかに合わせて、「頑張る」を控えるか、別の言葉に置き換えるか、他の言葉を添えて言うのかなど、是非臨機応変に頑張れ」という言葉もそれに類似した表現も使ってください。

病気が有るということ自体は、別にそれだけでその人を常に腫れ物を扱うように接する理由にはなりません。

時には、特別なことなど何も言わず、今まで通りに、何もなかったかのように普通に接してもらえる事が一番嬉しい時もあります。

深刻な病気や怪我をしたその人も、あなたの知っているその人ですよ。

これも、私個人の意見ではありますが、大切な誰かになんて言ったらいいか分からない時に少しでも役に立てば幸いです。


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