note版 Exercises de Style

畠中実による文章の練習です。 *タワーレコードのフリーマガジン『intoxicate』…

note版 Exercises de Style

畠中実による文章の練習です。 *タワーレコードのフリーマガジン『intoxicate』が『musée』だった2001年から書いた原稿を中心に、20年分くらいのその他に寄稿した、あるいは未発表の原稿をあげています。サポートも受け付けています。

マガジン

最近の記事

Alva Noto 『UNIEQAV』

Alva Noto 『UNIEQAV』ライナーノート p*dis 2018年 *先日行なわれたアートフェア、Tokyo Gendaiで関係者招待パフォーマンスを行なったAlva Notoことカールステン・ニコライですが、演奏にはこのアルバムからの曲が多く取り上げられていました。アルバムは現在レーベル品切れ中、再プレス予定なしということで、許可を得て国内盤ライナーをこちらに再載します。 アルヴァ・ノトことカールステン・ニコライは、現代美術からクラブシーンにいたるまで、その多角

    • EDPS/BLUE SPHINX(1983)

      EATERファンページHP「極私的80年代ディスク・レヴュー」第四回、2000年 *EATERとは、1995年に創刊された、日本のオルタナティブ・カルチャーを扱う雑誌で、発行はテレグラフ・ファクトリー。80年代には「テレグラフ・レコード」という、日本における自主制作レーベルの先駆け的な存在だった。代表の地引雄一さんは、写真家であり、日本のパンク・ムーヴメントにおける東京の中心的な動向だった「東京ロッカーズ」に深く関わった方。そのEATERのウェブの中に「EATERファンペー

      • V.A. 《ホーンテッド・ウェザー》 compiled by David Toop

        デイヴィッド・トゥープ《ホーンテッド・ウェザー》日本盤(STAUB-JP 2 / HEADZ 26)ライナー・ノート *2004年に発表された、デヴィッド・トゥープの《Ocean of Sound》に続くコンピレーション第二弾のライナーノートです。国内盤はすでに廃盤のようで、Amazonでも高値がついているようです。 2000年の日本滞在をきっかけに執筆された同名の書籍にあわせてCDもリリースされた。そういう経緯もあり、日本のアーティストも多く取り上げられているのが特徴。

        • 「アンケート 私の好きな〈日本の〉一曲」 「ウルトラQ」メインテーマ/宮内國郎

          『STUDIO VOICE』302号(2001年2月) 特集「日本の作曲家——伊福部昭からコーネリアスまで」、インファス 1968年生まれの私は当然「ウルトラQ」を同時代的には体験していないが、小学生の頃に見た再放送は録音(ヴィデオがなかった)してよく聞きかえしていたのを思い出す。物語の導入部からこの曲がフェイド・インしてくると、映像のないことがかえって想像力を増長し、いつもぞくぞくした。それは、石坂浩二によるナレーション「あなたの眼はあなたの身体を離れてこの不思議な時間の

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        • ライナーノーツ
          4本
        • そのほかの原稿
          23本
        • 未発表その他の原稿
          7本

        記事

          タウン・アンド・カントリー インタヴュー

          『STUDIO VOICE』365号(2006年5月) タウン・アンド・カントリーの新作『アップ・アバーヴ』は、これまでの作品に顕著な反復やドローンを基本にしながらもモダンで洗練された楽曲から、ジャケットも含め、一種サイケデリックにレイド・バックしたものへと変わった。 3月1日に品川教会で行なわれたコンサートでは、CDでの作曲されたものとはやや趣を異にして、本人たちも言うように、以前のライヴよりも即興の余地を作ったスポンテニアスな演奏が披露された。また、観客をステージに上

          タウン・アンド・カントリー インタヴュー

          Alva Noto 『For 1 + 2』

          Alva Noto 『For 1 + 2』 ライナーノート impartment 2010年 *本文にあるとおり、アルヴァ・ノトことカールステン・ニコライが、リチャード・シャルティエのレーベルLINEからリリースした作品。国内盤がシリーズの作品を2枚カップリングした仕様でリリースされたが現在は廃盤。そのライナーノートを書いた。自分で言うのもなんだが、いい解説と思うのでここに再掲します。 アルヴァ・ノトのCD『For』は、2006年にアメリカのサウンド・アーティスト、リチャー

          「現代への扉 実験工房展 戦後芸術を切り拓く」

          メディア芸術カレントコンテンツ 2013年03月29日更新 実験工房は、終戦後1940年代後半からそれぞれに交流のあった、造形作家の北代省三、福島秀子、山口勝弘、作曲家の鈴木博義、武満徹、音楽批評家、詩人の秋山邦晴、エンジニアの山崎英夫らが集まり始まった。当初は、北代によってグループとしての活動を視野に入れ、「アトム」と命名されていたという。そして、1951年に最初のグループとしての活動である、日比谷公会堂で行なわれた「ピカソ祭」におけるバレエ《生きる悦び》の上演の際に、詩

          「現代への扉 実験工房展 戦後芸術を切り拓く」

          HIDDEN MASTERPIECE(埋もれた名作500選)           Walter Steding(Red Star)1980

          『STUDIO VOICE』 2009年8月号 *STUDIO VOICE誌の企画、埋もれた名作500選で、私も、これは埋もれた名作だろうという一枚を選んだ。文章にあるように、「迷盤」という感じではあるのだが、これはこれで愛着のある一枚でもある。 1980年、スーサイドでも知られるレーベル、RED STARからブロンディのクリス・スタインのプロデュースによって制作された、ヴァイオリニスト、ウォルター・ステディングのアルバム。ロバート・フリップやテレヴィジョンのリチャード・ロ

