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作詩-言葉たち-

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言葉を紡ぎ 詩を編む。 電子の海に浮かぶ一遍の詩集をどうぞご賞味くださいませ。
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2014年12月の記事一覧

緑に曳かれ

星がこぼれる夜
瞬く光をあなたと思いたい
こんなにも溢れる光が
あなたであってもいいじゃないか

横たわる緑の褥
青い薫りは
遠くないあの日
あなたを感じて
交わした契りを甦らせる

未来を夢見て
口づけた指は
蝶の翅のように
果敢無く散ってしまった

ああ運命は今もこの指に宿っているよ
さあこの左腕ごと
攫っておくれ

©2014  緋月 燈

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視えないヒカリ

荒れ地の涯て
吹き荒ぶ風にも弛まぬ瞳
遠くを見る君が映すは
遥か遠い故郷か

夜を迎えてもいないのに
君はまるで迷い人
一寸先が見えないのだ

いたずらな妖精が
戯れに放った燈火
導き手の教えのように眩く
そして不意に消えた

古い恋の炎のように
熱く瞬き 掻き消えた

眩しさに慣れた視界は
夜でもないのに闇の中

月の女神よ
この新月の夜
汝の光を待ち望む
どうか姿を魅せておくれ

けれど君は気

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音の記憶

初めて世界に触れた時
わたしは泣いていた
暗闇の揺籠から
白い光の中へと這い出てきた瞬を
刻むように
息を止めて
そして泣いていた

何を叫んでいたのか
ねえ 誰か憶えている?

記憶は忘れてしまうんじゃなくて
ただ思い出せないだけだとしたら
あの日の叫びも
身体のどこかにまだ刻まれて
わたしの裡に残っているのだろうか

ああ 実はね
思い出せない歌があるの

あたたかくて優しい腕に似た光に
抱か

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風信子

あなたの憂いを晴らせたらいい

朝の光が暗闇を晴らしても
あなたのお顔は沈んだまま
夜を見ている

あなたがどこへ行くのか
わたしは知らない
瞳曇らせるわけも

ここから動けないわたし
目もくれずにそれでも歩くあなたの
涙ひとしずくでも
受け止められたらいい

人は花に癒しを求めると
鳥たちが歌っていたわ
あなたもわたしを見て
元気になってくれたら
咲き甲斐もあるというもの

お喋りも唄もないけど

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星の降る夜に

星って 繋がっているんだね

視えない蜘蛛の糸のような細い繋がりが
しとしとと其処には在って
降り注ぎ 落ちてしまいそうな星を繋ぎ止めてる

行かないで 置いていかないでと叫ぶように
切ない聲が天に響いているようで

流れ星を求めたわたしが
あまりに愚かに思えてしまう

繋がりをなくし
天から滑り堕ちた星は
どこへゆくのか

その先に出逢う誰かはいるの?

永遠にも近い年月を
孤独の闇に流されてゆ

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揺らめくたび

疲れはて
何ひとつ動かせぬ己

求めているのは
喉を潤す水か
乾ききった瞳を濡らす涙か
心にそそぐ安らぎか

きっとどれもそうで どれも違う

水面に映るわたしに
わたしでない あなたを見る
そっと伸ばした手は
わたしへと伸ばされ
掬いあげた水は
わたしを あなたを 救う

揺らめく水面は万華鏡
映すたびに違った姿
手の中に映り込む蝶を求め
飲み干したけれど
何も残っていなかった

ああ
虚しさを

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陰の虜囚

緑をおびた陰に覆われ
森は時空を隔て
時を刻む

夜の月
光を伸ばすこと能はず
昼の陽も
光の手を差し伸べること叶わぬ

緑の陰に隠された最奥
光を放つかのよう
真白に輝く 花 一輪

朝の光だけが
君を照らしらしめる
真白の麗しさ
濡らすは涙なのか

森は云う
彼女は涙を知らぬ
悲しみを知らぬ
喜びを知らぬ
彼女は真白ゆえ
朝の光 森の闇だけ
知ればいいのだと

ああ それしか知らぬ花
それは 

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露隠し

ここはどこだろうか

草の褥に横たわり
夢見るように
見上げた空は
昼のようで 夜のようで

今がいつで わたしは誰なのか
わからなくなっていた

起き上がりもせず
空-クウ-を見つめる瞳は
乾いているわけでも
濡れているわけでもなく
天を映す

不意に身体を動かせることに気づく
草の匂いを掻き分けて起こせば

一斉に舞う 風

否、蝶であった

花に着飾り休めていた翅
舞い上がる超
天を隠す万華

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まだら夢の足跡

街に夜の帳が下りて
ガス燈の火が揺らめくと
どこから現れた異国の楽隊
まだら色のヘンてこな服で
妖しい音色を奏でるよ

低い弦の音 手招いて
ヴァイオリン 艶艶 高らかに歌い
軽やかなピアノを体に纏えば
集う子どもたち踊り出す

広場を遊ぶ楽師の舞に
いつしかみんなブレーメンの音楽隊気分
踊り出しても気づかない

果たして楽の音鳴りやんだ
そして誰もいなくなった

しかしどうして憶えていない
街を

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空いろの花

冷たく張った空気のヴェールに透かした空

春いろのカーテンもないし
秋風の揺らめきもすでに遠く
夏の眩さも吹き飛んで
ただ、青くなった

閉じた瞳に染めるには
ちょうどよく冴え冴えとして
ほんの少し微笑みかけることもできた

辛さの霧が立ち込める心に
ひとすじの青空を落とせば
冬のはじまりを告げてきた風が
鮮やかな彩りを降り注ぐ

ここで涙のひとつでも流せたら
霧はきっと流せるだろう
けれど快晴 

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物・思ひ

海に 連れてきてもらった

僕が刻む 時間とやらも
終わりのないもので
時間が潰えるまえに
僕の方が消えてしまいそうだとは
思っていたけど

「果てしのない」
というものを
冷たい体に感じるのは
とても神々しいんだね

僕はヒトに生み出されて
役目を与えられた物だけど
そんな僕でも 畏れを感じるものなんだね

ヒトは最近
畏れも敬いも
喪われてるというけど
ヒトから生み出された僕ですら感じる
この

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蛍いろの錯角

白と黒
同じなようで
とても似ている二人

光と闇
似て非なるようで
とても似ている

光の奥には闇があって
闇の奥には光が潜む
どちらも入口 どちらも出口

でも
闇の中に光を見出だす方が
光の中に闇を探すより
実は真っ当なのかもね

けれどそれすら
どちらが上でも下でもあり
どちらも上でも下でもない

天と地よりも曖昧で
どちらも終わりで
どちらもはじまり

君がいなくちゃ僕でない
僕がいなく

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