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【未知】「占い」が占い以外の効果を有するように、UFOなど「信じたいものを信じる」行為の機能を知れる映画:『虚空門GATE』

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「『否定されたという状態』に絶対に達しない」というメリットが強く理解できる、UFO愛好家たちを描く映画『虚空門GATE』の面白さ

『虚空門GATE』は、誘われて観に行った映画である。正直に言えば、まったく期待していなかった。UFO愛好家を扱った映画だという点に興味が持てなかったし、また、詳しくは触れないが、その映画を観るに至った経緯にも少し「胡散臭さ」を感じる部分があり、観る前は結構、「大丈夫か?」という気持ちを強く抱いていたのだ。誘われなければまず観ることがなかった映画だろう。

「大丈夫か?」という感覚は、映画が始まってからもしばらく続いた。UFOや宇宙人を信じる者たちが、UFOの撮影に繰り出したり、「月面で発見された異星人の遺体」に関して自説を述べたりしている間は、「やっぱりヤバい映画を観に来てしまったか」という風にしか感じられなかったのだ。

ただ途中から、物語のテイストがガラリと変わる。そしてその辺りから、「なるほど、これはUFO愛好家の話ではないのか」とという感覚になっていくのだ。そうなってからの展開には、かなり興味が湧いた。冒頭からちょいちょい登場する庄司哲郎という俳優が、物語の途中で一気に中心人物に躍り出るのだが、そのきっかけの1つがなんと「覚せい剤取締法違反の疑いによる逮捕」なのである。

映画は最終的に、「庄司哲郎という人物を多面的に捉える作品」という形へと収斂していく。彼はなかなか不思議な存在だ。結果として「嘘ばかりついていた」ことが判明する庄司哲郎には、普通の社会ではまず許容されないだろう「胡散臭さ」が常時つきまとっている。しかし一方で、その「胡散臭さ」は「UFO愛好家」という集団においては成立し得るのだ。

その最大の理由は、「UFO愛好家のコミュニティには、『否定する・される』という土壌が存在しない」という点にあるのだと私は感じた。

「UFO」に限らず、陰謀論やツチノコなど、色んなタイプの「未知のもの」を信じる人が世の中には存在する。信じる信じないはもちろん個人の自由だし、その点に私の関心はない。一方私は、「『未知のもの』を信じること」にどんな効用があるのかについて、この映画を観て改めて考えさせられたし、実に興味深いと感じた。その辺りのことについて、以下色々と書いていきたいと思う。

「占い」というシステムが持つ見事な機能

私は占いも宇宙人の乗り物としてのUFOも信じていない。一方で、「占いを信じる人」や「UFOを信じる人」のことは興味深い対象だと思っている。科学を信じている私からすれば、「占いやUFOのようなよく分からないものを、どうして信じられるのだろう?」と感じてしまうし、その感覚自体は理解してみたいと思う。

そして、そんな風に考えていたからだろう、「なるほど、占いにはこんな見事な機能があったのか」と感心させられたことがあった。

私はこ観ていないのだが、「芸能人を突然占う」というテレビ番組がある。その番組についてのネット記事をなんとなく読んでみたことがあるのだが、その記事を読んで私は「占いの機能」を理解することができた。

記事で取り上げられていたのは、有名なアイドルグループに所属していた女性。そしてその女性が、「占い師に当てられたから仕方なく話す」という感じで、「『恋愛禁止』のルールが生まれたのは自分のせい」だと暴露していたのだ。所属した当初は「恋愛禁止」というルールはなかったが、自分が恋愛のことでグチャグチャしてしまい。そのことでグループに悪い影響をもたらしてしまったため、「恋愛禁止」というルールが作られるようになったのだ、と語っていた。

このエピソード、「占い」というシステムのお陰で実に上手い形で表に出てきた話だと私は感じる。既にアイドルを卒業しているとはいえ、「自分のせいで『恋愛禁止』というルールが生まれた」という話を自分から口に出すのはなかなか難しいように思う。アイドル時代からずっとファンでいてくれる人もいるだろうし、であれば、「恋愛でグチャグチャしていた過去がある」と話すことは、今応援してくれているファンを自分から傷つけにいくような行為と受け取られかねないからだ。

また、「彼女のせいで『恋愛禁止』というルールが生まれた」という話は、一般的には知られていない事実であり、トーク番組などでMCが話を促すことも不可能である。自分から話をすることはできず、誰かに話を振ってもらうことも期待できない。彼女のこのエピソードは、まさにそのような類いのものと言っていいだろう。

そしてだからこそ、「占い」というシステムが絶妙に機能する。占いを信じている方には申し訳ないが、普通に考えてあの占い番組では、「芸能人に関する情報をマネージャーなどが事前に占い師に伝えている」と考えるのが妥当だろう。そして、そんなことをする理由は、「『占い師に見透かされたから仕方なく話す』というテイ」を上手く利用したいからだと思う。芸能人には「自分から話せず、話を振ってもらうことも期待できないが、世間の人に言っておきたい話」があり、占い師には「『誰も知らなかった話を占いで見抜いた』と演出できるメリット」がある。つまり、芸能人にとっても占い師にとってもウィンウィンのシステムというわけだ。

このシステムに気づいた時、上手く出来てるなぁと感じさせられた。

確かにこれは「芸能人と占い師」という特殊な事例であるが、一般の人を占う場合でも状況はさほど変わらないはずだ。もちろん、「あらかじめマネージャーが情報を伝える」みたいなことは出来ない。しかし、巧みな話術で相談者に「あなたのことは分かっている」と思わせることができれば、相談者も「普段人には言えない悩み」を「『見透かされたから仕方なく』というテイ」で口にしやすくなるだろう。「悩み」というのは、「言葉にすること」「誰かに聞いてもらうこと」でかなり落ち着くのだから、「見透かされたというテイ」はとても有効だ。

そんな風に考えることで、「占い」はプラスの機能を持つ素晴らしいシステムだと感じられる。繰り返すが、私自身は、「誰かの過去や未来を何らかの手法で読み解く」という意味での「占い」はまったく信じていない。しかし「占い」というシステムが有する機能は素晴らしいものがあると感じるのである。

「『否定されたという状態』に絶対に達しない」という特異なメリット

さて、「占い」というシステムがこのようにプラスの機能を持つのと同じく、UFOやUMA、陰謀論など「未知のもの」を信じることにも明確なメリットが存在するというのが私の考えだ。それが、「『否定されたという状態』に絶対に達しない」という効果である。

どういうことか説明するために、まずは「一般的な学問・教養・知識」について考えていこう。

どんなものでも構わないが、「研究」によって新たな知見を積み上げてようなものの場合、必然的に「過去の知見は誤りだった」という過程を経ざるを得ない。「今まではこうだと考えられていたが、研究によってそれが誤りであることが分かった」「今までの理解では不十分であり、さらに細分化されることが判明した」など、「新たな知見」とセットで、「先行研究の誤り・不十分さ」が示されるというわけだ。

一例を挙げると、「正しいとされてきた研究が誤りだと分かった」というケースとして有名なのが野口英世だろう。彼は様々な病気の病原体を発見したと発表し、評価されたのだが、実は今では彼の研究は誤りだったことが分かっている。彼が病原体を発見したと主張した病気の多くは、現在では「ウイルス」によって引き起こされていると判明しているのだが、野口英世が生きていた時代には、ウイルスを観察できる顕微鏡がそもそも存在していなかったのだ。

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