          HIDDEN MASTERPIECE(埋もれた名作500選)           Walter Steding(Red Star)1980

          オノ・ヨーコのアート

          『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年11月号 ショーン・レノンの母、ジョン・レノンの妻でありパートナーであるオノ・ヨーコは、それ以前にアーティストとして60年代初頭から前衛芸術運動であるフルクサスの一員としても活動していた。ジョン・レノンとの出会いも、1966年にロンドンのインディカ・ギャラリーでの個展『未完成の絵画とオブジェ』を、そのオープン前日にレノンが訪れたことがきっかけになっていることはよく知られている。天井に据えられたキャンヴァスに書かれた小さな文字を

          オノ・ヨーコのアート

          音楽(体験)と美術(鑑賞)のあいだ

          『大友良英 音楽と美術のあいだ』展 会場テキスト 2014年11月 *2014年にICCで行なわれた『大友良英 音楽と美術のあいだ』展は、2008年に山口情報芸術センター(YCAM)で行なわれた展覧会「大友良英 / ENSEMBLES」において委嘱制作された《quartets》の再展示と、新作の《guitar solos 1》によって構成された。タイトルは、前年に逝去された後々田寿徳さん(多摩美の先輩であり、ICCでの先輩でもあった)の書いたエッセイ「美術(展示)と音楽(公

          音楽(体験)と美術(鑑賞)のあいだ

          マクルーハンはメディア・アートを予見したか

          未発表 2011年8月 *2011年、マーシャル・マクルーハンの生誕100周年にちなんで特集された某書籍のために依頼された原稿だったが、1日まにあわずに不掲載の憂き目にあった。写真は、文中で言及されている、エキソニモのインスタレーション、《SUPERNATURAL》(撮影:木奥恵三)で、ICCの展覧会「みえないちから」(2011)の出品作品でした。 マクルーハンは60年代には電子メディアの革命的な性質にいち早く着目し、ニュー・メディアとしてのテレビの時代のヴィジョンを提示

          マクルーハンはメディア・アートを予見したか

          イーノ・ハイドのめざす「ライクティ」の世界——スティーヴ・ライヒとフェラ・クティのデペイズマン

          High Life/Eno・Hyde (BEATINK) 宣材冊子 2014年6月 イーノ・ハイドの二作目が早くもリリースされる。前作、というにはあまりにもまだリリースされたばかりの新作と言うべき『Someday World』は、二人のコラボレーションの成果として充分な内容を持っていたし、新しいユニットとしてのオリジナリティをすでに確立されたものでもあった。それはかつてのイーノによるコラボレーションがそうであったような、その組み合わせでしかあり得ない、アーティスト同士による

          イーノ・ハイドのめざす「ライクティ」の世界——スティーヴ・ライヒとフェラ・クティのデペイズマン

          10年後のフェノバーグ

          フェノバーグ『マジック&リターン』(P-Vine)ライナーノート 2009年6月 *文中にもあるように、フェノバーグの1stと2ndをカップリングしたCDのライナーノートです。CDの方は現在廃盤のようなので、こちらに掲載してみます。 フェノバーグとは、言わずと知れた、クリスチャン・フェネス/ジム・オルーク/ピーター・レーバーグの3人によるユニットである。今はもうずいぶんと昔のことになるが、彼らは10年前の1999年1月に来日し、東京・初台のNTTインターコミュニケーション

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          カールステン・ニコライ オラフ・ベンダー  ラスターノートン インタヴュー

          『STUDIO VOICE』 2009年3月号 フランク・ブレットシュナイダー、オラフ・ベンダー、カールステン・ニコライの3人が1996年にスタートしたふたつのレーベル。エレクトロニック・ミュージックに特化したraster musicと、そのサブ・レーベルとしてニコライの運営するサウンド・アートや実験的傾向の作品をリリースするためのnotonが、99年に合併したのが現在のラスターノートンである。 レーベルを立ち上げる以前の80年代後半、彼らが多大な影響を受けた音楽は、スロ

          カールステン・ニコライ オラフ・ベンダー  ラスターノートン インタヴュー

          HOSONO DISCS

          『STUDIO VOICE』2008年9月号 特集「細野晴臣の楽しみ方!」 INFAS はっぴいえんど『はっぴいえんど』 当時、論争にまで発展した、所謂「日本語によるロック」の嚆矢。そうした反応は、日本における米英産ロックの受容とは相容れない言葉による世界観が歌われた違和感に起因するのだろう。『風街ろまん』と比較すれば、まだ言葉や歌は攻撃的で、サウンドもよりロック的だ。唯一細野作詞になる「飛べない空」はそうした違和感の吐露のようにも聞こえる。 高田渡『Fishin’ on

          ニック・ドレイク『ブライター・レイター』

          200ロック人名事典(立風書房200音楽書シリーズ) 執筆者あとがき 2001年7月 *2000年代の前半、この手のディスクガイド本に何冊か参加した。もう20年以上も前のことなのかと驚きを禁じ得ないが、その最初の1冊が『200ロック人名事典』だった。200という数字にどういうこだわりがあるのかよくわからない。その後、プログレッシヴ・ロック、エレクトロニカ、ロック・ギタリスト、と続いたが、知り合いの編集者の退社などによって、そこで打ち止めとなった。 この短文は、巻末の執筆者紹

          ニック・ドレイク『ブライター・レイター』