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作詩-言葉たち-

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言葉を紡ぎ 詩を編む。 電子の海に浮かぶ一遍の詩集をどうぞご賞味くださいませ。
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記事一覧

熱帯夜

夜の帳も深まって
ピアノが粋に弾ければ
セピア色のバーも色に染まる

ここにいないベースの弦も
この身に響く鼓動で奏でりゃ
身体の奥底 衝動ふつふつ

これが恋かと
見知らぬ錯覚

音に魅入られ
聴き入る世界

勝手に刻む
リズムに歌いたい

調子が合えば
通じたってこと?

やがて夜も更け
夢も終わる
恋のような熱もいずれ冷めるわ
だからせめて喉の奥に熱を湛えて
今日も夜の闇に溶け込む

©20

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World

世界はわたしの知り得ないところで
編まれ織り成され紡がれてゆく

わたしはわたしの知ることしか知ることができない

きっと当たり前のことなのに
想うたび 知ってゆくたび
その奇跡を また知ってゆく

この街で歩いてゆく
通りすがる人々に
あなたの世界があるように

幾億の世界の最大公約数が
きっと世界と呼ばれるもの
それは地球を飛び越して
宇宙の果てまで覆うのだろう
わたしたちの世界は
地球ひとつ

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月と翅

こころは暗い森
射しこむ 月のひとすじ
私しかいない闇の棲家に
眠りを忘れかけた魂が横たわる

ここはどこで わたしはだあれ?
なんて
腐蝕の問いにはもう飽いた

繭の裡 さざめく嵐に
涙することもできないで藻掻いてる

月が奏でる子守唄
今は風に掻き消されて
時の訪ないを待つ

小さく立てた爪が傷付けた君を
抱きしめる腕はあるのだろうか
伸ばされた指先を
掬ってくれるぬくもりよ

涙はいつ果てた

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歌い人の陽

さあ 音楽を始めよう

いつか僕が見た夢を
金いろの光に満ちた
まぶしい夢

僕の光
君のことさ

僕の太陽は笑っていたね
君が笑ってくれると
陽だまりが生まれ
僕まで笑顔になれるんだ

君はどこまでも輝いているのに
なんて僕は無力なんだろう
君の笑顔の半分でも
返せてたらいいのに

君のため 歌うこの歌が
どうか届きますように

©2015  緋月 燈

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逢魔ヶ影

ふたりの生きる音を刻む針
似ているようでちがう

君と僕
同じ刻の中に溶け込めて仕舞えばいいのにね

ふたつの針を止めて
赤い赤い炎で熔かす
ひとつにできたら
心の臓を一にして
血も心もすべて分かち合える
ひとつになれるかしら

ああでも そしたらふたり
触れあえない

僕が君で 君が僕で
いつかそれすら忘れてしまいそう

だから忘れて仕舞えばいい
逢魔ヶ刻に魔が差した
一瞬の影絵さ

僕は僕で 

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月の祈り

太陽と呼ぶには弱い光
月はあなたに何ができるだろう

あなたへ続く道など
今は何も見えないけれど
創ってゆけると信じている

あなたは太陽となって輝いているから
月はせめて夜の間
眠れる場所を差し出せたらいい

諦めかけそうな今
わたしは試されているのだろう
もっともっと上へゆくために
もっと磨いて もっと美しく

わたしは月の燈火
あなたの輝きがもっと増しますように
祈っているよ

©2015 

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ちいさな光

逢えないあなたに
会いに行きたい

昼も夜も想わない日なんてない
でもやっぱり あいたいんだ
会っても 言葉はいらない
傍に居られるだけで幸せだから

どうか忘れてしまわないで
ふと見上げたら
夜空にまします月のように
あなたを想うひとがいること

一人で生きてくしかない我ら
想いが何を為すかなんてわからないけど
想いだけでも寄り添えたらと
願わずにいられない

あなたの道が幸せに満ちていますよう

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恋還リ

あの日埋めた恋心は
涙で包んで包んで固めた土に納め

墓標も立てず
眠らせたはずだった

語られることなく
留められることなく
風の前に掻き消えると

ああ なのに
幾年の時を前に
咲いた花

いつ芽吹いたというの
いつ咲いたというの
いつの間に こんなにも育った
恋という心の種

あの日の想いを咲かせる
甘い香りに
まどろんでもいいだろうか

夢ではせめてあなたに逢いたい
この心が 愛と呼べるく

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波間に星

波間に漂いながら
天に瞬く火をみつめている
蝋燭の灯のように ちらちらと
儚い光を燃やして

いのちの炎
ただ輝く その姿が美しい

ぬくんだ風にゆらめく
星の灯よ
遠ざかる灯が燃やすさいごの光

闇の奥 いつか同じ場所に
ゆくのでしょう
いのちの歩幅は違う
それでも いつか逢える
先に行ってこのいのちを見守っていて
輝きはきっと君のが眩しい

ああ まどろみのなか
夢のような灯火を・・・

©2

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春の羽

若葉のころ
あなたを知らなかった

あの頃よりもかたくなで
あの頃よりもやわらかい
わたしは今 どんな香りを漂わせるのだろう

何も知らなくて
何かをわかっていたのでしょうか

けれど今
あなたを知ったわたしを
そんなに嫌いじゃないわ
あなたを想って少し微笑むことができるから

やさしくなれたかはわからないけど
ほんの少し微笑みを絶やさずにいられたら
それはきっとあなたのおかげね

寒の戻りが不意

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静寂の海

いろんなざわめきに満ちた世界で
静寂の海に漂うことを
願う

喧騒の中に放たれる言葉は
無鉄砲だったり
時に無意識の毒も混ざっていたりして
触れるには痛すぎる
聞いているだけで
涙も零れてしまいそうなくらい

ああ 潮騒を聴きたい
胸を攫っていくような
母なる命の響き
抱きしめてはくれるけど
見守ることしかしない
この星のやさしさ

ねえ わたしを見ていて
わたしの命を燃やしてゆけるように
涙にも

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戀華-レンカ-

身体の奥にあなたの声が残っている
あなたが奏でた音は
悲しげでも
未来の光が射していた

あなたがくれた光を闇を
どうすればいいのか
わからないでいる

ああ けれど
そんなことより
愛しているの

伝えるなんておこがましくて
この胸に密やかに燃やしているだけでいい
華のように

想っている想っているよ
それだけは許してね

ああ、ありがとう
あなたがいてくれることに
笑ってくれることに
ありがと

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闇底の天

なぜ生まれたのかと問いたいくらい
行き場のない情動 留まることを知らぬ
怒りとも悲しみともつかぬ想いが
泉の如く突き上げる

わたしがわたしを許せない
泣くことすらできぬ
空の慟哭

苦し紛れに立てた爪
痛みも荊の棘に切ない

天など見上げるほどに尊く
遠く 膜に遮られて
昏い底の地を見つめる

藻掻いて 足掻いて 底の底まで
立ち上がれない嘆きも果てるまで
光のみえない闇に眠ろう
許せない気力す

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水に浴する

清らかな水に打たれたら
この心に巣喰う闇も晴らせるでしょうか
水の流れにまかせ
風の向かう先へ
共に歩んでいきたいのに

無機な塊が邪魔をする
きっとそれはワタシが築いた
壊せど壊せど現れる
ああ なんて無機

光も闇も全部呑んでも
この異物だけは呑めやしないわ
流してしまうにはもはや
大きくなりすぎてしまった

少しずつ少しずつ瓦解させ
痛み苦しみ 涙流れても
この先はないと感じてるから
見ぬフ

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