note版 Exercises de Style

畠中実による文章の練習です。プロフィールはベルリンにデヴィッド・ボウイの住んでいた家を…

note版 Exercises de Style

畠中実による文章の練習です。プロフィールはベルリンにデヴィッド・ボウイの住んでいた家をたずねたクマです。 *おもにタワーレコードのフリーマガジン『intoxicate』が『musée』だったころの2001年から書いた原稿を順番にあげてます。ほかにも原稿をあげていく予定です。

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音楽(体験)と美術(鑑賞)のあいだ

『大友良英 音楽と美術のあいだ』展 会場テキスト 2014年11月 *2014年にICCで行なわれた『大友良英 音楽と美術のあいだ』展は、2008年に山口情報芸術センター(YCAM)で行なわれた展覧会「大友良英 / ENSEMBLES」において委嘱制作された《quartets》の再展示と、新作の《guitar solos 1》によって構成された。タイトルは、前年に逝去された後々田寿徳さん(多摩美の先輩であり、ICCでの先輩でもあった)の書いたエッセイ「美術(展示)と音楽(公

    • マクルーハンはメディア・アートを予見したか

      未発表 2011年8月 *2011年、マーシャル・マクルーハンの生誕100周年にちなんで特集された某書籍のために依頼された原稿だったが、1日まにあわずに不掲載の憂き目にあった。写真は、文中で言及されている、エキソニモのインスタレーション、《SUPERNATURAL》(撮影:木奥恵三)で、ICCの展覧会「みえないちから」(2011)の出品作品でした。 マクルーハンは60年代には電子メディアの革命的な性質にいち早く着目し、ニュー・メディアとしてのテレビの時代のヴィジョンを提示

      • イーノ・ハイドのめざす「ライクティ」の世界——スティーヴ・ライヒとフェラ・クティのデペイズマン

        High Life/Eno・Hyde (BEATINK) 宣材冊子 2014年6月 イーノ・ハイドの二作目が早くもリリースされる。前作、というにはあまりにもまだリリースされたばかりの新作と言うべき『Someday World』は、二人のコラボレーションの成果として充分な内容を持っていたし、新しいユニットとしてのオリジナリティをすでに確立されたものでもあった。それはかつてのイーノによるコラボレーションがそうであったような、その組み合わせでしかあり得ない、アーティスト同士による

        • 10年後のフェノバーグ

          フェノバーグ『マジック&リターン』(P-Vine)ライナーノート 2009年6月 *文中にもあるように、フェノバーグの1stと2ndをカップリングしたCDのライナーノートです。CDの方は現在廃盤のようなので、こちらに掲載してみます。 フェノバーグとは、言わずと知れた、クリスチャン・フェネス/ジム・オルーク/ピーター・レーバーグの3人によるユニットである。今はもうずいぶんと昔のことになるが、彼らは10年前の1999年1月に来日し、東京・初台のNTTインターコミュニケーション

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        • そのほかの原稿
          18本
        • 未発表その他の原稿
          6本

        記事

          カールステン・ニコライ オラフ・ベンダー  ラスターノートン インタヴュー

          『STUDIO VOICE』 2009年3月号 フランク・ブレットシュナイダー、オラフ・ベンダー、カールステン・ニコライの3人が1996年にスタートしたふたつのレーベル。エレクトロニック・ミュージックに特化したraster musicと、そのサブ・レーベルとしてニコライの運営するサウンド・アートや実験的傾向の作品をリリースするためのnotonが、99年に合併したのが現在のラスターノートンである。 レーベルを立ち上げる以前の80年代後半、彼らが多大な影響を受けた音楽は、スロ

          カールステン・ニコライ オラフ・ベンダー  ラスターノートン インタヴュー

          HOSONO DISCS

          『STUDIO VOICE』2008年9月号 特集「細野晴臣の楽しみ方!」 INFAS はっぴいえんど『はっぴいえんど』 当時、論争にまで発展した、所謂「日本語によるロック」の嚆矢。そうした反応は、日本における米英産ロックの受容とは相容れない言葉による世界観が歌われた違和感に起因するのだろう。『風街ろまん』と比較すれば、まだ言葉や歌は攻撃的で、サウンドもよりロック的だ。唯一細野作詞になる「飛べない空」はそうした違和感の吐露のようにも聞こえる。 高田渡『Fishin’ on

          ニック・ドレイク『ブライター・レイター』

          200ロック人名事典(立風書房200音楽書シリーズ) 執筆者あとがき 2001年7月 *2000年代の前半、この手のディスクガイド本に何冊か参加した。もう20年以上も前のことなのかと驚きを禁じ得ないが、その最初の1冊が『200ロック人名事典』だった。200という数字にどういうこだわりがあるのかよくわからない。その後、プログレッシヴ・ロック、エレクトロニカ、ロック・ギタリスト、と続いたが、知り合いの編集者の退社などによって、そこで打ち止めとなった。 この短文は、巻末の執筆者紹

          ニック・ドレイク『ブライター・レイター』

          リアルタイムであることとはなにか——放送および通信テクノロジーが媒介するイヴェント、その意義と可能性

          『Technology×Media Event』 2018年10月13日発行 日本電信電話株式会社 2018年にICCで開催した、特別展 OPEN STUDIO リサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC「“感じる”インフラストラクチャー 共感と多様性の社会に向けて」に際し、展覧会会場で配布された、立命館大学の飯田豊さんとの監修による小冊子『Technology×Media Event』に寄稿したもの。 2016年、リオ五輪閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニー

          リアルタイムであることとはなにか——放送および通信テクノロジーが媒介するイヴェント、その意義と可能性

          私が好きな坂本龍一10選(にあやかって)

          1月17日は坂本龍一さんの誕生日であり、2023年1月17日は、坂本龍一さんの新作『12』の発売日でもありました。 そこで、commmonsのウェブで連続掲載中の企画「10 Favorites – Ryuichi Sakamoto 私が好きな坂本龍一10選」にあやかって、勝手に自分の10曲を選んでみることにしました。 じつはICCもふくめて自分史のいろんなところに坂本さんがかかわっているな、とあらためて思う。ICCでは、2005年にICCの存続についてご支援いただいたのをは

          私が好きな坂本龍一10選(にあやかって)

          未来の芸術家 真鍋大度のこれまでとこれから

          *中国伝媒大学(Communication University of China)インターメディア芸術研究センターでの、真鍋大度さんによるパフォーマンスとテクノロジーについてのオンライン授業の開講にあわせて、テキスト「未来的艺术家——真锅大度」を寄稿しました。中国語に翻訳されたもののオリジナル日本語テキストです。 2022年7月15日公開 https://mp.weixin.qq.com/s/JKBP_lVGW4dsb9sZSWsCZQ?fbclid=IwAR0B8SZjk

          未来の芸術家 真鍋大度のこれまでとこれから

          「Dark Room filled with Light」screening by 生西康典+掛川康典+永戸鉄也 soundtrack by Filament(Sachiko M、大友良英)

          『FADER』11号(2005年)、HEADZ  この企画の話を最初に聞いた時に真っ先に想像したのは「退屈さ」だった。もちろん否定的な意味ではない。「光で満たされた暗室」というタイトルから、微弱音と真白に反射する(だけの)スクリーンによる最小限の、非常にミニマムな表現を想像していたのかもしれない。当日は各回三〇名限定の二回公演で、その二回目を体験したのだが、最大の心配は睡魔との戦いになるのでは、ということだった。もちろんそれは杞憂に終わったが、実際に、開演前の主催者による前

          「Dark Room filled with Light」screening by 生西康典+掛川康典+永戸鉄也 soundtrack by Filament(Sachiko M、大友良英)

          田中功起「買物袋、ビール、鳩にキャビアほか」

          *2004年11月に群馬県立近代美術館で開催された、田中功起「買物袋、ビール、鳩にキャビアほか」の展評。当時、某誌にレギュラーでレヴューの枠をもらっていて、そのために書いたものだったが、掲載予定号の発行が遅れ、そのままお蔵入り、未発表となった。  なんという即物的な展覧会タイトルだろう。しかし、この言葉の並びは一体なにを意味するのか。と、考え始めるとすでにそれは田中功起の術中にはまっているのかもしれない。田中はこれまでに国内外の展覧会に数多く出品している若手アーティストだ。

          田中功起「買物袋、ビール、鳩にキャビアほか」

          ポル・マロ「Sketchy Pop-Ups」

          『FADER』10号(2004年)、HEADZ  ポル・マロに《Found Installation》という写真作品がある。そこには淡路島の海岸に捨てられ、放置されたゴミがただ写っているだけである。しかし、「見出されたインスタレーション」というそのタイトルの通り、この日常の端にあるような風景の一部である無作為に投げ出されたに違いないゴミは、ポルの視線によって切り出されてインスタレーションのようにどこか意図的に作られたもののような佇まいを見せている。つまり、積極的に「見出す」

          ポル・マロ「Sketchy Pop-Ups」

          夏のフェイヴァリット3+3

          『FADER』8号(2003年)、HEADZ ※2002年7月10日脱稿  夏はあまり好きじゃない。とにかく暑いのが苦手で。それに比べたら冬は上着に凝ることだってできるし、寒いのには強いのだ。でも夏もそんなに悪くない。あのじりじりと照りつける強烈な陽光に熱されたアスファルトから立ち上る熱気に蜃気楼みたいに歪む風景の中を歩くこととか、あるいは、ときおり吹き抜ける風にそよぐカーテンとか、どこまでも高い空と入道雲とか、西瓜とか、昼寝とか居眠りとか、この季節に好きなものも多い。冬

          夏のフェイヴァリット3+3

          Sachiko M——I'm here

          『FADER』9号(2004年)、HEADZ  この展覧会は、Sachiko Mにとって初めてのインスタレーション作品の展示である。  会場に入ると、左右の壁面の一メートル八〇センチくらいの高さに、ふたつのスピーカー(ツイーター)が一メートルほどの間隔をあけて、対面するのではなくややずれて設置されている。また、ちいさな机に乗せられ、アクリル・ケースの中に収まった、サンプラー、オシレーター、ミキサーといった彼女の機材たちがスペースの中央に置かれている。電源コードは繋がれておら

          Sachiko M——I'm here

          『NO NEW YORK』覚書

          『NO WAVE——ジェームス・チャンスとポストNYパンク』エスクァイア・マガジン・ジャパン、2005年  『NO NEW YORK』よりも先にコントーションズの『BUY』を聴いたような気がする。もちろんリアルタイムではない。フリクションのレックやチコ・ヒゲといった日本のミュージシャンがメンバーだったバンドということやブライアン・イーノのプロデュースということで、すでに伝説の一枚として僕の中で位置づけられていた『NO NEW YORK』は、しばらく手に入れることはできなかっ

          『NO NEW YORK』覚書