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【情熱】映画『パッドマン』から、女性への偏見が色濃く残る現実と、それを打ち破ったパワーを知る

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「生理用ナプキン」の開発に挑んだインド人男性の実話から、「誰かのための人生」を考える

何も知らずに観ても非常に面白い作品だが、この作品の一番の凄さは、実話を基にした物語という点にある。

2時間20分の映画はほぼ全編、生理用ナプキンを開発する”だけ”で終わる。しかし最終的に「国連」まで登場するほどスケールは大きい。

さらに、この物語の舞台が2001年であることにも驚かされた。まずはその辺りの「前時代感」について説明することにしよう。

「2001年のインド」が舞台であることに驚愕させられる

舞台は、2001年のインド。たかだか20年ほど前の話だ。それにしてはあまりにも「前時代的」すぎて驚いた。

物語の舞台は恐らく、インドの田舎なのだろう。都会も同じ状況だとはとても思えないが、しかし田舎の話だとしてもびっくりだ。なにせ2001年当時、インドの女性は生理期間中、5日間も「家の外」で過ごさなければならない、というのだから。

「生理」は”穢れ”と呼ばれ忌み嫌われている。話題に出すことも憚れる雰囲気があり、生理になった女性は、とにかく有無を言わさずに建物の外に出て時が過ぎるのを待つしかない。

100歩譲って、「外で過ごさなければならないこと」を許容するとしても、「出血を拭うのが汚れた布である」という事実は受け入れがたい。それどころか、灰・砂・枯葉などに経血を吸収させることもあるのだという。なかなかに衝撃の実態だ。

この映画の主人公であるラクシュミ(モデルになったのはムルカナンダムという人物だが、映画では名前が変わっている)は、妻が汚れた布を使っていることを心配した。医者に聞くとやはり、灰や汚れた布を使えば病気になる可能性は高まるし、不妊になるケースだってあるという。

実情を知ったラクシュミは薬局で生理用ナプキンを購入するが、55ルピーもした。調べてみると、日本の価値で考えた場合1000円程度になるという。庶民にはとても手の出ない高級品であり、妻が高すぎるから返品してきてと言うほどだった。

これがこの映画の舞台である。そしてラクシュミは、周囲の猛反対を押しのけて「安価で手に入る生理用ナプキン」の開発に挑み、副題の通り「5億人の女性を救った」のだ。

現代においても、迷信や信仰などにより、まったく不合理でしかない考えが定着していることはあるだろう。この映画を観ながら私は、以前なにかで見聞きしたアフリカの話を思い出した。いつの時代のことか忘れたが、エイズが蔓延するどこかの国でコンドームの使い方を教える講習を行っていた時の話だ。

講習では実際にコンドームの装着を実演するわけにはいかないので、指にはめて使い方を説明した。しかしその講習を受けた人は、「指にはめればエイズにならない」と、まるでおまじないのようなものだと受け取り、結果的にその講習はまったく意味をなさなかったという。我々からすれば笑い話にしか思えないが、それぐらい物事の捉え方には差があるというわけだ。

もちろんこのようなことは、決して発展途上国だけの問題ではないだろう。例えば、先進国であればあるほど、様々なダイエット法が日々生まれては消えていく。冷静に考えれば、「適切に食べ、適切に運動する」以外のダイエット法など存在しないだろう。しかし皆、「少しでも楽に痩せられる方法があるはずだ」と信じたいと思っているし、だからこそ正攻法ではないやり方に色々と手を出しては恐らく失敗している。

私からすれば、「生理を”穢れ”と呼んで邪険に扱うこと」と「手当たり次第様々なダイエット法を試すこと」に大差はない。「インドはなんて遅れてるんだ」と受け取るだけでは何の意味もないと思う。

自分が「当たり前だ」と考えていることが、外から見ればまったく当たり前ではないという状況は多々あるものだ。自分のこととなるとなかなか客観視しにくいが、この映画をきっかけに立ち止まって自分の振る舞いに気をつけてみるのもいいだろう。

主人公の「行動力」と「ある決断」が凄まじい

さて、先程少し触れた通り、ラクシュミは妻のために生理用ナプキンの開発を決意をする。

しかしこれは、田舎で大騒動を巻き起こしてしまう。

そもそも「生理」は”穢れ”、つまりタブー扱いである。女性同士でさえそうなのだから、「生理」について男性が言及するなどまずあり得ない話だ。しかもただ話題に出すだけではなく、生理用ナプキンを作るというのである。ラクシュミは自分で使用感を試せないのだから、当然、誰かに使ってもらうしかない。

もちろん最初は妻に頼んだ。しかし妻は、数回使って止めてしまった。作り始めたばかりで出来が良くなかったからだ。それを知ってラクシュミはさらに改良に取り組むのだが、改めて妻に使ってもらえるよう頼むと、「生理を話題にすること自体が恥だから、もうそんなことに関わらないでくれ」と拒否されてしまう。

しかしラクシュミは諦めない。医大の女学生に話を持ちかけたり、初めて生理を経験する近所の女の子に自作のナプキンを渡したりしていたのだが、そんな行動が噂となって広まり、ラクシュミは「イカれた人物」と見なされてしまうことになるのだ。

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